鼻の症状と予想される病気
鼻の症状
このような症状に対しては、以下のことに留意して参考にしてください。
(最終的には、最寄りの耳鼻咽喉科(もしくは当科)で診療を受けて下さい。
症状の青いリンクをクリックしていただくと、病気の詳しい説明を見ることができます。
- 鼻閉:鼻がつまる、鼻で息ができない、鼻がつまって眠れない、口呼吸、口をポカンと開けている
- 水様性鼻汁:鼻水、水洟、水鼻、ダラダラと鼻が止まらない、水っぱな
- 膿性鼻汁:鼻汁、膿のような鼻汁、青洟、あお鼻、黄鼻、黄色い鼻水、緑色の鼻水、みどりっぱな、きばな、ごっとばな
- 粘性鼻汁:鼻汁、粘っこい鼻水
- 後鼻漏:鼻汁がのどに下がる、鼻水がのどの方に垂れる
- 鼻がくさい、臭い鼻水
- 鼻血:鼻に血がまじる、血性鼻汁、鼻血が止まらない
- 鼻声:開鼻声、閉鼻声、鼻にかかる声
- 上顎痛:頬が痛い、目の下が痛い、(上の)歯が痛い、歯痛で歯科に行ったが歯は大丈夫と言われた、目の奥が痛い
- 前頭痛:眉間が痛い、おでこが痛い、額が痛い、眉毛のあたりが痛い
- くしゃみ:くしゃみ、クシャミ、鼻がかゆい、鼻がムズムズする
- 嗅覚障害:臭いがわからない、においがしない、嫌なニオイがする、香りがわからない、こげた臭い、悪臭
鼻閉:鼻の病気であれば、多かれ少なかれ鼻が詰まることは多いですね。
多いのは、風邪に伴う急性鼻炎、アレルギー性鼻炎と花粉症、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎(鼻茸を含む)、小児の場合、アデノイド肥大も鼻閉の大きな原因の一つです。
その他、肥厚性鼻炎、薬剤性鼻炎、まれに鼻腔腫瘍(良性腫瘍や上顎がん・上咽頭がんなど)もあります。またうつ傾向の時にも鼻づまりが気になる場合もあります。
鑑別診断には鼻づまり以外の症状が重要になります。また、鼻のレントゲンや、場合によってCT撮影が必要な場合もあります。腫瘍の場合は最終的には細胞の検査が必要です。
水様性鼻汁:基本的には、ウイルス性の急性鼻炎(すなわち風邪の初期)かアレルギー性鼻炎(花粉症を含む)のことが多いと思います。
この2つを鑑別するのは中々難しいです。一般的には、急性鼻炎であれば咽頭痛や発熱などを伴ったり、時間経過で自然治癒するか、こじれて黄色や緑色の膿性鼻汁に変化していくことが多いと思います。
これに対して、アレルギー性鼻炎の場合、基本的には水様性鼻汁です。ただし、アレルギー性鼻炎でも、長期間放置したり、体調が悪かったりしますと膿性鼻汁へと変化する場合もあります。
膿性鼻汁:急性鼻炎の治りかけにも多少出現することがあるかもしれませんが、基本的にはややこじれた状態と考えるべきでしょう。
すなわち、ウイルスやアレルギー反応によって荒れた粘膜に細菌が感染している状態であることが多いと思われます。細菌感染が副鼻腔にまで侵入した場合、急性副鼻腔炎をひきおこします。この場合、典型例では、頬や額の痛み、頭痛、歯痛などを伴うことが多くなります。
粘性鼻汁:水様性鼻汁から膿性鼻汁への移行時であったり、副鼻腔炎が慢性の時に出やすい鼻汁です。
後鼻漏:この、鼻汁がのどに下がる症状は、普通の風邪や風邪の後半によく見られる症状ですが、急性・慢性の副鼻腔炎でもよくみられます。またアレルギー性鼻炎でも気になる方もいらっしゃいます。患者さんによって時に強い不快感を訴えられる方がいらっしゃいます。
まずは鼻・副鼻腔の加療をしっかり行います。
まれに高齢の方ですごく不快でたえまなく唾をぬぐって受診される方がいらっしゃいます。漢方ではこの症状を喜唾と呼んでいます。
<喜唾>あまり聞き慣れない言葉かと思います。
後鼻漏の一種ですが、後鼻漏感が非常に強く、四六時中唾をぬぐっていらっしゃいます。
比較的高齢者が多いと思います。症状が強いわりには、所見がほとんど見られません。
レントゲンをとってもキレイで副鼻腔炎を認めません。本来粘膜というのは乾いてしまうと苦痛なので、表面は粘液によってたえず濡れた状態に維持されています。
これはあくまで推測ですが、この粘液の成分が何らかの変化をおこしているのだろうと思います。
それによって、本来感じないはずの粘液を感じるようになってしまっているのだろうと思います。
鼻が臭い:嫌な臭いがするというのは、多くの場合細菌感染を起こしていると思われます。
急性副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎などが考えられます。
ただし、まれではありますが、骨が溶けているような場合もあり、上顎がんなどを除外しておく必要があります。抗生剤などでも症状が速やかに消失しない場合は、念のため少なくとも鼻のレントゲンかできればCTを撮ってもらう方がよいと思います。
CTなどで異常がない場合で、痂皮(鼻くそ)などが多い場合、萎縮性鼻炎(臭鼻症)などもまれではありますが考えられます。
鼻血:鼻血には、鼻汁をかんだ時に血が付着してくる程度のものから、あふれるようにポタポタと出てくるものまで様々な程度のものがあります。
鼻汁をかんで少し付着してくるもので一番多いのは、鼻のかみすぎで鼻粘膜が荒れて出血するものが最も多いと思います。ただし、ごくまれに鼻の中のがんなどの場合もありますので、続くようなら、しっかり診てもらいましょう。
ポタポタと鼻血がでる場合は、多くの場合鼻粘膜の傷からと思われます。鼻翼の所で鼻をつまみ5~10分抑えていると多くの場合止まります。逆に少量の鼻血がいつまでもダラダラと止まらない場合は血液の問題などが潜んでいないか検査する必要があります。
高血圧がありますと、いったん出血した場合に止まりにくい場合もあります。日ごろから血圧のコントロールも大切です。
鼻声:鼻声というのも中々難しいものです。明らかに鼻が詰まっているタイプは、もともとの病気(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎・蓄膿症など)を治療していけばよくなります。ただし、鼻茸があったり、鼻の粘膜が完全に腫れてしまったタイプ(肥厚性鼻炎)あるいは、飲み薬やスプレーなどでも症状が改善しないアレルギー性鼻炎などは手術が必要な場合もあります。
では、鼻づまりがなくて鼻声の場合はどうでしょう?風邪を引いた後の場合などで、鼻づまりのない鼻声が残るタイプというのは、副鼻腔の粘膜が腫れているのかもしれません。声というのはもともとの音は声帯ででるのですが、口腔や鼻腔・副鼻腔で共鳴して各自の独特の声色になります。副鼻腔の粘膜が腫れると共鳴が変化するので、今まで聴いていた自分の声の質が変わった様に感じるのだと思います。
上顎痛:急性副鼻腔炎でよくみられる症状です。ただし、上顎がんでも似たような症状が現れることがありますので、抗生剤・消炎剤等で症状が改善しない場合は、早めにCTで骨が溶けたりしていないかを確認する必要があります。薬で症状が改善しない場合は、手術をした方がよい場合もあります。
前頭痛:急性副鼻腔炎でよくみられる症状です。抗生剤、消炎剤、粘膜調整剤、漢方薬などで治療を行います。症状がひどい場合や繰り返す場合は手術も一つの方法です。
風邪の初期にも同様の症状がみらる場合がありますが、風邪の場合は治るなり、黄色い鼻汁になったり、熱がでたりと症状が変化していきます。これに対して、アレルギー性鼻炎は基本的には同じ症状が続きます。(ただし、あまり放置しているとアレルギー性鼻炎でも、粘膜が荒れてきて、細菌感染を伴うようになり、鼻汁が黄色くなることもあります。)
嗅覚障害:「臭いがしない」という場合、基本的には2つの場合があります。
1つは、鼻の粘膜が腫れて、臭いの分子が臭いの神経のもとにまで届かない場合(閉塞性嗅覚障害)。この場合は、鼻の粘膜が腫れた原因となる病気(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など)をまずは治していきます。
もう一つは、臭いの神経が弱ってしまっている場合(神経性嗅覚障害)。これは、なかなか治りにくい場合もありますが、ステロイドの点鼻あるいはスプレーやビタミン剤、あるいはステロイドの内服などを行います。また、最近では漢方薬の当帰芍薬散が有効だといわれています。
神経性嗅覚障害はアルツハイマー病などの初期に出現する場合もありますので注意が必要です。
「いやな臭いがする」という場合は、一つは急性副鼻腔炎などで嫌な臭いを発生させる細菌の感染がある場合。もう一つは、臭いの神経がウイルス等でかなり障害を受けた場合。これは神経性嗅覚障害に準じて治療を行います。
主な鼻の病気
急性鼻炎、慢性鼻炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎、鼻中隔彎曲症、肥厚性鼻炎、薬剤性鼻炎、アレルギー性鼻炎、花粉症 など
鼻の病気に関するよくある質問
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鼻の病気一覧表
アレルギー性鼻炎 | アレルギーによる鼻炎。くしゃみ、鼻水、鼻づまり。 花粉やホコリ(ハウスダスト)、ダニなどに対して過敏に反応してしまう状態。 こうした原因になる物質を抗原とかアレルゲンと呼ぶ。 ハウスダストやダニなどで一年中引き起こされるものは通年性アレルギー性鼻炎とも呼ぶ。治療法としては、
などがあります。自分にあった治療法を探しましょう。 |
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花粉症 | アレルギー性鼻炎の中でも、花粉によって引き起こされるもの。 目やのどの痒みまでおこることも多い。 2~3月頃のスギ花粉症が有名だが、引き続き起こるヒノキ花粉症(春) イネ科の雑草(カモガヤなど:初夏~夏)の花粉による花粉症、 キク科の雑草(ブタクサなど:秋)の花粉による花粉症なども結構ある。 治療は、通年性アレルギー性鼻炎と基本的には同じ。 |
急性鼻炎 | いわゆる鼻かぜ。 基本的にはウイルス性で透明な鼻水が中心だが、こじれると細菌感染も合併し、膿性鼻汁となる。 急性の副鼻腔炎等に変化していく場合がある。 初期は抗生剤は不要だが、膿性鼻汁が多くなれば抗生剤も有効な場合が多い。 |
急性副鼻腔炎 (急性ちくのう症) |
黄色い鼻汁が出て、眼の下や額などに痛みを伴う。頭痛の精査でわかることもあり。 歯が痛く感じることも。逆に歯が悪いために副鼻腔炎になることもある。 抗生剤を中心に治療を行うが、症状がひどい場合や繰り返す場合は手術がよい。歯が悪い場合は歯科治療が必要。 |
慢性副鼻腔炎 (ちくのう症) |
慢性的に鼻汁、鼻づまり、のどに鼻汁が下がるなどの症状あり。 小さい時の副鼻腔炎は成長するにつれ、大概はおさまるが、大人に持ち越さないようにだけ注意を。 内服治療は、初期は急性副鼻腔炎に準じるが、 その後、消炎剤とマクロライド系抗生物質を常用量の半量程度で数ヶ月服用する方法が効果的なことが多い。 漢方薬も有効な場合がある。内服治療等で改善しない場合は、手術治療を検討する。 近年、内視鏡による手術が主流。 |
鼻茸 (はなたけ) |
はなたけ。慢性副鼻腔炎に伴って出来てくることが多い。 大腸ポリープは腫瘍だが、鼻ポリープは炎症が長引いて粘膜がぶよぶよになったもの。 ただし、腫瘍と区別がつきにくい時もあるので、疑わしいときは検査が必要。好酸球性副鼻腔炎に合併するものも多い。 また、喘息と関連のあるものも多く、その場合は鎮痛剤でアスピリン喘息をきたしやすいので注意が必要。 治療は慢性副鼻腔炎に準じるが、アレルギー関与のものは抗アレルギー薬も併用する。 |
好酸球性副鼻腔炎 | 近年注目されている副鼻腔炎。 白血球の一種の好酸球が引き起こす副鼻腔炎。 従来の副鼻腔炎に効果的なマクロライド系抗生物質の少量長期療法も効果が少ない、手術をしても再発しやすい、など難治性。 喘息の合併も多い。ステロイドの内服が有効。 |
術後性頬部嚢腫 | 昔副鼻腔炎の手術をした人で、頬が痛くなってきたらこの病気に注意。 近年、内視鏡による手術が増えたので、この術後性頬部嚢腫は少なくなった。 CTで診断。 |
鼻中隔彎曲症 | 右と左の鼻の穴を隔てているしきりは、 多かれ少なかれ左右どちらかに曲がっているのだが、その曲がりが強い人は鼻づまりの原因になる。 ひどい時は手術がよい。 |
肥厚性鼻炎 | 鼻の粘膜(特に下鼻甲介というひだの粘膜)が腫れてしまい鼻づまりがひどい状態。 薬で改善しなければ手術。 粘膜を切り取る、粘膜の中の骨をくりぬく、あるいは粘膜をレーザーで焼く等の手術がある。 |
薬剤性鼻炎 | 市販の点鼻薬や医療機関で処方される点鼻薬でも血管収縮剤を含むものでは、 使いすぎると徐々に効果の持続する時間が短くなり、効果が切れてくるとますます鼻がつまるために、 さらに点鼻薬を使用するという悪循環に陥る。これを薬剤性鼻炎と呼ぶ。 極力血管収縮剤入りの点鼻薬・スプレーの使用を控える必要がある。 抗ロイコトリエン剤など鼻閉に有効性の高い抗アレルギー剤の服用や、 場合によってステロイド剤の内服等の手助けを借りる場合もある。 |
アデノイド肥大 | 鼻の奥にある扁桃腺の一つ。 小さい子では鼻づまり、滲出性中耳炎、睡眠時無呼吸症候群の原因にもなることがある。 成長とともに縮小することが多いが、あまりひどい時には手術がよい。 |
上顎がん | 鼻領域を代表する悪性腫瘍。 最初、歯の痛みとして発症することもあるので、歯の治療をしても痛みが改善しない時は疑う。 |
上咽頭がん | 鼻の奥、鼻とのどのつなぎ目(アデノイドと同じ所)にできる癌。 見つけにくい場所にある。 大人の滲出性中耳炎はこの病気に注意。鼻づまり、鼻出血の時にも注意。 |
嗅覚障害 | においがわからない。 鼻づまりでニオイの分子がニオイの受容器に到達できない場合、 ニオイの受容体またはニオイの神経がダメージを受けている場合などがある。 まれだが、アルツハイマー病などのごく初期に、嗅覚障害から始まる場合がある。 アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある場合はその疾患の治療を行う。 嗅覚自体の治療としては、ビタミンB12製剤、血流改善剤、ステロイドの点鼻など。 最近、漢方薬の当帰芍薬散が有効と言われている。 |