Let’s Study 自然免疫! 3

それでは自然免疫について見ていきましょう。
ここでは主にリンパ球系以外の細胞が
どのようにして細胞や宿主を守っているのかを中心にみていきます。

我々の身体は全体としても健常な状態を維持しようとしていますが、
細胞一つ一つをとっても、
それぞれができるだけ健常な状態を維持しようとしています。

我々は絶えずいろいろな微生物と直面しています。
食事をとるときに完全無菌なものを食べているわけではありません。
呼吸をしていてもウイルスやカビなどが
まったく存在しない空気を吸っているわけではありません。
身体の中には絶えずある程度の病原体が侵入してきています。

また、そうして侵入してきた病原体の多くは死んでしまいますが、
死んだ後にはRNAやDNAの断片が漂っています。

さらには、PM2.5やアスベスト、花粉などが気道から入り込み、
あるいはシリカやカーボンナノチューブ、
化粧品のアジュバントといったナノ粒子は皮膚からも侵入してきます。

こうした非生物も細胞にストレスを与え、時には細胞障害をおこし、
細胞が死んでしまいます。
すると、自分の細胞の遺残であったとしても、
そこにはDNAなどが含まれていることになります。

さらに、ウイルス等微生物が細胞に感染すると、
細胞内にまで自己とは異なるDNAやRNAが侵入してきます。

こうしたものは異所性の核酸(RNA・DNA)と呼ばれますが、
最終的にはいろいろなメカニズムで分解されていきます。
(分解しきれない場合は細胞死の道を歩みます)

こうした異所性核酸であるRNAとDNAそれぞれに対して
別々の核酸センサーが働いて、
RNAやDNAが侵入してきたら、その構造を認識して反応し、
分解酵素(RNaseやDNase)を活性化させたり、
インターフェロン等の産生を促す経路を活性化させます。

このセンサーの総称を
パターン認識受容体(Pattern-recognition receptors,PRRs)
と呼ぶそうです。

たとえば、異所性のRNAに対するセンサーとしては
外からやってきた二本鎖RNAの場合、
エンドソームと呼ばれる取り込み構造の内膜に局在する
Toll-like receptor 3(TLR3)と呼ばれるセンサーが反応します。
一本鎖RNAの場合、TLR7およびTLR8というセンサーが、
反応して抗ウイルス作用が開始されます。

これに対して直接細胞質内に侵入してきた二本鎖RNAに対しては、
melanoma differetiation-associated gene 5(MAD5)や
retinoic acid-induceible gene-1(RIG-1)
と呼ばれるセンサーが働くそうです。

RNAの分解には、OAS1/RNase Lと呼ばれる分解システムが働きます。
OAS1/RNase L分解システムは一本鎖RNAを標的として、
病原体の核酸を分解することで病原体の複製を抑制しますが、
さらに自己由来のRNAも切断することができ、
切断された産物はこれまたRIG-1やMDA5に認識され、
I型インターフェロンの産生などの免疫応答につながっていくそうです。

その他にも、
Regnase-1やzinc-finger antiviral protein(ZAP)、N4BP1と呼ばれる
RNAに直接結合するタンパク質なども異所性のRNAの分解にかかわっています。

このRNA結合タンパクは標的となるウイルスが
それぞれ少しずつ異なる様で、
Regnase-1はHIV-1や日本脳炎ウイルス、デングウイルス、HCVなど
比較的多岐にわたってRNAウイルスに直接結合し不活化します。

一方ZAPは直接RNAを分解はできないそうですが、
RNAに結合してエクソソームと呼ばれる分解工場を引き寄せて
最終的に分解させるようです。
ZAPはHIV-1やSARS-Cov2などを標的とする様です。

RNAだけでもこんなにたくさんの反応経路があるんですね。