Long-COVIDに一時的だとしてもBCAAが効く場合があるという話から、
前回、BCAAについて少し勉強してみました。
Long-COIVDといっても原因はいくつもがあると思われますが、
その一つの可能性として、
どうもミトコンドリアが重要な役割を果たしている様な気がしてきました。
そんなことを考えているからなのか、ネットをさまよっていると
自然に”Mitochondria”の文字が目に入って来るようになりました。
こんな論文がありました。
”Mitochondrial signal transduction”
出典は、Cell Metabolism VOLUME 34, ISSUE 11, P1620-1653, NOVEMBER 01, 2022
オープンアクセスです。
興味を持たれた方は原文をご覧ください。
ただ、読み終えて思ったのは、このミトコンドリアの知識が、
特別すぐにはLong-COIVDの明日への治療にはつながらないなぁ、
という感じでした。(Long-COIVDを検索してでたどり着いた方、ごめんなさい)
(もちろん、長期的な観点から言うと、将来の医療につながるのだと思いますが)
ミトコンドリアというと、”エネルギーを作るところ”、
実は僕のミトコンドリア像はこれしかありません。
この概念は35年前からほとんどアップデートされていません。
35年どころか、高校で習った生物からもさほど変わっていないような・・・
まあ、しいて言えばミトコンドリアは宿主と別の染色体をもっていて、
独自に分裂・増殖していて、その染色体は母系遺伝、
つまり母親からしか伝わらないということ。
そして、どうもこのミトコンドリアは、
生命が出来上がって間もないくらい太古の時代に、
ある細菌が別の細菌を取り込んで共生することから始まったのではないか。
このくらいのことしか知りません。
この論文の最初に次のような図が出てきます。
細胞に関する研究論文の報告数ですが、
ミトコンドリアに関する論文が1990年に入るころから急に増加してきて
現在、細胞内の小器官野中で
もっとも注目、研究されているのがミトコンドリアなんですね。
この論文では、ミトコンドリアをエネルギー生成工場のようなものではなく、
情報(シグナル)を取り入れ、統括し、新たな情報として出力する、
いわばコンピューターでいうICチップのような位置づけ、
すなわちミトコンドリア情報処理システム
(mitochondrial information processing system;MIPS)
として考えることを提唱しています。
つまり、
INPUTS(入力)⇒Sensing(感知)⇒Integration(統合)⇒Signaling(シグナル伝達)⇒OUTPUTS(出力)
という課程を行う場というわけです。
本文から抜粋(DeepL(無料版)で訳)
”MIPSを介した情報の流れは、入力された信号がミトコンドリア内外の分子受容体や生体構造で感知され(感知)、融合・分裂過程などの(非)物理的相互作用により分子信号や膜電位などの不安定状態を相互に交換し(統合)、同時に代謝物、補酵素、タンパク質、核酸、熱などの情報伝達因子が放出されてミトコンドリア膜を越えて情報が伝達されます(情報伝達)、という順序で進んでいます。”
以下、一つずつ見ていきましょう。
<ミトコンドリアセンシンシング(感知)>
ミトコンドリアは、ホルモン、代謝、イオン、遺伝子などの
入力を感知する能力を持つ、驚くほど多様な受容体と分子的特徴を備えている。
センシングがなされる方法は大きく4つある様です。
A:リガンド活性化受容体を介した方法
・・・グルココルチコイド、エストロゲン、アンドロゲンなど
本来、核内のDNAに働くレセプターがミトコンドリア内のDNA(mtDNA)にも働く。
B:Gタンパク質共役型受容体(GPCRs)を介した方法
・・・アンギオテンシン、カンナビノイド、メラトニン、プリン受容体など
ミトコンドリア膜内に埋め込まれたGPCRsを介した反応
C:代謝物シグナル伝達を介した方法
・・・ミトコンドリアの膜に組み込まれたキャリアやトランスポーターを通して
代謝物レベルや利用可能性を感知して応答する。
特に、Caイオンや、マグネシウム(Mn)、無機リン酸(Pi)、塩化物(Cl)、鉄(Fe)、
そしておそらくリチウム(Li)などの様々な原子やイオンの周囲の濃度を
感知して反応するそうです。
D:内在性ミトコンドリアDNAの変異を介した方法
細胞毒の様なものが細胞内に侵入してきた場合、
・・・核のDNAよりもミトコンドリアDNAが優先的に影響を受ける場合がある。
細胞が修復不能となった場合、アポトーシスという、
他の細胞への影響を最小限にとどめようとする細胞死プログラムが稼働しますが、
その命令をミトコンドリアが下している場合があるのだと思います。
こうしてミトコンドリアの情報システム(MIPS)は、
このような幅広い入力に対する感度により、
各オルガネラを取り巻く局所的な生化学的条件と、
他の細胞や他の臓器など、生体の解剖学的に離れた場所で作られる
全身性の神経内分泌シグナルの両方を感じ取っているそうです。
次回に続く