Let’s Study 栄養学6 Vitamin D vol.6

前回の記事からだいぶん日が経ってしまいました。
いつもの年ですと、ゴールデンウイークを越すと、
ヒノキ花粉症も終わり、
イネ科の雑草の花粉症が増えてくるとは言え、
だいぶんヒマになるのですが、
今年は何となくバタバタと忙しくしています。

やっぱり風邪が治りにくいというか、
何回もすぐに喉が痛くなったり咳が止まらなかったりで、
受診される患者さんが多い様な気がします。

やっぱりビタミンDが足らないのではないか
と思ってしまいます。

というわけで、ビタミンDについてのお話の続きです。

以前、”日本人の98%が不足しているという報告もある様です”
という話を書きました。
Let’s Study 栄養学2 Vitamin D vol.2

この報告とやらの論文を探してみました。
たぶんこれかと思います。
”Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry(完全自動化液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法を用いた日本人成人における血清中25-ヒドロキシビタミンD基準範囲の決定)”
出典は、The Journal of Nutrition Volume 153, Issue 4, April 2023, Pages 1253-1264
DOI:https://doi.org/10.1016/j.tjnut.2023.01.036
著者は、Hiroyasu Miyamoto先生他(慈恵医科大学)

ざっと大雑把に内容を書きますと、
「血清25(OH)D濃度を正確かつ迅速に測定できる
全自動LC-MS/MSシステム(島津製作所製)を用いて、
日本の健康な集団におけるビタミンD状態のマススクリーニングを実施。
算出された平均濃度(15.5 ng/mL)は、
以前に報告された濃度(20.5 ng/mL)よりもはるかに低かった。」
とのことでした。

これは都市部の人での検査なので、
全国どこでも同じとは限りませんが、
現代の生活様式だと概ね同じ傾向でしょうか。

ただ、ちょっと気になったのは、
ビタミンDは年齢が若い人ほど少ない傾向がある様だということです。


ビタミンDは日光を浴びることで皮膚からも産生されるそうです。
高齢者ほど日に当たっているとも僕は思っていなかったのですが、
この論文では、
”日本の定年退職者が屋外で運動する傾向があることから説明できるかもしれない”
と考察されています。
確かにグランドゴルフなどよくやられてますね。

その他、食生活の変化なども影響があるかもしれないとのこと。
”かつて日本では、ビタミンDを12.7μg/100g含む干しシイタケがよく食べられていた。したがって、日本の都市部における栄養習慣の変化やその他のライフスタイルの変化が、血清25(OH)D濃度の低値の原因である可能性がある”

他にも、女性被験者の25(OH)D値は男性よりも有意に低かったそうです。
これはUVカット製品などの使用が女性の方が多いからかもしれません。

ビタミンD濃度を上げるには、食事と日光です。
食事については、以前このブログでもご紹介しました、
新百合ヶ丘総合病院 袴田先生のコラムにも書いてあります。
https://www.shinyuri-hospital.com/column/column_201902.html

”ビタミンDが摂れる食材としては
①きくらげや干しシイタケなどのキノコ類
②内臓ごと食べられる魚類、ししゃもやしらす干しなどのほか、鮭も推奨されます”

他にも、公益財団法人骨粗鬆症財団さんが作成されている
パンフレットなども参考になるかと思います。
leaf_02_181003.pdf (jpof.or.jp)

これに対して、日光に当たる目安ですが、
上で紹介しました論文の中に他論文の引用ですがみられます。
”東京の日照量と日照強度は、十分なビタミンDの生成を誘導するのに十分である。
具体的には、顔面と両手の甲に相当する面積(600 cm2)の皮膚から、午後12時に5.5μgの25(OH)Dを安全に生成するのに必要な東京の日照時間は、7月で3.5分、12月で22.4分と推定されている”
とあります。

この情報の引用元の論文です。
・Vitamin D in the dietary reference intakes for Japanese (DRIs) 2020.(DOI: 10.3177/jnsv.66.497
・Determining an effective UV radiation exposure time for vitamin D synthesis in the skin without risk to health: simplified estimations from UV observations.(DOI: 10.1111/php.12651

興味をもたれた方はこちらを確認してみてください。