のどの症状と予想される病気
のどの症状
このような症状に対しては、以下のことに留意して参考にしてください。
(最終的には、最寄りの耳鼻咽喉科(もしくは当科)で診療を受けて下さい。
咽頭痛:
- のどの痛みで最も多いのは当然ですがのどの炎症です。この炎症のうち、ウイルスで生じる咽頭炎・喉頭炎が風邪症候群ですね。
- 風邪の場合、せいぜい1週間で症状が治るなり、痰や咳を伴ってきたりと症状が変化します。症状が長引く場合は、咽頭がん、喉頭がんなどでも痛みを伴う場合はありますので、耳鼻咽喉科で診てもらって下さい。
- 「痛くて水も飲めない」という場合は重症の可能性があります。
- 特に、すごくノドが痛いのに、「それほどのどは赤くありません」と言われた場合には要注意です。食べ物が気管に入らない様にするフタ(喉頭蓋(こうとうがい))が炎症を起こして腫れている場合があります。「急性喉頭蓋炎」と呼ばれる病気で、症状が増悪すると、気道がふさがり窒息する危険もでてきます。こういう場合は、急いで耳鼻咽喉科医のいる入院も可能な病院で診てもらって下さい。入院が必要な場合もあります。
(「痛くて水も飲めない」場合には、もう一つ「扁桃周囲膿瘍」という病気もあります。下の「腫脹」の項を参考にしてください。)- その他、イガイガと言った軽い痛みの場合、逆流性食道炎が潜んでいる場合もあります。
- 「鼻の奥が痛い」というのも上咽頭(鼻咽頭・アデノイド)の炎症で、やはり風邪の初期に痛くなります。この上咽頭に塩化亜鉛というトローチにも含まれている薬を塗る治療法(上咽頭擦過療法(塩化亜鉛療法・B-スポット療法))があります。治療法自体は昔からありましたが、最近、見直されてきています。当科でも、この上咽頭擦過療法を行うことができます。
腫脹:(「扁桃腺」と一般的にいうこともありますが、医学用語としては「扁桃」が正解)
- のどが腫れた感じがする場合には、風邪などでのど全体に粘膜が微妙に腫れている場合もありますが、扁桃を中心に強い炎症を起こしていることもあります。
- 扁桃が大きく腫れる場合や、扁桃の表面に膿が付着している場合があります。急性扁桃炎です。
- 急性扁桃炎では抗生剤が有効な場合が多いですが、頻繁に繰り返す場合、手術による治療も検討します。(扁桃摘出術の適応)
- 一般的な扁桃の炎症は細菌感染やアデノウイルスによる炎症が多いのですが、白い膿が扁桃の表面にたくさん付着している場合、伝染性単核球症という病気の場合もあります。抗生剤をもらっていても症状が改善しない場合疑われます。血液検査が有用です。
- 痛みが強くて、片方の扁桃がいびつに腫れている場合、「扁桃周囲膿瘍」と言って扁桃の回りにまで炎症が広がり膿がたまってきている場合があります。くぐもった声をしていたら要注意です。さらにひどくなると頸も腫れてきて大きな手術が必要になる場合があります。
腫れている部分を切って膿を出したり、入院して抗生剤の点滴で治療する必要がある場合があります。- 痛みを伴わないのどの腫れは腫瘍の可能性もあり注意が必要です。
※扁桃摘出術の適応
1.習慣性扁桃炎・・・のどが痛くなって熱が出て寝込むような状態を、年に4,5回以上引き
起こすことが一つの目安です
2.病巣感染・・・治りにくい病気の中に、扁桃炎での炎症が影響を与えている場合があります。 手術で扁桃を取ってしまうことで病気が改善する場合があります。
掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症およびIgA腎症が有名です。
その他、尋常性乾癬やアレルギー性紫斑病などの皮膚疾患、一部の慢性関節リウマチや非特異的関節痛などの骨関節疾患、持続する微熱やベーチェット病などの疾患にも有効な場合があると言われています。
3.睡眠時無呼吸症候群・・・扁桃肥大のため夜中に息が止まっているのが見られたら手術した方がよいでしょう。息が止まるのは窒息しそうになっているわけで、高血圧や肥満、日中の強い眠気による作業能率の低下などを引き起こす危険があり、突然死や交通事故などを引き起こす危険度が増えます。
咽頭異常感
- 急性ののどの違和感の場合、軽いのどの炎症(咽頭炎)の場合が多いですが、まれに咽頭がんや喉頭がんのどもありますので、長引くときは一度はカメラでみてもらいましょう。
- 急性の炎症を鎮める治療をしても治らない場合や、カメラで食道の入り口が水っぽく腫れている場合には、逆流性食道炎の可能性があります。
- ま た、のどの異常感をきたす病気には、その他、甲状腺疾患や副鼻腔炎による後鼻漏などもあります。甲状腺疾患が疑われた場合は超音波で甲状腺をみてもらった り、血液検査で機能異常がないかも診てもらうとよいでしょう。(当科は超音波検査機を持っていませんので、甲状腺疾患が疑われた場合は近隣の医療機関に紹 介しています。)
- カメラで異常がないと言われた場合でも、症状が続く場合は、さらに食道の中まで見てもらうのも時には必要です。特に食べ物がしみる感じが特に胸の辺りで感じる場合は食道がんを疑い、食道をよく診てもらう必要があります。
- こうした色々な検査を行っても、全く異常がみられない場合もあります。そうした場合は、咽頭異常感症として、定期的に経過をみていくこともあります。漢方薬が効果的な場合もあります。
嗄声
嚥下障害
- 「のどが痛くて飲み込めない」は、咽頭痛を参照してください。
- 「ものが飲み込みにくい」「食事が通りにくい」という症状は、物理的に邪魔をするものがある場合と、機能的に飲み込むシステムがうまく行っていない場合があります。
- 物理的に邪魔をするというには、扁桃肥大、咽頭がん、喉頭がん、食道がんなどがあります。また、逆流性食道炎で胃酸が逆流していて、のどの粘膜が微妙に腫れている場合も飲み込みにくく感じる場合もあります。
- いずれにしても症状が続く場合は、早めに最寄りの耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。
- 機能的に飲み込むシステムがうまく行っていない場合と言うのは、脳梗塞や神経の変性疾患で嚥下を行う神経が弱ってしまった場合です。
- また、まれにハント症候群と呼ばれる水ぼうそうのウイルスの特殊なタイプでも声の嗄れや嚥下障害が現れる場合があります。
- 一般的には咽頭のファイバースコープである程度わかる場合がありますが、はっきりしない場合もあります。そうした場合、色をつけた液やゼリーのような物を飲み込んでもらいながら、ファイバーでうまく飲み込めているかどうかを観察するのが有効です(内視鏡下の嚥下機能検査)。
- 機能的な嚥下障害にはその他、身体の鉄分が足らないような時にも現れる場合があります。
口内炎
- 唇や舌の先に白い小さな(0.5mm~10mm程度)で、平らなものができる場合はアフタ性口内炎と呼ばれるものです。舌先や唇だけでなく、のどの奥の方にも時にできる場合があります。
- 舌先が痛い場合で、舌が赤くなっている場合があります。舌炎です。熱い物を食べて火傷した場合もありますが、ストレス等で交感神経が緊張している場合にもみられます。
- 舌全体が赤く痛む場合、鉄欠乏性の貧血がある場合があります(ハンター舌炎)。
- また、高齢者で舌全体が赤くなって痛む場合があります。高齢になって粘膜の新陳代謝が遅くなってきたため、舌の粘膜が薄くなってきたためと思われます。
- 舌がすごく痛いのに耳鼻咽喉科や口腔外科で診てもらっても異常が見られないと言われる場合があります。いわゆる「舌痛症」と呼ばれるもので、何らかのストレスが関連している場合が多いように思います。
のどの病気に関するよくある質問
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のど/その他の病気一覧表
急性咽喉頭炎 | のどの炎症。いわゆる「風邪」の多くは急性の咽喉頭炎を伴います。 |
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急性扁桃炎 | 扁桃腺の急性炎症。咽頭痛。時に発熱。あまりひどくなる前に治療を。 |
扁桃周囲膿瘍 | 扁桃腺の周囲にまで炎症が進み(扁桃周囲炎)、さらに膿がたまった状態。 さらにひどくなると窒息、縦隔炎をおこし命にかかわることもあり。 |
伝染性単核球症 | EBウイルスによる扁桃炎。幼少時にかかっていない人が、大きくなってかかった時になる。 よって若い人が多い。典型は扁桃腺に白苔がべっとりつく。 抗生物質の点滴をしても効果がない時は疑う。安静が必要。 |
アフタ性口内炎 | 唇や舌の粘膜にできる1~3mm程度の白い炎症。とても痛い。 数日~10日程度で治ります。 同じ所がずっと治らない時は普通の口内炎ではない場合がありますので要注意。 |
味覚障害 | 風邪のあとや舌の炎症後など、あるいは血液中の亜鉛不足などで生じる。 また、他に服用している薬でおこる場合もある。 嗅覚障害に伴う味覚障害は風味の障害で、嗅覚障害がよくなれば味覚も回復する。 |
慢性扁桃炎 | 急性扁桃炎を頻繁に繰り返す場合や、 他の病気の原因になっている場合などは手術をした方がよい時がある。 |
睡眠時無呼吸症候群 | 寝ている時に呼吸が止まる。 その結果身体の酸素は低下し熟睡できず昼間の猛烈な眠気を生む。 無呼吸というより窒息。 |
舌がん | 舌にできた癌。虫歯などでとがった歯が擦れ合う舌の縁にできることが多い。 |
急性喉頭蓋炎 | 急性咽喉頭炎の中でも特に、気管の蓋が炎症を起こすので窒息の危険がある。 のどの痛みが非常に強いわりにはのどはあまり赤くないと言われた時には要注意。 |
声帯炎 | 急性喉頭炎。 特に声帯の炎症が強い時の状態。声のかすれ。 声が出ない。長引く時には、声帯ポリープなど他の病気に注意。 |
声帯ポリープ | 声帯にできたポリープ。良性の粘膜変化だが、他の病気(喉頭がんなど)に注意。 たいていは見たら違いはわかるが、長引く場合細胞の検査を。 軽症は飲み薬や吸入で軽快するが、ある程度大きくなると手術が必要。 |
ポリープ様声帯 | 声帯炎の慢性化したもの。声帯がぶよぶよになった状態。 喫煙と声の使いすぎを控えること。 |
喉頭がん | 気道の入り口「喉頭(のどぼとけの部分)」のがん。 喫煙との関連が深い。声帯に腫瘍ができると声が嗄れる。 |
下咽頭がん | 食道の入り口手前にできた癌。食べたときにしみる感じ、のどがつまる感じ。 熱いものや濃いアルコールなどを長年にわたりとる習慣がある人は注意。 |
反回神経麻痺 | 声帯麻痺のこと。 声のかすれ。 原因不明の場合もあるが、 声帯を動かす神経(反回神経)の通り道に問題がある場合に起こるので精査が必要。 脳の病気、甲状腺がん、肺がん、食道がん、胸部の大動脈瘤などが潜んでいる場合がある。 |