漢方に関する基本的なQ&A

ここでは、耳鼻咽喉科で扱う耳の病気についてのちょっとした疑問点についてお答えします。病気についての詳しい説明は、既存の家庭の医学や他医院のホームページをご覧ください(リンク集のページ参照)。
なお、ここでのお答えは、耳鼻咽喉科医としての常識的な範囲の話、もしくは私の意見であり、ご覧になっている皆様もしくはご家族・知人に完全にあてはまるものではありません。ご心配の場合は主治医の先生、最寄の耳鼻咽喉科医師にお尋ねください。

ご質問がございましたら、お問い合わせのページのご注意をご一読いただいた上で、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

QK1 漢方薬は長く飲まないと効かないと聞いたのですが…
A 確かに長くのんでじっくり効いて来る薬もありますが、効くときには30分ぐらいでも効いて来る薬もあります。上述の小青竜湯などはその典型です。 私は慢性疾患の場合、一般的には2週間からできれば1ケ月飲んでもらって、なんらかの調子よい傾向があれば続けてもらうようにしています。多くの場合、1〜2週間で効果はわかります。1ケ月のんで全く変わらないようであれば、それ以上続けても効果がでてくることは少ないように思います。
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QK2 食前の服用とありますが、薬を飲まずに食事をしてしまったのですが…
A 私は食後の服用でも飲まないよりはいいと思っています。食前の方が効果的なのかもしれませんが、飛び飛びで飲むよりは、忘れて食事をしてしまっても、その後に飲んでおいて下さい。
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QK3 漢方薬というのは煎じ薬ではないのですか?煎じ薬の方がよく効くのでは?
A 確かに煎じ薬の方がよく効く可能性はあります。ただし、原料となる生薬が厳重に管理されていたものを使用した場合に限ります。また、生薬の品質は採取された年によってもばらつきがあります。これに対して、病院などで処方されるパックになったエキス製剤は品質ができるだけ均一化されていますし、エキス製剤でも十分効果はあるものと思います。
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QK4 良性発作性頭位めまい症に効く漢方薬はありますか?
A <回答>
漢方薬というのは、「○○という病気には△△という漢方薬が効く」という使い方はしません。その人にあったものを処方するので、Aという人と、Bという人がともに良性発作性頭位めまい症だとしても処方する薬は違う場合は往々にしてあります。☆そのことをご理解の上で考えられることをお話します。一般的にぐるぐる回るめまいには苓桂朮甘湯はよく用います。また、人にっては半夏白朮天麻湯などを用いる場合もあります。また、浮動感、特にフワフワと雲の上を歩いているような感じがする場合などは、真武湯などを用いる場合もあります。☆また、基礎疾患がある場合、高血圧や低血圧、高脂血症、糖尿病などそれぞれにあった漢方薬を使用した方がよい場合もあります。
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QK5 中耳炎と蓄膿症両方に効く漢方薬はありますか?
A <回答>
中耳炎は滲出性中耳炎のことでしょうか?急性中耳炎を頻繁に繰り返す状態でしょうか?それとも慢性の中耳炎でしょうか?それによっても異なってくると思います。
一般的な話になりますが、頸から上の炎症には、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)が有効である場合が多いと言われています。ですので、炎症性の病気の場合は上記の処方は一応候補としてあげることができると思います。☆その他、慢性的な炎症の場合、十味敗毒湯(じゅうみばいどくとう)なども用いる場合があります。☆これに対して、滲出性中耳炎の場合は、中耳自体はそれほど強い炎症を起していませんので、原因が副鼻腔炎(蓄膿症)にあるのであれば、副鼻腔炎の治療を積極的に行うことで、滲出性中耳炎も良くなっていきます。(もちろん、それまでの間に滲出性中耳炎自体の治療も積極的に行う必要があれば、あわせて行います。)ですので、副鼻腔炎に有効な葛根湯加川辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)などを飲むことで、間接的に滲出性中耳炎もよくなる場合があります。
急性中耳炎を頻繁に繰り返すような場合には、小柴胡湯を用いる場合があります。これはその中の構成生薬柴胡の主成分サイコサポニンがステロイド様の薬効をもつことが大きいと思います。こうした柴胡を含む処方は時にうまく効く場合があります。ただし、柴胡を含む処方はごくごくまれですが間質性肺炎という副作用を起す場合がありますので注意が必要です。
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QK6 鼻茸に効く漢方はありますか?
A <質問>
「鼻茸」という病名に対して、効く漢方という考え方はしません。そのことを念頭に置いた上でのお話となります。
一つは、鼻茸の原因が、副鼻腔炎であれば、その治療の一環として、「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」や「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」「葛根湯加川辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」などを用いる場合が多くあります。
また、アレルギー性鼻炎がベースにあっての場合、その治療を漢方で行うことで鼻茸も改善する場合があります。 その他、鼻茸の性状が水っぽい場合、体内の水分の偏在を是正する漢方(たとえば五苓散など)を用いて改善したという報告もあります。
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QK7 副鼻腔炎,鼻茸に対する第2の選択は?
A <質問>
辛夷清肺湯が効果があったのですが,GPT,GOTが 上がってしまいました。(2ヶ月服用) 慢性C型肝炎もあるためやむなく中止しました。この場合の,第2の選択肢(処方)は,何でしょうか。
<回答>
漢方の処方は、病名で決めるものではないので、一概ににはいえないということは、まずはご理解下さい。その上での話となります。
まず、肝機能障害が起こってしまったのが、何によるかわかりませんので、十分慎重にいかなければなりません。辛夷清肺湯のどの生薬が合わなかったのかによります。しかし、現実問題として、どの成分が合わないのかを調べることはほとんどできませんので、一つずつ試してみるしかありません。一般的には、辛夷清肺湯の中にも含まれている「オウゴン」は比較的アレルギーを起しやすいと思われます。ですので、このオウゴンが含まれていない処方の方が無難かもしれません。すなわち、荊芥連翹湯などは、普通次に考える処方なのですが、これはオウゴンを含みますので少し他の処方で様子をみてからの方がいいかもしれません。となると、十味敗毒湯あたりはオウゴンを含みませんのでいいかもしれません。ただ、逆にオウゴンが効いていた可能性もありますし、他の生薬が肝機能障害をおこしていた可能性もありますので、その選択がよいかどうかはわかりません。
また、辛夷清肺湯の中の「辛夷」が効いていた可能性から考えてみると、葛根湯加川キュウ辛夷」なども効果的な可能性があります。あるいは、辛夷清肺湯には「石膏」が含まれます。石膏は冷やして熱を冷ませるという働きがあるそうで、比較的急性期の炎症に効果的です。この石膏を含んだ処方としては、小柴胡湯加桔梗石膏などもあり、効果が期待できるかもしれません。(ただし、小柴胡湯をベースとする薬ですので、オウゴンが含まれていますし、特に肝機能障害の人は間質性肺炎といった重篤な副作用を引き起こす危険性もわずかながらありますので注意が必要です。)
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QK8 痛みのない口内炎に効く漢方は?
A <質問>
口唇の裏に口内炎があるんですが、全く痛みがなく、一ヶ月程治りません。このような場合どんな漢方がいいのでしょうか。
<回答>
一般的に唇の裏にできる口内炎は、「アフタ性口内炎」ですが、これは強い痛みを伴いますし、1週間程度で治ります。1ヶ月も治らないということ、痛みがないというのはちょっと気にかかります。一度も診て貰ったことがないのであれば、医療機関でまずは診て貰ってください。
その上でのお話となりますが、単に「口内炎」ということで漢方薬は決めることができません。局所の状態(白いのか、赤いのか、腫れているのかなど)、体格がどうかなども考慮して決めることになります。
私が口内炎でよく用いるのは半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)です。平均的な体格の人なら使うことができます。よく効く人もいますが、あまり効かない人もいます。そういう場合には、試行錯誤して処方を決めていくことになります。
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QK9 慢性副鼻腔炎と慢性中耳炎の関連と効く漢方
A <質問>
慢性の副鼻腔炎の治療に服用している漢方薬で、先に耳の症状(耳垂れが止まる)が改善されるということはあるのでしょうか?関連性はあるのでしょうか?耳の症状改善に続いて、鼻も改善することを期待できますか?
<回答>
「中耳」と「副鼻腔」はともに鼻腔につながっている腔という考え方から似た性格を持っています。
ですので、鼻のために処方された薬が中耳にもいいということは往々にしてあります。これは西洋の薬でも同じです。というよりも、むしろ西洋の薬の方がそういう点は強いです。
ただ、漢方の場合には、「経絡」とか「五行論」といった(詳細はここでは書きませんが)臓器別の考え方もありますので、鼻に効く薬が必ず耳にも効くとはいえません。しかし、荊芥連翹湯などは鼻でも耳でも「炎症」によるものにはよく効く場合もありますし、葛根湯加川辛夷などは鼻の状態をよくすることで、間接的に耳もよくなっていくことは十分推測されます。
鼻のための薬を処方されたにもかかわらず、鼻よりも先に中耳炎がよくなってきているようですので、こういう場合はしbらく続けていると鼻も徐々によくなってくる可能性が高いようにも思います。
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QK10 良性発作性頭位めまい症と言われましたが漢方で治療したい
A <質問>
母なんですが、病院で良性発作性頭位めまい症と言われたのですが、症状が少し違うような気がします。症状は、激しい回転性めまい、嘔吐、下痢、耳鳴り、難聴です。数年前に突発性難聴になりましたが、完治し反対の耳が聞こえにくいです。現在はめまいがおきると病院で点滴をし、薬をのんでいますが、できる事なら漢方にしたいと思い調べましたが、わかりませんでしたので、なにかあれば是非教えてください。
<回答>
まず、お話の症状が良性発作性めまい症(BPPV)かどうかです。一般にはBPPVは難聴や耳鳴りは伴いません。ただし、めまいの消長に伴わないだけで別に最初から難聴や耳鳴りがある場合は考えられます。また、これははっきりは言えませんが、メニエール病などの内耳疾患の一つの症状としてBPPVの症状を示す場合もあるように思います。ですので、難聴や耳鳴りがあるからBPPVではないと断言はできませんが、典型的ではありませんね。正確に診断するには特定の姿勢をとった時にめまいが起こるのがBPPVなのですが、このめまいがしている時の眼球の動きをよく見ることでほぼ診断できます。
もう一つBPPVかどうか多少気になるのは、下痢を伴うことですね。嘔吐は激しいめまいの時にはどんなめまいでも起こりえますが、下痢は普通伴いません。
まあ、BPPVかどうかはここではおいておき、漢方治療について考えてみましょう。
結論から先に申し上げますと、ここで書面からはうまく合った処方を示すことはできないということです。実際にはその人の体格、体質、その時の状態などいろいろなことを考察して処方を決めないといけないからです。
そのことをあらかじめご了解いただいた上でお話をさせていただきます。まず、発作時ですが、嘔吐・下痢を伴うことを考慮すると五苓散は有効な可能性があります。落ち着いている時の処方としては半夏白朮天麻湯などがよいかもしれません。
いずれにしても、漢方に詳しい耳鼻咽喉科の医師にご相談いただくのがやはりよいと思います。もし、近くに該当する医師がいない場合、漢方の専門医とご相談いただくのもよいと思います。そうした場合、聴力低下を伴うような場合(その時点でBPPVではない可能性がありますが)、耳鼻咽喉科の医師にもしっかり診てもらっておいてください。急性の聴力低下の場合、時期を逸すると戻らなくなる可能性が高いので注意が必要です。また、他の病気(聴神経腫瘍や小脳・脳幹部の病気など)がないことも確認しておかれるとよいとと思います。
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