あともう少し、
『小さな町の精神科の名医が教える メンタルを強くする食習慣』
という本を見ていきます。
興味を持たれた方は本書をご覧ください。
栄養について、ビタミン・ミネラルを中心に各論です。
<メンタルを強くする栄養成分>p.286
ビタミンB群・・・エネルギー代謝に広く関与
ビタミンB群が不足していると三大栄養素を摂っていても、
ミトコンドリアがATPを作れずエネルギー不足に
チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)
ピリドキシン(B6)、コバラミン(B12)、葉酸、ビオチン
B1欠乏・・・ミトコンドリア内でのATP産生ができない
⇒ATPを大量に消費する細胞:神経、筋肉、心筋、肝臓などの働きが大きく低下
⇒脚気など
スポーツドリンクを大量に飲む人、大量飲酒者は注意
B2欠乏・・・脂質を脂肪酸に分解する際に必要
長鎖脂肪酸がアシルCoAに変化し、ミトコンドリアでATPになるが、
B2がないとミトコンドリアに取り込まれない
B6欠乏・・・脳内の神経伝達物質を作る際の酵素の補酵素
聴覚過敏、羞明、易疲労、カラーでリアルな夢
体内のタンパク質合成で多くの酵素がB6を補酵素にしている
適正摂取⇒粘膜、皮膚、タンパク質のターンオーバーが活発になる
肌荒れや肌のくすみ解消、造血作用、女性ホルモン(エストロゲン)合成を助ける
葉酸不足・・・赤血球の成熟が妨げられる=MCV↑
大きな赤血球は毛細血管を通れず役割を果たせない・壊れやすい
大酒飲みの手先がしびれるのは葉酸の吸収が妨げられるから
妊娠初期にすすめられる・・・不足していると胎児のDNA合成や神経管形成に影響
それぞれのビタミンBが働くには、他のビタミンBも必要
摂取するときは複合体そして摂取するのが一般的
現代人はビタミンB群が不足しがち
ストレスもビタミンB群は消耗する
経口避妊薬、免疫抑制剤、抗てんかん薬などでも
ビタミンB群は吸収を阻害される
<ナイアシン、NMN、NAD+>p.295
ナイアシン:ニコチン酸とニコチンアミドの総称、別名ビタミンB3
ナイアシン欠乏(ペラグラ)・・・皮膚炎、下痢、精神神経障害
アルコール大量飲酒者、極端な偏食の人に多い
ナイアシンは小腸から吸収され⇒NADになる⇒NADP・・・酸化還元反応に関与
からだのすべての酸化還元反応の7割近くにおいてナイアシンが補酵素
アルコール分解にも必要な補酵素
LDLコレステロールや中性脂肪を下げ、
HDLコレステロールを上昇させる(血清脂質改善作用)
神経伝達物質の生合成に働く酵素の補酵素
欧米ではメンタル不調にナイアシンを使うのはポピュラー
最近、ナイアシンの代謝物がサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)にも
関連していることで注目されている
NADはエネルギー代謝、DNAの損傷・修復、遺伝子発現、
ストレス応答を制御し、抗酸化に働く
NADを増やすには一つ手前のNMN(ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド)を
補充するのがよい
ただ現状では非常に高価
<ビタミンA> p.302
脂溶性ビタミン
ステロイドホルモンと同様、核内受容体に効くため、速やかに鋭い効き方をする
自閉症や発達障害の患者さんに栄養療法を行うときはビタミンAを摂ってもらう
亜鉛不足だとビタミンAが十分働けないため亜鉛も同時に補充してもらう
皮膚や粘膜の健康に大きく関与
皮膚、口、呼吸器、消化器など、全身の粘膜を健康に保つために必要
⇒免疫にも関与:IgA・・・低下すると風邪をひきやすくなる
⇒ ドライアイ・ドライマウス、ドライスキン、性交痛
夜盲症はビタミンA不測の初期症状
抗がん作用も期待されている
動物や魚のレバー、卵、黄緑色野菜のβカロテンは
体内でビタミンAに変換される
ただ、βカロテンをたくさん入れたからと言って
ビタミンAで期待する効果は現れるとは考えにくい
(βカロテンしか入っていないビタミンAサプリに過度の期待は×)
<ビタミンC> p.305
毒虫に刺されたりすると、
ビタミンCの血中濃度が検出限界以下になるほど消耗が起こる
抗酸化物として働くとき、ビタミンCtビタミンEはセットで働く
ビタミンCは、ビタミンE・尿酸・グルタチオン・βカロテンといった
抗酸化物が働いて自らが酸化したときに、それを還元して再生を図る
炎症があると好中球が活性化し、次亜塩素酸を出して殺菌しようとする
しかし次亜塩素酸の過剰発生は組織を壊してしまう
ビタミンCは次亜塩素酸による酸化を止めることができるので、
ひどい炎症があるときは、ビタミンCを摂ることは非常に有用
ビタミンC欠乏・・・壊血病
今は高齢者でプチ壊血病がいる・・・血管がもろい
コラーゲンは、鉄・タンパク・ビタミンCから合成される
コラーゲン合成の低下は、若い女性の場合鉄不足、
高齢者の場合ビタミンC不足の可能性が高い
肝臓での解毒にかかわるシトクロムP450の機能維持にはビタミンCが必要
ビタミンC不足だと解毒がうまくいかない
薬の血中濃度が上がり、副作用が出やすい
ビタミンCもストレスに対してもとれも重要な栄養素
ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、コルチゾールなど
高ストレスホルモン産生分泌に関与
ビタミンC不足すると、慢性疲労、高脂血症、肥満につながる
コレステロールから胆汁酸をつくるのにビタミンCが大量に必要
人間の体内のコレステロールは半分以上が胆汁酸の生成に使われる
ビタミンCが不足すると、胆汁酸がつくられなくなり、
コレステロールが余るので高コレステロール血症
ビタミンCはヒスタミンを抑える作用もある・・・アレルギー反応の予防・治療に有用
目の水晶体は透明性を保つためにビタミンCが必要・・・不足すると白内障に
神経細胞の酸化ストレスから守る・・・脳においても重要な栄養素
フリーラジカルを取り除き、免疫を強化する
大量摂取でウイルス感染症治療
その他、心臓病、肺炎、脳炎、がん、帯状疱疹、関節炎、動脈硬化、
椎間板ヘルニア、高コレステロール、糖尿病、統合失調症、
多発性硬化症、慢性疲労など
30以上の重大疾患に有効性が示されている
ビタミンCは水に溶いたらすぐ酸化してしまうので、溶いたらすぐ飲む
色つきの野菜から摂取
ブロッコリー、カリフラワー、ほうれん草、キャベツ、レモン、カブ、ネギなど
<ビタミンE> p.313
抗不妊因子として発見された
ビタミンCと連携しながらお互いをリサイクルする代表的な抗酸化剤
不足すると細胞膜が壊れやすくなる
赤血球:溶血しやすくなる
内分泌、筋肉、末梢血管系の成長に欠かせない
不飽和脂肪酸の酸化を防止
血栓を溶かしたり、側副血行路を改善したり、毛細血管を保護したりする
ビタミンE不足・・・リウマチ、間欠性跛行、肝硬変、急性腎炎、網膜炎など
<コエンザイムQ10> p.315
抗酸化作用の栄養素と結託して活性酸素から守る
ミトコンドリアの電子伝達系で重要な役割を果たす
心臓は常にエネルギーを産生しなければならない臓器なので高濃度で存在
<5-ALA(5ーアミノレブリン酸)>p.316
ミトコンドリアが作っているアミノ酸
COVID-19に対する予防効果があると話題になった
疲労感の軽減、血糖値の改善、運動機能の上昇、
睡眠の質向上、肌の水分量や弾力性アップ
ミトコンドリアで作られ、細胞質に送り出されて、2つが縮合しポルフィリンとなり、
もう一度ミトコンドリアに引き込まれヘムに変換され、
さらにシトクロムというタンパク質を構成
有機物と酸素でエネルギーと二酸化炭素を生み出す
生命の根源物質
<ビタミンD> p.318
ビタミンA同様核内受容体に直接作用して
ステロイドホルモンの様に効果を発揮する
粘膜状態を改善する
喘息やリーキーガット症候群対策、
花粉症やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、
感染症予防、がんの再発予防、不妊、自閉症、糖尿病、動脈硬化など
さまざまな症状への効果が期待されている
ビタミンDのサプリを飲んでもらうと、
数日で花粉症の鼻炎症状が止まってしまう人がいる
ビタミンDでけで止まらない人は乳酸菌製剤を組み合わすとてもよく効くことがある
ビタミンDや亜鉛はウイルスや細菌が人の粘膜細胞に入り込むのを
ブロックする抗菌・抗ウイルスペプチドを増加させる
ビタミンD欠乏とうつ病との間に関連があるとの報告が多い
脳の神経細胞にはビタミンDの受容体が多く存在する
神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の働きを改善させている
(といってもビタミンDを投与すればうつ病が治りという単純な者でもない)
ビタミンD投与で耐える力が上がる感じがするという患者さんが時々いる
日光を浴びるとビタミンDは上昇する
ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収率が低下⇒骨軟化症
<鉄が不足しがちな現代人>p.274・p.322
鉄:
体内に酸素を運ぶ、赤血球をつくる、皮膚・骨・粘膜の代謝に働く、
コラーゲンの整合性に働く
鉄がなければエネルギー合成ができず、酸素も運ばれない
鉄不足:
たちくらみ、関節痛、疲れやすい、くしゃみ・鼻水・鼻づまり、耳鳴り、
のどの違和感、頭重、髪が抜けやすい、冷え、食欲不振、
神経過敏、注意力低下・いらいら、寝起きが悪い、
あざができやすい、むくみ、肌荒れ、爪が割れやすい、便秘や下痢、吐き気、
頻脈、動悸・息切れ、夜中に目を覚ますなど
↓
立ちくらみやのどの違和感、冷え、動悸あたりはすぐに思いつきますが、
鼻炎の症状なんかはちょっと関連づけては思いつきませんね。
隠れ貧血・・・ヘモグロビンの数値が下がっていない貧血
貯蔵鉄のフェリチンやMCVなどもチェック
鉄・・・脳や運動機能の発達
神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の合成に必要
(他にビタミンB群も必要)
筋肉・・・Fe↓だととにかくだるくて元気がでない
皮膚・・・乳児湿疹、アトピーも鉄や亜鉛不足でなりやすい
毛髪・・・出産直後にお母さんの髪の毛が抜けやすい
コラーゲン・・血管・皮膚・腱など:ビタミンC・鉄・プロテイン
減少すると内出血や腱のトラブル
鉄不足と聞いてひじき・プルーンを大量に摂るのは間違い
ひじきはヒ素が含まれる
プルーンは確かに鉄が多く含まれるが、
鉄をくるんでいる物質を人間は消化できない
心療内科を受診する患者の中には(特に女性)、
鉄・タンパク質・ビタミンB群の摂取だけでも良くなる場合がある
<亜鉛> p.325
鉄に次いで体内に多い微量ミネラル
前立腺、骨、骨髄、目の脈絡膜、筋肉、皮膚に多く存在
亜鉛はDNAと結合して遺伝子調節をする数多くの酵素の活性中心となっている
新しい細胞を作るところに多く存在
味覚障害・・・味蕾のターンオーバーがうまくいかないために生じる
COVID-19による味覚・嗅覚障害
ウイルスによる直接的な神経のダメージの他に
感染症急性期には肝臓でのアミノ酸の取り込が増えるため、
アミノ酸と亜鉛が結合し肝臓に取り込まれ、血中の亜鉛が減少する
亜鉛はビタミンC・ビタミンDとならび感染予防の代表的な栄養素
亜鉛が不足するとウイルスに対応するメカニズムがうまく働かなくなる
Tリンパ球とBリンパ球の機能低下
インターフェロン産生の低下
RNAウイルスを複製する酵素を阻害
肥満、糖尿病、高齢者などCOVID-19ハイリスク者で
ビタミンDや亜鉛が不足している
亜鉛不足:
免疫力が低下し、細胞の再生が遅くなる
虫刺されのあとや傷が治りにくい、ささくれなど肌のトラブル、
アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症など
男性不妊(静止の運動性)
成長期には亜鉛の必要量が多くなる
膵臓のβ細胞にも多く存在=インスリンの合成・分泌に関与
インスリンに亜鉛が結合すると分解されにくくもなる
下垂体のLH、FSH、GH、TRHなどの分泌にも関与・・・下垂体機能低下
視野・視力障害、食欲不振、体重減少、重度の倦怠感など
<マグネシウム> p.330
エネルギー活動の場に多く存在(約60%は骨、約27%は筋肉)
多くの補酵素としてATP産生に関与
ビタミンB1と連携することが多いので、
不足するとビタミンB1不足と似た症状が現れる
細胞内のカルシウム濃度を低く保つのにマグネシウムが必要
カルシウムを摂取するときにはマグネシウムもバランス良く摂る必要がある
加工食品、アルコール、ストレスなどでマグネシウムは尿中に排泄されやすい
現代人はマグネシウム不足になりやすい
海産物、海藻をあまり食べなくなったこと
豆腐のニガリも他の凝固剤によるものが多くなった
細胞内のカルシウム濃度上昇
⇒血管や筋肉が収縮⇒こむら返り、不整脈
マグネシウムによってこれらの症状が治まる
血圧が下がり、肩こり、頭痛、片頭痛、気管支平滑筋の弛緩
疼痛の改善
その他のマグネシウム不足:
NMDA型受容体の興奮によるダメージ
脳血管れん縮マグネシウムは
NMDA型受容体とグルタミン酸の結合を制御することで興奮を抑える
⇒脳神経細胞の保護
一方、GABAを抑制
筋肉の緊張がゆるくなって、メンタルも安定、寝付きもよくなる
HPA軸の調整も行う
<セレン> p.334
セレンは土壌に多く含まれるが植物には必須ではなく、
魚介類と肉類に高濃度に含まれる
セレンの欠乏
家畜が肝壊死や心疾患を引き起こすことが知られていた
心筋症、虚血性心疾患の増加
甲状腺ホルモンの刺激に関与
感染予防の栄養素としても注目されている
セレンはグルタチオンペルオキシダーゼという抗酸化酵素の構成成分として重要
活性酸素や炎症を抑制
水銀の拮抗物質=解毒の鍵
近年、抗がん作用も注目されている
ただし毒性もあるので飲み過ぎに注意
<DHA、EPA> p.340
nー3系不飽和脂肪酸・・・細胞膜の流動性が変わる
n-3系比率が高いと細胞膜表面の受容体がよく動いて、ホルモンの効きが良くなる
インスリンの感受性も上がる
炎症を抑えるエイコサノイドという生理活性物質が作られやすくなる
赤血球の変形能にも影響=毛細血管にしっかり酸素を運ぶことができる
n-6系不飽和脂肪酸(アラキドン酸など)が多い場合、
炎症を誘発させるタイプのサイトカインが多くなる
<有害金属> p.342
有用なミネラル・・・Fe、Zn、Mgなど
有害なミネラル・・・大事なミネラルの偽物
さざまなところで取り込まれるが同じ働きをしない
Zn⇒カドミウム(Cd)、水銀(Hg)
大きな魚は生物濃縮で有害金属の含有率が高くなってしまう
ある程度は仕方がないが、そうなるとデトックスが重要
デトックスに大事な栄養素・・・アルファリポ酸、グルタチオン、ビタミンC
解毒にもエネルギーが必要
Fe、Zn、Mg、ビタミンB群、パントテン酸、カルニチン、コエンザイムQ10など
便秘もちの人は有害物質が再吸収されやすい
カンジダは有害金属をため込む性質がある
あと1回続けます。