AIによるSARS-CoV-2感染後遺症(PASC)のパターン化1

ちょっと気になる論文を見つけました。
”Machine learning identifies long COVID patterns from electronic health records(機械学習により、電子カルテからLong-COIVDパターンを特定)”
出典は、Nature Medicinevolume 29, pages47?48 (2023)

AIによってLong-COIVDになった人はどんな人かというのをパターン化した
という話で、上のリンクは下の論文の要約で、
より詳しく読んでみたい方は下記のリンクをどうぞ。
”Data-driven identification of post-acute SARS-CoV-2 infection subphenotypes(データ駆動型による急性期以降のSARS-CoV-2感染サブタイプの同定)”
Nature Medicinevolume 29, pages226?235 (2023)

AbstractをDeepL(無料版)で翻訳
”概要
SARS-CoV-2感染後遺症(PASC)とは、SARS-CoV-2急性感染後に持続、増悪、または新たに発生する幅広い症状や徴候のことを指す。ほとんどの研究では、これらの症状を個別に調査しており、併発する症状についてのエビデンスは得られていません。本研究では、全米患者中心臨床研究ネットワークの2つの大規模コホート、INSIGHTとOneFlorida+の電子健康記録データを活用した。INSIGHTから開発コホート、OneFlorida+から検証コホートを作成し、それぞれ20,881人と13,724人のSARS-CoV-2感染者を含み、SARS-CoV-2感染が証明されてから30~180日後に新たに発症した診断を調査しました。137以上の症状や状態を機械学習で解析した結果、再現性のある4つのPASCサブ表現型が同定され、心臓と腎臓(開発コホートと検証コホートの患者の33.75%と25.43%を含む)、呼吸・睡眠・不安(32.75%と38.48%)、筋骨格と神経系(23.37%と23.35%)、消化・呼吸系(10.14%と12.74%)に後遺症を支配されていることが分かりました。これらのサブ表現型は、患者の人口統計学、SARS-CoV-2感染前の基礎疾患、急性感染期の重症度などと関連していた。本研究は、PASCの異質性に関する洞察を提供し、PASC状態の管理における層別化された意思決定に役立つと思われる。”

要は、SARS-CoV-2感染後遺症(PASC)の症状や状態を
AIで分析したところ、4つのパターン(subphenotype)に分けられたという話。

SARS-CoV-2感染後遺症(PASC):
当院ブログではLong-COIVDと言っている方が多いですが、
厚労省のサイトには以下の様に書いてあります。
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A
”Q2 罹患後症状の代表的な症状にはどのような症状がありますか。
 代表的な罹患後症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などがあります。また、罹患後症状は、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状の全般をさしています。”

対象はアメリカの人々なので、
同じパターンで話ができるかどうかはわかりませんが、
これらの症状がどういう人がどう出るかというのには
パターンがあったということです。

まあ、何となく漠然とはパターンはありそうなのは感じますが、
AIだとそこらへんの分析がはっきりわかるということですね。

それではパターンを見てみましょう。

サブフェノタイプ1:心臓・腎臓型

心疾患、循環器疾患、腎疾患、貧血、体液・電解質異常などが含まれる。
男性・高齢の割合が多く、急性罹患期に重症度が高かった人が多い。
つまり、入院した人、人工呼吸器まで装着した人に多かった。
このタイプはパンデミック第1波に関する人が多かったと。
もともと他のサブタイプと比べて既往歴(つまり基礎疾患)、
特に血液、循環器、内分泌に関する疾患を持っている人が多く、
治療としても循環、内分泌、貧血の治療薬が処方されている例が多い様です。

サブフェノタイプ2:呼吸器・睡眠・不安型

4つの方の中で比率が最も多い。
女性・比較的若い年代の比率が多く、
上気道後遺症や慢性閉塞性肺疾患などの合併症が多い様です。
治療として、吸入ステロイドなど抗喘息薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬などが
処方されている割合が多かった様です。

サブフェノタイプ3:筋骨格系・神経系型


筋骨格系の疼痛、頭痛、睡眠障害と言った症状jが主体のタイプ。
やや女性に多く、COVID-19に罹患する前から
医療機関をよく受診している様なタイプに多いそうです。
関節リウマチや喘息などの自己免疫・アレルギー疾患、
筋骨格系の病気、睡眠障害を含む神経系の異常がの合併が多いそうです。
治療としては鎮痛剤の処方の割合が多かった様です。

サブフェノタイプ4:消化器・呼吸器型

女性にやや多く、救急搬送率、人工呼吸器使用や重症での入院率は低い。
つまり重症の人は少なかった。
基礎疾患との関連は比較的少ない様ですが、
吐血、胃・十二指腸疾患、消化器系悪性新生物疾患の有病率はやや高い。
消化器系の薬の処方が多かった様です。

考察の所に書てありますが、
サブフェノタイプ1は、客観的な診断基準に基づいたものですが、
他のサブフェノタイプは症状主体のより主観的な診断が多く含まれる
(サブフェノタイプ4の食道・胃腸障害なども機能的障害を含む可能性あり)
サブフェノタイプ1と他は分けて考えるべきかもしれないとのことです。

これはアメリカでの観察結果で、
人種の構成も違いますし、医療制度も違うので、
そのまま日本の後遺症を呈されている人のタイプ分けに
使えるわけではありません。
また、観察期間が第1波の、まだ医療的にどう対処すればいいかわからない
時期からの分は含まれていますので、
時間経過でその割合は変わってきているかもしれません。

次回に続く