現代の食品は栄養素が低いのか?2 

昨日からの続きです。
nature briefing のリンクをたどると次のサイトにたどり着きます。

Is modern food lower in nutrients?
(現代の食品は栄養素が低いのか?)

出典はChemistry Worldの2023.12.5版
(同じくDeepLで翻訳)

”いくつかの論文で、研究者たちは食品表(食品のミネラル組成に関する歴史的情報を国ごとにまとめたもの)を使って、果物や野菜に含まれる鉄分、ビタミン、亜鉛などの微量栄養素が時代とともに明らかに減少していることを報告している。”

”このテーマに関する研究のひとつは1997年にさかのぼる。英国の栄養コンサルタント、アン=マリー・メイヤーが英国政府の食品表の構成を調べたときのことである。彼女は1930年代に報告された20種類の果物と20種類の野菜のミネラル含有量を1980年代のものと比較し、1980年代のものはマグネシウム、銅、その他の微量栄養素の含有量が低いことを発見した。”

”2004年、アメリカのチームが同様の分析を行い、1950年と1999年に家庭菜園でよく栽培された43種類の生野菜の栄養素を比較した。その結果、6つの栄養素(タンパク質、カルシウム、リン、鉄、リボフラビン、ビタミンC)が明らかに減少していることが判明した。”

一応科学的な目で見ると、単純な比較ではダメな様です。
対象が微妙に違ったり、検査の方法も変化してきているからです。
ただ、それを差し引いても、栄養素の減少の傾向はありそうで、
警鐘を鳴らしたいということなんだそうです。

”英国人が毎日食べるものの大部分を占める小麦などの英国の主食を対象としている。(中略)2008年のMcGrathの共著で、科学者たちは160年間にわたる小麦の収量と栄養価の変化を調べた。その結果、1845年から1967年の間、ほとんどの区画で穀物のミネラル濃度は安定していた。しかし、1968年以降、亜鉛、銅、マグネシウムの濃度が低下し始めた。”

何が原因なのか?
考察が続きます。

”1968年から2005年にかけてマクグラス氏らが経験した小麦の栄養価の低下は、「緑の革命」と呼ばれた時期に高収量の新品種が導入されたことと一致している。”

”1960年代後半、農学者たちは人口増加に対応するために新しい作物を導入した。これらの作物は収量を増やし、より多くの穀物を生産し、より多くの人々に食糧を供給した。
(中略)
しかし、緑の革命はその恩恵の一方で、望ましくない結果をもたらしたようだ。緑の革命の小麦品種と古い品種を比較したところ、同じ条件で古い品種と並べて栽培した場合、最新の品種はミネラルの含有量が少ないことがマクグラス氏らの研究でわかった。このことは、微量栄養素の減少が環境要因によるものではなく、植物の内部で起こっていることを示唆している。
(中略)
2020年、研究チームはロザムステッド大学の小麦サンプルと16カ国の薬草園のサンプルを分析した。その結果、イギリスのサンプルと同様、世界中の小麦がここ数十年で栄養的に変化していることがわかった。炭水化物は増加し、タンパク質とミネラルの含有量は減少した。”

つまり、作物がたくさん採れるようになったけど、
栄養素的には薄くなったんじゃないかということです。

その他にも原因はありそうです。
科学者達は大気中の二酸化炭素の濃度の上昇も
作物に影響を与えているのではないかと考えています。

”2000年代初頭、数学者のイラクリ・ロラゼは、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が「微量栄養素の栄養不良というすでに深刻な問題」を悪化させるはずだと主張し、そのような理論を発表した。”

”2018年、ジスカが協力した科学者チームは、中国と日本のFace(自由空気二酸化炭素濃縮)施設で、二酸化炭素濃度が稲の栄養分に影響を与えるかどうかをテストした。チームは、異なるイネ品種を常温と二酸化炭素濃縮条件で栽培したところ、二酸化炭素が最も多いイネ品種でタンパク質が10%減少した。また、鉄、亜鉛、ビタミンB1、B2、B5、B9が大幅に減少し、ビタミンEは増加した。”

なぜ二酸化炭素濃度が上昇すると作物の栄養価が低下するのか?
”この刺激は炭素(空気中の二酸化炭素の増加)に対するもので、カルシウム、リン、窒素といった土壌中の他の栄養素に対するものではありません。植物は炭素に富み、栄養素に乏しくなっているのです」とジスカは言う。窒素を必要とするビタミンB複合体のような二次化合物は減少していますが、ビタミンEのような他の化合物(窒素はなく、すべて炭素です)は増加しています」と彼は付け加えた。”
”微量栄養素の減少を説明できるもうひとつの経路は、水効率に関するものである。二酸化炭素の濃度が高くなると、植物は水の効率がよくなります。つまり、土壌から取り込む微量栄養素の量が少なくなるのです」と海老教授は付け加える。”

大気の二酸化炭素の増加で炭水化物が作りやすくなった結果、
作物自体は簡単に大きくなり、
穀物なども量を増やすことができるようになった反面、
ビタミンやミネラル、他の栄養素は薄くなっているということみたいです。

その結果、それを食べてる我々の身体も似たような構成になっているわけです。

これを聞いて、だから二酸化炭素を減らすためにEV車にしましょうとか、
太陽光発電にしましょう、というのはまた別の問題かと思います。
特に太陽光発電については、山林を切り開いてまでやるのは
本末転倒の様な気がします。

足らなくなった栄養素はサプリで摂ればいいという考えもあります。
だからか、ネットをさまよっていると、
健康食品やサプリ等のCMがすごく目につきます。
(まあ、僕がそこに興味を持って、一つサイトを見に行くと、
ネットの方で、「この人はそういうことに興味があるんだ」と、
いろいろと次から次へと関連するサイトを提案してくるかもしれませんが。)

サプリ等の利用は、とりあえず急場はそれもいいかと思います。
しかし、根本的なところは、口に入るものをよく吟味して、
栄養素の高い作物を実際に食べてみて、
その違いを感じることが大切かと思います。
そして見かけではなく本当に栄養素の高いものを消費者は欲しているのだと
生産者に伝えていかなければいけないのだろうと思います。
というか、本当は自分で食べるものは自分で作るのが理想かもしれませんね。