『知的生活の方法』 渡辺昇一著, 講談社現代新書
かなり売れた本で、ご存じの方も多いかもしれません。
今でもうちの本棚に置いてあります。
せっかくなので本棚から取り出してきました。
いやぁ、懐かしい!
この本を手にとるのは何年ぶりだろう?
パラパラとめくってみると、
現在の自分の行動規範のもとになったと思われる文章が
いくつも目に飛び込んできてびっくりしました。
・身銭を切る(p.70)
本を買う意味について、渡辺氏は,
「骨董品の目利きになるには
実際にお金を出して買うことが大切だと言われるのと同じように
本の価値を知ることも、お金を出して買って読むことでわかってくる」
といいます。
余談ですが、「身銭を切る」を僕は結婚するまでずっと、
「シンセン切る」と読むと思っていました。
結婚してうちの嫁さんに得意げにこの話をしたら、
すぐさまダメ出しを食らいました。
・「時は金なり」というが、「金は時なり」でもある(p.110)
これは大学教授で学者兼作家でもある渡辺氏にとっては、
「資料となる本が手元にないことは致命的であり、
調べるために取り寄せたり、図書館に行くのは時間の浪費だ」
という観点からの言葉でした。
僕は、それだけでなく、バスで行かねばならないところを
タクシーに乗ることで時間の節約になるからという理由で、
タクシーに乗ることへの言い訳にも使っています。
そして、極めつけは、本を買い続けることの大切さです。
・「本を買い続けることは、知的生活者の頭脳にとっては、
カイコに桑を与えつづけることに匹敵する」(p.92)
ま、いまや、カイコも桑も見たことのない人の方が
圧倒的に多数になってしまって、いまいちピンとこないかもしれませんね。
この「本を買う・買い続ける」という行為についての記述の中に、
極貧だったギッシングという小説家が、
ある日、古本屋でハイネの古い詩集を見つける場面が紹介されています。(p.78)
・その本の値段はたった6ペンスだったが、極貧の彼にとって、
6ペンスあればハムやソーセージを買うことができた。
しかし、彼は思い悩んだ結果、その本を買い、
安いワインとパンだけの夕食をとりながら、貪るように本を読んだ・・・
ここの所が、田舎から出てきた、若造に響いたんですね。
実にストイックな生活!
ある種のあこがれでした。
そこで、若造は真似をします。
スーパーだったか酒屋だったか忘れましたが、
どこかで安いロゼの辛口ワインとフランスパンを買ってきました。
(なぜかロゼの辛口ワインでした。
なぜそのワインにしたのかは全く覚えていませんが。)
そして、買ってきた本は、当然!
『知的生活』 P.G.ハマトン著 渡部昇一・下谷和幸訳,講談社
ハードカバーの420頁からなる、結構分厚い本です。
どうも、形から入るところは、この頃からだったんですね。
そして、結局形だけで終わるところも。
『知的生活の方法』は結構熟読しましたが、
このハマトンの『知的生活』は、
最初の数頁読んだところで眠たくなって、
ひょっとしたらワインで酔ったためでしょうか?
あとは読まれずに、今でも本棚の端の方にひっそりと鎮座されています。
いつかは読もう!と思っていたのですがね。
ところで、この話には後日談があります。
というか、今回この話をしようと、
『知的生活の方法』を久しぶりに本棚から取り出して読んでみました。
すると、先に書いた場面、
「ギッシングがハイネの詩集を買って貪るように読んだ」とするところですね。
もう一度読み返してみると、
なんと、夕食は、「安いワインとパン」ではなく、「バターとパンだけ」と
書いてあるではありませんか!
おかしいなぁ?
確かにワインとパンだったはずなんだがなぁ~
人間の記憶ってこんなにいい加減だとは思っていませんでした。
いつのまに、バターがワインになっちゃったんだろう?
まぁ、何はともあれ、
初めて飲んだワインはロゼの安いワインだったのではないかと思います。
※文中( )内の頁数は、『知的生活の方法』第2刷からの引用です