本の紹介:耳鳴りの9割は治る

耳鳴りは9割治る

耳鳴りの項目の参考文献にもあげています。

『耳鳴りの9割は治る(脳の興奮をおさえれば音はやむ)』
新田清一(著),小川 郁(監修) マキノ出版

ちょっと題名がセンセーショナルですね。
センセーショナルなだけあって、結構話題になっていたようですが、
それだけにAmazonの書評をみると最近のものは辛辣なものが多いですね。

確かに「治る」という表現は、仕方がないとはいえ、
ちょっと誤解を生じやすいかもしれません。
もちろん、実際に完全に治ってしまう患者さんもいらっしゃると思いますが、
実際のゴールは、
「耳鳴りがしていても気にならない」
というところではないかと思います。

ですので、あまり過度の期待をして読むと、
失望される方もいらっしゃるかもしれません。
特に耳鳴りを敵視し、どうしても完全に消えなければいけない
と思い込んでいる方には面白くないかもしれません。

しかし、そうしたことを差し引いても、
この本は最近の耳鳴りに関する本のなかでは正統な理論に基づいた
きちんとした本だと思います。

耳鳴りの患者さんは、無難聴性耳鳴を除けば、
聴力が低下したことによって耳鳴りがしており、
聴力が低下した結果、
少しでも聴こうとして脳の感度が上がる(脳が興奮する)ため、
耳鳴りが本来の大きさより大きく感じるようになっています。

ですので、補聴器でインプットを大きくしてやれば、
脳の感度が下がって、結果として耳鳴りが小さくなるというわけです。

この本を読んで以来、難聴を伴った耳鳴りの患者さんには、
この本のことをお話して、できるだけ補聴器をおすすめしています。

ただ、実際には補聴器をすることだけでなく、
そのあとのフォローと音量等の調整が大切なんですね。

この本を読んだ後に、著者の新田先生の講演を受講する機会がありました。
その時の先生のお話では、補聴器試用を開始したら、
1週間ごとに病院を受診してもらい、
約3ヶ月かけて少しずつ出力を上げていくそうです。

これをするのは、十分な時間と優秀な言語聴覚士が必要です。
実際にはなかなかそこまではできません。

また、新田先生のお話で印象的だったのは、
まずは、補聴器を使ってみようという強い意志が必要だとのことです。
そのため、病院側から強く補聴器をおすすめすることはないそうです。

ですので、「9割治る」といっても、
実際には、やってやるという強い意思をもった人がきちんとやれば、
耳鳴りが気にならなくなるということです。

ただ、すべての患者さんにインフォメーションしておくことは大切で、
その時には乗り気でなかった方も、ふと補聴器のことを思い出して、
しばらくした後に補聴器治療を希望されて受診される方も結構あるそうです。

それにしても、補聴器をおすすめしても嫌がる患者さんの多いこと。
中々、「補聴器=年寄り臭い」というイメージを払拭できません。

それと、補聴器がもう少し安ければもう少し普及すると思うのですが。

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