ここでは、耳鼻咽喉科で扱う耳の病気についてのちょっとした疑問点についてお答えします。病気についての詳しい説明は、既存の家庭の医学や他医院のホームページをご覧ください(リンク集のページ参照)。
なお、ここでのお答えは、耳鼻咽喉科医としての常識的な範囲の話、もしくは私の意見であり、ご覧になっている皆様もしくはご家族・知人に完全にあてはまるものではありません。ご心配の場合は主治医の先生、最寄の耳鼻咽喉科医師にお尋ねください。
ご質問がございましたら、お問い合わせのページのご注意をご一読いただいた上で、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。
E10 耳管開放症? | |
<質問> 以前低音の難聴で相談させて頂いた者ですが、あれからもいろいろ調べていたところ、耳管開放症という病気があるのを知り、その症状がまさしく今の自分に当てはまります。「耳閉感」、「自分の声が大きく響く」、「低音の難聴というよりは、聞きづらい」などで、決め手は(低音の難聴を除く)上記の症状が、頭を下げると、解消されるという事です。その症状があると、耳管開放症であるという可能性が高いと書かれており、自分でも確信しているのですが、低音の難聴以外の症状が、ここ2ヶ月くらいおさまっています。症状の出ていない状態でみてもらっても、正確な診断ができないでしょうか?それとも、耳管開放症はとりあえず、おいておいて、低音の難聴の、治療を進めてくほうがいいでしょうか? <回答> 確かに、頭の位置を低くすると症状が軽くなるというのは、耳管開放症の可能性がありますね。診断を確かなものにするには、一つに「耳管機能検査」があります。これは少し大きな病院や耳管機能に力を入れている所でないと置いていないかもしれません。☆もう一つは、患者さんに鼻をつまんでもらいながら、唾を飲み込んでもらって、その際に鼓膜が動くかどうかを顕微鏡で観察する方法があります。唾を飲んだ時に耳管開放症の人は鼓膜が大きく揺れます。これは簡単な検査で、私の医院でもこの方法と症状でほぼ診断をしています。ただ、耳管開放症でもはっきり現れない人もいますし、症状のない人でも鼓膜が揺れる方もいます。ですので、あくまで、症状と組み合わせて判断しています。☆耳管開放症の場合、重要なのは症状だと思います。治療で症状が改善する人でも、鼓膜の揺れはそれほど変わらない場合は結構あります。ですので、現在耳管開放症の症状がなければ、それは様子をみられてもよいと思います。☆ただ、低音の難聴については、それとは一応切り離して考えた方がよいと思います。低音部が何故聴こえにくいのか?実際に難聴がある場合、中耳由来か内耳由来かを見極める必要があります(結構むずかしい場合がありますが)。中耳由来、つまり耳管狭窄症を同時に併発している場合もあります。これは、耳管開放症の人は耳管が開いているのが不快なので、無意識に鼻をすすって中耳を陰圧にして耳管を塞ごうとするくせがあるからです。こういう場合は、開放症の治療をやりながら鼻すすりを止めていくように意識しなければなりません。☆内耳由来の低音の難聴は前回お話しました(「低音の難聴」参照)ので、あてはまる病気が併発していれば、そちらを治療するのがいいでしょう。☆耳管開放症については、患者さんどうしが情報を交換されているサイトがあります。「耳管開放症の情報交換のページ」 |
|
E62 耳の横の血管が浮き出て痛い。 | |
<質問> 最近夜になると、耳の穴の横ぐらいですが血管が浮き出てきて痛いと言うか、ひっぱられている様な感じがしてなりません。右の耳なんですが、全体が真っ赤に熱おびています。ストレスからかな?と思っているのですが、病院へ行ったほうがいいのでしょうか? <回答> お幾つくらいの方でしょうか?高齢者に多いといわれている病気ですが、かなり稀ではありますが、側頭動脈炎という病気があります。これだけの症状で決め付けるわけにはいきませんが、ちょっと気になるので、一度診て貰ってもよいかと思います。その時には、膠原病を得意とする少し大きな内科で診て貰ってください。考えすぎであればよいのですが。 それで大丈夫ということであれば、耳鼻咽喉科でも診て貰ってください。 側頭動脈炎について http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/064.htm |
|
E75 病院で耳管開放症だと診断されたのですが・・・。 | |
<質問> 特に薬などもいただかずに帰りました。日が絶つにつれ、耳の詰まった感じがひどくなってきました。寝転んだ状態でも症状は緩和されません。本当に耳管開放症なのでしょうか?そして、その一般的な治療方法はどのようなものですか? <質問> 「耳がつまった感じ」を呈する病気は色々とあります。Q&AのE18、E19を参考にしてください。 耳鼻咽喉科で診てもらっていらっしゃいますので耳垢や鼓膜穿孔などはないでしょうが、耳管開放症の診断は厳密に行おうとすると中々難しい場合もあるかもしれません。他の病気との鑑別としては、耳管狭窄症、内耳性の病気などです。 治療法は現在の所、確実なものは確立されていません。まず第一に、急激にやせた時などに起こることも多いので、心当たりがある場合は、なんとか体重を戻す必要があります。その他、ある種の漢方薬が効果的であるという報告がみられ、実際効く人はいらっしゃいます。また、耳管は鼻の奥につながっていますので、この部分にルゴールという薬を吹き付けてわざと粘膜を腫らして症状をとろうとする方法もあります。あるいは、この耳管の開口部にコラーゲンを注射する試みもなされています。その他、鼓膜にテープを張って鼓膜が揺れすぎないようにする方法、耳管の中にピンを挿入して蓋をする方法などが言われています。 この方法なら確実!という方法は今のところ確立されていませんので、こうした方法の中から試行錯誤して治療しているというのが現実です。(私の医院では、漢方薬の治療を行っています。うまくいく人もいますし、効果のない人もいます。) 「耳管開放症の情報交換のページ」には色々な情報を皆さんが載せられていますので参考にしてください。 |
|
E76 突発性難聴後の耳鳴りについて。 | |
<質問> 3月25日突然聞こえなくなり3月27日医大で診察(80DB)をうけて28日入院しステロイドの点滴をうけ30日には70DBとあまりよくならず、プロサイリンと服用して4月8日(70DB)に退院しました。退院後は針とプロサイリンの服用で治療しています。針治療を受けてからか聴力が60DBまでよなって来ました。しかし、耳鳴りがきつく鬱状態になり今神経内科で安定剤をも服用しています。針灸医の先生も50DBまで回復したいと懸命に治療をしてくださっています。 この耳鳴りがきついのが少しでも小さくなる治療方法はありませんでしょうか? <回答> お話から推察すると突発性難聴に伴う耳鳴りでしょうか。こういった急性の感音難聴に伴う耳鳴りの場合、まず最優先されるのは聴力の回復のための治療です。聴力が回復すると、耳鳴りはたいていの場合小さくなっていきます(完全に消えるかどうかはわかりませんが)。ただ、突発性難聴の場合、一般的に治りやすいのは、1)聴力の落ち方が軽い、2)年齢が若い、3)治療を始めるのが早い、4)めまいを伴わない、という要因があります。この方の場合、年齢やめまいの有無はわかりませんが、治療の開始は早い方でしたが、聴力の落ち方が強いため、内耳のダメージは相当あり、回復が思わしくないものと思います。 すでに3週間〜4週間が経過しようとしていますので、聴力が固定しかけていると思います。もし、可能であれば高圧酸素療法を受けてみられるとよいかもしれません。ただし、これはやってみないと効果はわかりません。この治療ができるのは大学病院レベルの病院になり、それもどこの病院でも持っているわけではありません。また、その治療が適応になるかどうかをまず診断してもらう必要があります。 こうした治療の結果、最終的に聴力が改善しなかった場合、次は耳鳴りの治療になります。 耳鳴りについての詳しい説明については、他の場所でお話をしています。参考になれば幸いです。 耳鳴りの話 |
|
E78 音響外傷による耳鳴りはどのくらい続くものですか? | |
<質問> コンサート後から両耳での耳鳴りが止まりません。聴力は右耳が全体的に少し落ち、8000Hzで20dBで、日常生活には支障ありません。が、耳鳴りがもう2ヶ月程続き、悩んでいます。今後、回復の見込みはあるのでしょうか? 耳鳴りを悪化させないように避けるべきものはありますか? 特に音には神経質になってしまい、掃除機、冷蔵庫、ファンヒーターの音は避けたほうがいいでしょうか?また、自転車に乗ると風でゴーという大きな音が耳にあたりますが、大丈夫でしょうか? <回答> 急性の感音難聴(聞こえの神経や、内耳の障害によって引き起こされる難聴)の場合、多くの場合1ヶ月程度で聴力は固定してしまうことが多いようです。残念ながらお尋ねの方の聴力の回復ははなかなか厳しいかもしれません。 ただ、聴力低下と耳鳴りは必ず一致するというものではありません。聴力は回復しなくても、耳鳴りは小さくなったり、あまり気にならなくなる可能性はあると思います。 私は患者さんに耳鳴りについて説明する際に、「耳鳴りは聞こえの細胞の傷」とたとえています。つまり、聞こえの細胞がピアノの鍵盤のように並んでいるとすれば、その一部が障害を受け、傷になった状態だとお話します。 「傷」であれば皮膚の傷と同様、怪我をした時には生々しいですが、時間がたつにつれ目立たなくなります。耳鳴りでも同様に考えてみてはいかがでしょうか?内耳がダメージを受けた時には耳鳴りは強いですが、時間がたつにつれて徐々にマイルドになっていくと思うのです(というか、思うようにしてほしいと考えています)。 ただ、「傷」というのは、軽ければ完全に治ってしまいますが、ある程度の傷は時間がかなりたっても古傷として残ります。ですので耳鳴りも、ある程度の耳鳴りは古傷として残る可能性はあると思います。 さらに言えば、顔にできた傷と背中のような自分の目では見えにくい場所にできた傷では、傷に対する受け止め方も大きく違うと思います。耳鳴りというのは集中すると段々大きくなってくる性格を持っています。耳鳴りを気にするなといってもこれは中々難しいのですが、必要以上に耳鳴りを気にするのはあまり得策ではないと思います。これは音響外傷に伴う耳鳴りだけでなく広く一般的な耳鳴りにもいえることだと思います。 現時点で特に避けるべきことというのは、それほどないとは思います。ただ、これは何の根拠もありませんが、内耳の病気の多くは寝不足や過労、ストレスなどが大きい時に起こりやすい印象を持っています。ですので、今後もそうした負荷はあまりかからないように注意した方がよいと思います。また、音響外傷は同じ状況のこと(すなわちコンサートでまた強大な音を聴くなど)が起こった時には同様のことが起こる可能性があります。そして繰り返すほど治りにくくなります。ですので、あまり大きな音を聴くようなことは避けるべきだと思います。ただ、日常的な音については、多少敏感に感じたり不快に感じることはあるかもしれませんが、普通の音量であればそれほど問題はないと思います。 次の所で耳鳴りのお話をしています。よかったら参考にしてください。 耳鳴りの話 |
|
E110 鼓膜が倒れてる!? | |
<質問> 耳の調子が悪かったので耳鼻科に行ったら、両耳の鼓膜が内側に倒れてるといわれました。これは何が原因で治療をすれば完治するのでしょうか? <回答> これは耳管狭窄症のことだと思います。耳管狭窄症について検索してみてください。 |
|
E113 突然耳が聞こえなくなり11年間耳鳴りとともにすごしてきました。 | |
<質問> 現在17歳男性。6歳の時、突然耳が全然聞えなくなりました。 その時、病院へ入院しましたが、検査の結果は、「耳は正常です。何の症状も無いです。多分神経性の耳鳴りで、治らない」と言われました。その後11年を耳鳴りで過して来ました。耳鳴りを治すのに何か方法が有りませんか? <回答> 診療をしていますと、時々「『神経性』と言われた」とおっしゃる方がいます。この「神経性」という言い方には世間的には2つの場合があります。一つは神経細胞もしくは神経線維由来の病気という意味ですね。神経細胞というわけではありませんが、聴こえの細胞由来、すなわち感音難聴を耳鼻咽喉科の医師でも、患者さんに理解してもらうために「神経性」と説明される場合があります。 もう一つは、「精神的な」という意味で説明に使われる場合もあるということです。この場合、耳鳴りについていえば、聴力検査をはじめ、色々な検査で異常が認められない場合であったり、いくつかの検査結果どうしがつじつまが合わない結果であったりした場合、診察する側はこれは精神的な要因に由来するのではないかと考えるわけです。こうした場合、便宜上「神経性」という説明をする場合があります。 さて、ご質問については少し不明な点があります。全く聞こえが悪くなったと書かれていますが、医師からの説明に、「何の症状も無い」とあります。聴こえないのすから「症状がない」わけではありませんね。 この方の場合、「色々な検査をしてみたが、聴力の低下以外に何の異常も認めなかった」という意味でしょうか。そうであれば、全く聞こえないということであれば、診断としては「突発性難聴」であると考えられます。ですので、「神経性」という意味は「突発性難聴による感音難聴とそれに伴った耳鳴りということになります。 突発性難聴後であれば、何年もたっていますので聴力を改善することは現在の医学では難しいと思います。しかし、耳鳴りについては色々と試してみる方法はあると思います。ただし、そのうちどれ位有効かはやってみないとわかりません。現在のところ耳鳴りの治療というのはかなり難しい分野ではあります。また、耳鳴りが改善したからと言って、聞こえがよくなるわけではありません。そのあたりはご理解いただきたいと思います。 どんな方法があるかについては、「耳鳴りの話」をお読み下さい。 また、ここで書いてある治療がどこの医療機関で行われているかについてはわかりません。 最寄の耳鼻咽喉科の先生もしくはインターネット等で探してみてください。 |
|
E123 妊娠中の抗生物質に関して。 | |
<質問> 現在臨月の33歳の妊婦です。4日前ほどに風邪を引き、その後中耳炎になったのですが臨月に入っているため薬は点耳薬をいただきました。二日後痛みが治まらず、鼓膜切開を受けました。その後も痛みに耐え切れず2回ほど鎮痛剤(カロナール)を飲みました(産科の先生にも了承済み)。そしてまた1日あけて痛みが治まらず夜中にも痛みで寝れないほどでまた診ていただいて膿を吸い取る処置、消毒などを受け今回は抗生物質(ペニシリン系のオーグメンチン錠)を5日間分出されました。その時に産科の先生に連絡をして「大丈夫」と返事をいただいてから耳鼻科の先生は処方してくれたんですが、やはり「抗生物質」とゆうだけで拒否反応といいますかためらってしまいます。しかし痛みに耐えれず産科の先生にも「大丈夫だから」と言われて飲んではいますが・・。妊婦さんに抗生物質を処方される時などあると思いますが「オーグメンチン錠」は大丈夫でしょうか?色々検索しててもあまり載っていなかったので。御回答お願いします。 <回答> 妊娠中に中耳炎などになりますと、中々心配ですね。私どもも妊娠中の服薬については、基本的には産科の先生と相談の上、ご本人に最終的には決めていただくようにしています。 一般的な話にはなりますが、妊娠中の服薬については次のように考えています。 1)妊娠4週までは、妊娠しないか、薬の影響は完全に修復されてしまうといわれているようです。しかし、不安があると思いますので妊娠の可能性がある方の場合は、最小限の薬とし、それも影響の少ない薬にしておくことが望ましいと考えます。 2)4週をこえますと、今度は絶対過敏期と言われ、最も薬の影響を受けやすい時期だといえます。この時期は特に服薬に気をつけます。極力薬は飲まずにいければその方がよいでしょう。しかし、あまり我慢しすぎますと、今度は回復に時間がかかりますし、より強い、より危険な薬が必要ななる場合がありますので、ある程度様子をみてひどくなるようなら、主治医の先生に相談した方がよいと思います。その場合、まずは妊娠に対して安全性の高い薬を選択して使用することになります。基本的には、効能書に、「有益な時にのみ使用のこと」と書いてある薬を使用します(産科の先生と相談してということになりますが)。 3)妊娠も中期になると安定してきて、相対的危険期となります。この時期は初期よりは薬の影響を受けにくいといわれています。それでも、この時期に服用する薬は、やはり「有益な時のみ使用」という薬を選択します。 4)妊娠後期も基本的には同じような考え方ですが、痛み止めは最も注意が必要です。そんな中ではアセトアミノフェン(カロナール)はかなり安全性の高い鎮痛剤ではあります。 妊娠と薬についてここは参考になると思います。 上のサイトなども参考に、最終的に服薬するかどうかは決定してください。一般的にはオーグメンチンはFDAでBクラス、虎ノ門病院基準でもかなり安全性の高い薬だと思います。 |
|
E125 耳鳴りは治らないのか? | |
<質問> 昨年10月嘔吐が止らないので救急車にて脳神経外科病院へ搬入され4日で退院、その入院中MRI,MRA,CT、カテーテル検査実した施結果脳は全て異常なしでした。診断は脳出血、くも膜下の疑いとのことでした。 これよりあとに、四六時中耳鳴りが異常に大きく、夜も寝られないので現在は眠剤を服用(医者よりの処方にて)して睡眠をとっています。 また外出も出来ないような状況です。 耳鳴りで耳鼻咽喉科も受診をしましたが耳関係は異常が認められないとのこと。 耳鳴りが続くので今年の1月末に再度MRI,MRAの精密検査を実施したがこれも脳には全く異常なしでした。また神経内科でも相談しましたが耳鳴りは治らないとのこと・・・ 本当に耳鳴りは治らないのでしょうか?何か症状を軽くする方法はないのでしょうか? <回答> 耳鳴りは確かに非常に難しい症状の一つです。 以前耳鳴りについて書いた記事がありますのでご参考にして下さい。 耳鼻咽喉科で検査も受けられていらっしゃいますので、大きな重大な病気はないのかもしれませんが、症状が続いている間は、ある程度定期的に診て貰っておいてください。 その上で、難聴がないのに耳鳴りがする場合を考えますと、もちろん、ある一定の周波数で、聴力低下がある可能性は考えられますが、その他にストレスや過労などがある程度影響を及ぼしている可能性も考えられます。その場合、抗不安薬や抗うつ剤などの方が有効な場合もあります。 また、耳鳴りの治療を受けていただくにあたって、あまり耳鳴りを敵視するのではなく、疲れや緊張などを知らせてくれるモニターのようなものと捕らえるようにしてみてください。そして100%耳鳴りが消えるのを目標にするのではなく、まずはある程度耳鳴りが小さくなることを目標にして普段すごすようにしてみてください。 |
|
E171 聴力低下がない場合の耳鳴・聴覚過敏にステロイドやプロスタグランジンは? | |
<質問> 耳鳴りと音がひびくのですが、病院で聴力検査を行いましたが、ほとんど正常範囲でと言われました。インターネットでは、ステロイドやプロスタグランジンによる治療などもみられますが、聴力が正常の場合は無理でしょうか? <回答> 一般的には、耳鳴りは聴力が落ちた結果として発生してきます。聴力が正常の場合はどう考えるべきでしょうか?これについては、聴力障害のみられない耳鳴りについて」 を参考にしてください。 そこにも書きましたが、比較的早期であれば、ステロイドの治療や、場合によってプロスタグランジンの治療も考えてみてもよいと思います。ただ、これはあくまで推測の域にを前提に治療をすることになりますから、患者さんと主治医の先生と充分話し合って、納得された場合に治療を行うべきと思います。一般的には、糖尿病、高血圧、胃潰瘍、緑内障等がなければ、ある程度の治療は試みてもいいのではないかと私は思います。ただ、一般的な高度な突発性難聴の治療のような点滴を1週間以上行うような強い治療はやりすぎかなと思います。 同様にプロスタグランジンも、ためしてみてもよいかと思いますが、出血傾向のある人は禁忌です。いずれにしても、あまり月日があったものの場合は、効果が期待されないばかりか、副作用のことがありますのであまりおすすめしません。 聴力検査であまり異常がないのに、その耳鳴りの苦痛度が高い場合は、やはり脳における耳鳴り対する感度が上がっているためだと思います。つまり、大脳辺縁系や自律神経系が興奮しているために本来小さな耳鳴りであるはずのものが、大きく感じられるようになっている可能性が高いと思われます。 その場合は、心身医学的アプローチも必要ですので、心療内科等の先生と協同で対処する方がよいかもしれません。 ただ、最近少し言わるようになったのですが、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・向精神薬は、脳の可塑性(いわゆる脳の柔軟性)を弱めるとの報告もあり、耳鳴りに対するとらわれがうまく抜け出せない原因になる場合もありますので注意が必要です。 |
|
E172 抗うつ薬で難聴はきたしますでしょうか? | |
<質問> 不眠ぎみで、抗ヒスタミン作用のある抗うつ薬を常用しています。これの影響で外有毛細胞が障害されることは考えにくいでしょうか?徳島県の薬剤師さんのページ には、聴覚に影響するおそれのある様々な薬がリストアップされています。 私の服用している薬は、この中には含まれておりませんでしたが、リストには抗ヒスタミン薬が複数含まれています。抗うつ薬のせいで耳の調子が悪ることが起こり得るのでしょうか? <回答> 確かに上のHPには色々な薬剤が揚げられていますね。 私の勉強不足かもしれませんが、抗うつ薬で難聴をきたしたという話は聴きませんが、可能性をしました文献があるのかもしれません。 ただ、どんな薬でもいろいろな副作用の可能性はありますので、気になるようであれば、主治医の先生と相談の上、減量もしくは休薬してください。抗うつ剤(特にパキシルのようなもの)は、急に止めると症状が悪化したり、めまいが生じたりすることがありますので注意して、自己判断で休薬するようなことは控えてください。 一般的には、難聴(特に内耳の難聴)を来しやすい薬剤として有名なのは、アミノグリコシド系抗生物質(ゲンタマイシン、ストレプトマイシンなど)、グリコペプチド系抗生物質(バンコマイシンなど)、マクロライド系抗生物質(クラリス、エリスロシンなど:これらは多くは一過性)、白金系抗がん剤(シスプラチンなど)、サリチル酸系解熱鎮痛剤(アスピリンなど)、インターフェロン、ループ系利尿剤、抗原虫剤(キニーネ)、キレート剤が言われています。 先にも書きましたが、抗うつ剤で少なくとも不可逆性の難聴が生じるという話は、あまり一般的ではありません。しかし、今後報告が増えてくると一般的に気をつける薬剤になってくる可能性はあります。ただ、うつ状態の時にはそのこと自体が聞き取りにくく感じる状態を含んでいる様に思います。 |
|
E174 耳鳴りは最悪、どこまで大きくなりますか? | |
<質問> 耳鳴りが始まってからその音の大きさが少しずつ大きくなってきています。 最悪、どこまで大きくなりますか?ある程度の大きさになればそれ以上大きくならなくなるものでしょうか? (ここで言う耳鳴りは慢性のものを指します。 急に生じてきた耳鳴りは聴力低下のサインかもしれませんので 数日中に最寄りの耳鼻咽喉科を受診してください) <回答> まずは、こうした考えを持つこと自体をやめましょう。 最近の耳鳴りに関する考え方は「耳鳴りは脳で知覚される」というのが主流です。 確かに耳鳴りの発生源は内耳(蝸牛)であることが多いと思われます。耳鳴りの多くは 聴力が低下した結果として音を感じていると言われています。 (聴力を調べてもらったところ正常だと言われた場合は、ここをごらん下さい) 我々は音を耳で聞いているように思っていますが、実際には耳はマイクロフォンとして音を拾っているだけで、音を音として感じ取っているのは脳の働きなのです。ですから、実際には「音は脳で聞いている」という方が正しいのです。 ですから、耳鳴りの発生源は内耳(時に聴神経)かもしれませんが、耳鳴りを耳鳴りとして聞いているのは脳なのです。もっと言えば、耳鳴りを「嫌な音」として聞いているのは脳の働きなのです。つまり脳での認識メカニズムの過剰反応というか、考え方・とらえ方に悪い癖がついているというニュアンスでとらえていただけるとよいかと思います。 耳鳴りはどこまで大きくなるか? これは、脳での感覚がどこまで大きくなるかという問題です。そう考えると、耳鳴りの大きさはその人の耳鳴りへの集中の度合い次第ということになります。 人間の感覚というのは、非常に繊細です。 優れた指揮者は、オーケストラの団員がそれぞれが演奏する音の中から少しの違いも聞き逃さないで指摘します。それは、もちろん天性のものもあるでしょうが、後天的に訓練によって開花した部分も多いと思います。我々一般人は、そこまでの音を聞き分ける力はないかもしれませんが、それでも訓練次第で、そこそこのまで感覚を研ぎ澄ますことは可能だと思います。 耳鳴りも、それは本人にとっては不本意なことではありますが、耳鳴りに対する感覚を研ぎ澄ますことにより、どんどん大きく感じるようになっていきます。 何度も言いますが、それは精神論ではなく、脳の網様体賦活系(RAS)と呼ばれる部分の仕業です。 しかし逆に「心頭滅却すれば火もまた涼し」という言葉もありますように、感覚というのは、そこまで遮断することも、時に可能だということです。 耳鳴りを敵視して、完全に消えることを目標にすると失敗します。「あってもなくてもどうでもいい」という態度で、「耳鳴りがしていても、日常生活を普通に暮らせる」。まずは、この辺りを目標にしてみてください。力がぬければ本当に耳鳴りが小さくなるかもしれません。 (耳鳴りはその他、動脈硬化を改善したり、自律神経を整えたりということで改善することもあるのではないかと考えています。) |
|