「続きは次回」と書きながら、大分時間がたってしまいました。
ビタミンDの骨に関する作用以外の注目されている作用とは、
ざっくりと言えば、
・免疫力の向上
・アレルギー症状の改善・・・アトピー性皮膚炎や花粉症の改善
・うつなどのメンタル症状に効果的
でした。
免疫力の向上という点から言えば、
COVID-19に関して言えば
たとえば、こんな記事があります。
”Role of vitamin D in preventing of COVID-19 infection, progression and severity(COVID-19感染、進行、重症化予防におけるビタミンDの役割)”
出典は、J Infect Public Health. 2020 Oct;13(10):1373-1380.
AbstractをPCの翻訳で載せてみます。
”COVID-19の流行は世界的な公衆衛生の危機を引き起こしている。この感染症の防御因子についてはほとんど知られていない。そのため、感染、進行、重症化のリスクを軽減できる予防保健対策が切実に求められている。この総説では、COVID-19をはじめとする急性呼吸器感染症のリスクおよび重症度の軽減におけるビタミンDの役割の可能性について論じた。さらに本研究では、2020年5月20日時点の欧州20カ国におけるビタミンDレベルとCOVID-19症例および死亡との相関を明らかにした。ヨーロッパ諸国において、平均ビタミンD濃度と人口100万人当たりのCOVID-19症例の間に有意な負の相関(p=0.033)が観察された。しかし、これらの国のCOVID-19死亡者数とビタミンDの相関は有意ではなかった。ビタミンDの状態とCOVID-19の重症度や死亡率との相関を示したレトロスペクティブ研究もあるが、交絡変数を調整しても相関を認めなかった研究もある。いくつかの研究では、急性ウイルス性呼吸器感染症や肺炎のリスクを減少させるビタミンDの役割が実証されている。これには、ウイルスの複製を直接阻害する方法と、抗炎症作用や免疫調節作用を利用する方法がある。メタアナリシスでは、ビタミンDの補充は急性呼吸器感染症に対して安全で有効であることが示されている。したがって、この世界的大流行時にビタミンD欠乏のリスクが高い人は、ビタミンDサプリメントを摂取して、循環25(OH)Dを至適レベル(75-125nmol/L)に維持することを考慮すべきである。結論として、ビタミンDレベルとCOVID-19の重症度や死亡率との関連については十分なエビデンスがない。したがって、この仮説を検証するためにはランダム化比較試験やコホート研究が必要である。”
血中のビタミンD濃度が高いと、
COVID-19にかかりにくい可能性はあるものの、
重症度や死亡率とは関連がなかった様です。
しかし、ビタミンDが欠乏している人は、
肺炎のような急性呼吸器感染症の予防のためにも
補充した方がいいと思われます。
では、COVID-19の後遺症(Long-COIVD)に対してはどうでしょうか?
それに対しては、次のような論文がありました。
”Investigating the Relationship between Vitamin D and Persistent Symptoms Following SARS-CoV-2 Infection – PubMed (nih.gov)(ビタミンDとSARS-CoV-2感染後の持続的症状との関係を調べる)”
出典は、Nutrients. 2021 Jul 15;13(7):2430.
Abstract
The emergence of persistent symptoms following SARS-CoV-2 infection, known as long COVID, is providing a new challenge to healthcare systems. The cardinal features are fatigue and reduced exercise tolerance. Vitamin D is known to have pleotropic effects far beyond bone health and is associated with immune modulation and autoimmunity. We hypothesize that vitamin D levels are associated with persistent symptoms following COVID-19. Herein, we investigate the relationship between vitamin D and fatigue and reduced exercise tolerance, assessed by the Chalder Fatigue Score, six-minute walk test and modified Borg scale. Multivariable linear and logistic regression models were used to evaluate the relationships. A total of 149 patients were recruited at a median of 79 days after COVID-19 illness. The median vitamin D level was 62 nmol/L, with n = 36 (24%) having levels 30-49 nmol/L and n = 14 (9%) with levels <30 nmol/L. Fatigue was common, with n = 86 (58%) meeting the case definition. The median Borg score was 3, while the median distance covered for the walk test was 450 m. No relationship between vitamin D and the measures of ongoing ill-health assessed in the study was found following multivariable regression analysis. These results suggest that persistent fatigue and reduced exercise tolerance following COVID-19 are independent of vitamin D.
要旨
長いCOVIDとして知られるSARS-CoV-2感染後の持続的な症状の出現は、医療システムに新たな課題をもたらしている。その主な特徴は、疲労と運動耐容能の低下である。ビタミンDは、骨の健康だけでなく、免疫調節や自己免疫にも関連し、多方面に影響を及ぼすことが知られている。我々は、ビタミンDレベルがCOVID-19後の症状の持続と関連しているという仮説を立てた。ここでは、ビタミンDと、Chalder Fatigue Score、6分間歩行試験、modified Borg scaleで評価した疲労および運動耐容能の低下との関係を調査する。多変量線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを用いて関係を評価した。COVID-19の発病後79日目(中央値)に149人の患者がリクルートされた。ビタミンD値の中央値は62nmol/Lで、n=36人(24%)が30-49nmol/L、n=14人(9%)が30nmol/L未満であった。疲労は一般的で、n=86人(58%)が症例定義を満たした。多変量回帰分析の結果、ビタミンDと本研究で評価された継続的な不健康の指標との間に関係は認められなかった。これらの結果から、COVID-19後の持続的な疲労と運動耐容能の低下は、ビタミンDとは無関係であることが示唆された。
ビタミンDについて話を書き出した時には、
ちょっと期待していたのですが、
後遺症にはあまり関係ない様です。
しかし、次のような論文もあります。
”Vitamin D: A Role Also in Long COVID-19?(ビタミンD: Long-COVID-19にも役割?)”
出典は、Nutrients. 2022 Apr 13;14(8):1625
Abstract
Coronavirus disease 2019 (COVID-19) has quickly become a global pandemic. Reports from different parts of the world indicate that a significant proportion of people who have recovered from COVID-19 are suffering from various health problems collectively referred to as “long COVID-19”. Common symptoms include fatigue, shortness of breath, cough, joint pain, chest pain, muscle aches, headaches, and so on. Vitamin D is an immunomodulatory hormone with proven efficacy against various upper respiratory tract infections. Vitamin D can inhibit hyperinflammatory reactions and accelerate the healing process in the affected areas, especially in lung tissue. Moreover, vitamin D deficiency has been associated with the severity and mortality of COVID-19 cases, with a high prevalence of hypovitaminosis D found in patients with COVID-19 and acute respiratory failure. Thus, there are promising reasons to promote research into the effects of vitamin D supplementation in COVID-19 patients. However, no studies to date have found that vitamin D affects post-COVID-19 symptoms or biomarkers. Based on this scenario, this review aims to provide an up-to-date overview of the potential role of vitamin D in long COVID-19 and of the current literature on this topic.
要旨
コロナウイルス感染症2019(COVID-19)は瞬く間に世界的大流行となった。世界各地からの報告によると、COVID-19から回復した人々のかなりの割合が、「Long-COVID-19」と総称される様々な健康問題に苦しんでいる。一般的な症状には、疲労、息切れ、咳、関節痛、胸痛、筋肉痛、頭痛などがある。ビタミンDは免疫調節ホルモンであり、様々な上気道感染症に対する有効性が証明されている。ビタミンDは炎症亢進反応を抑制し、患部、特に肺組織の治癒過程を促進することができる。さらに、ビタミンDの欠乏はCOVID-19症例の重症度と死亡率に関連しており、COVID-19と急性呼吸不全の患者ではビタミンD低値の有病率が高いことが判明している。したがって、COVID-19患者におけるビタミンD補充効果の研究を推進する有望な理由がある。しかし、ビタミンDがCOVID-19後の症状やバイオマーカーに影響を及ぼすことを明らかにした研究は現在までにない。このシナリオに基づき、この総説は、長期COVID-19におけるビタミンDの潜在的役割と、このテーマに関する現在の文献について最新の概要を提供することを目的とする。
この論文は、疫学的な研究ではありませんが、
いろいろな論文をもとに総説として書かれています。
この論文では、ビタミンDと重症化や死亡率は関連があるとなってますね。
さらに、この論文では後遺症についても詳しく書かれています。
この論文は、じっくりと読んでみるのもいいかと思いますので、
日を改めて書いてみようかと思います。
まあ、だからと言って
ビタミンDは摂らなくてもいいというわけではないと思います。
ビタミンDが少ないと罹りやすいわけですから、
普段からビタミンDをしっかり摂っておく方がよいと思われます。