前回に続き、nature電子版の記事をもとに
Long-COVIDについて書いています。
4つの疑問のつづき。
3)Long-COVIDと他の感染後症候群との関係は?
一部の科学者は、Long-COVIDに驚いていません。
ハーバード大学医学部の内科医であるアンソニー・コマロフ氏は、
感染後に残る病気は科学文献で100年間報告されている
と述べています。
彼はサンタモニカの組織であるMEActionが主催したウェビナーで、
慢性疲労症候群(ME / CFS)としても知られる筋痛性脳炎の認識を
高めるために活動していることを指摘しました。
この病気を持つ人々は、頭痛などの他の症状を経験するとともに、
軽度の活動の後でも疲れ果てます。
ME / CFSは、明確な生物学的根拠がなかったため、
一部の医療専門家によって長い間却下されてきましたが、
多くの場合、ウイルス感染後だと言います。
特定のウイルス感染症または細菌感染症と診断された
253 人を対象とした 1 つの研究では、6 か月後、
12% が「無力化する疲労、筋骨格系の痛み、神経認知障害、
気分障害」などの持続的な症状を報告したことがわかりました。
そのパーセンテージは、ONS によって英国で観察された
Long- COVID の有病率と著しく類似しています。
ただ、あまり一つの範疇に入れない様にすることも
大切だとも書いてあります。
4)Long-COVIDの症状を有する患者さんを助けるにはどのようにしたらよいか?
一部の国では、Long-COVIDに対する診療所を開設しています。
ドイツでは、MEDIANという会社が、
いくつかの民間リハビリクリニックでLong-COVIDを持つ人々の
受け入れを開始しました。
英国では、国民保健サービスが69の診療所のネットワークに
1,000万ポンドを提供しました。
これらの診療所は、この状態の人々を評価し、
支援し始めているそうです。
Long-COVIDの人は、多くの場合一度に数か月間休む必要があり、
その間サポートが必要になるため、
課題の多くは社会的および政治的なものになります。
まずは「障害として認識される必要があります」とのこと。
薬に関しては、一握りがテストされているそうです。
ボストンにあるバイオテクノロジー企業PureTechHealthは、
12月に開発した抗線維化および抗炎症剤である
デュピルフェニドンの臨床試験を開始すると発表しました。
↑
デュピルフェニドンって何?と調べてみますと、
特発性肺線維症の治療薬の様です。
また、ケンブリッジ大学のい集中治療部門では、
退院後に、血栓のリスクを減らす可能性のある
抗凝固剤アピキサバンか、
アトルバスタチン(高コレステロール血症の治療薬みたいですが、
ここでは抗炎症剤と書いてますね)のどちらかを服用することで
Long-COVIDを予防する研究が始まっている様です。
(↑念のためですが、このあたりの薬剤は僕は処方経験もなく、
さらに、まだ結果ででていないこともあり、
当院ではこうした薬剤での治療や予防はできません。
ご了承下さい。)
もう一つ、Long-COVIDに対するワクチンの効果についても
この記事では触れられています。
まだ査読されていない論文の様ですが、
800人以上のLong-COVIDの患者さんを対象とする英国の調査では、
57%が症状の全体的な改善、24%が変化なし、
19%がワクチンの初回投与後に悪化したと報告されています。
イェール大学の免疫生物学者である岩崎明子先生の話では、
ワクチンによって、体内に残っているウイルスやウイルスの残骸が
排除されたり、あるいは免疫系のバランスを取り直すことによって
症状を改善する可能性があるのではと仮定されているそうです。
↑この、岩崎明子先生、名前に覚えがあるなと思ったら、
昨年6月、日経メディカルの記事経由で記事にしましたが、
(新型コロナ感染症とインターフェロン)
その時に読んだ自然免疫でのCOVID-19に対する
インターフェロンの働きについての論文:
”Type I and Type III Interferons ? Induction, Signaling, Evasion, and Application to Combat COVID-19”
の執筆者の一人だったんですね。
ワクチンでLong-COVIDの57%が改善する様ですが、
19%では悪化したとのこと、
もうしばらく経過をみていく必要がありそうですね。