テレビでも相変わらずCOVID-19の話で心配を煽っています。
心配しすぎてもいけませんが侮ってもいけません。
テレビの情報番組はあまり見ない様にしていますが、
ネットでは”COVID-19”という文字が目に入ると
ついつい見てしまいます。
というわけで、今回もちょっとめについた記事を紹介。
”Immune determinants of COVID-19 disease presentation and severity”
(COVID-19疾患の症状と重症度の免疫決定因子)
出典はNature Medicine volume 27,pages28-33(2021)
COVID-19は軽症~重症まで振れ幅の広い病気ですが、
一般的に、男性、高齢者、肥満、高血圧性疾患、慢性閉塞性肺疾患、
心血管疾患などの基礎疾患は重症化しやすい因子の様です。
また、喫煙はさらに別の危険因子です。
タバコの煙はアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現を誘導し、
SARS-CoV-2が細胞に侵入することを可能にし、
肺機能全体への悪影響を超えて
ウイルスの侵入に影響を与える可能性があるそうです。
ただ、今回の視点は別のところにあります。
こうした急性期のCOVID-19の重症度とは別の問題点が
1年ちょっと経過してきてわかってきました。
それは、COVID-19の初期症状が重症でなかったにもかかわらず、
初期感染後何ヶ月もの間、
さまざまな衰弱性の症状に苦しむ可能性があるとのこと。
この状態は、”Long-COVID”と呼ばれています。
(テレビでも最近は話題になっていますね)
正確な定義はない様ですが、
通常、症状が2か月を超える場合にLong COVIDと見なす様です。
急性のCOVID-19とは異なり女性に多い様です。
症状としては、持続性倦怠感、筋肉痛、
体位性頻脈症候群として現れる自律神経調節不全、
異常な体温調節、腸障害、皮膚症状など様々です。
こうした症状は、エボラ出血熱や
(あまり聞き慣れないですが)チクングニア熱と呼ばれる
ウイルス性疾患の後遺症と類似しているそうです。
また、自律神経系の調節不全は
筋痛性脳脊髄炎とも似ているそうです。
この記事ではもう一つ、
急性期より少し遅れて生じる合併症、
多臓器炎症性症候群についても書かれています。
SARS-Cov-2感染後2~6週後に発生する可能性があり、
最初は小児で報告され、
Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C)
と呼ばれており、その後若年者でも(MIS-A)報告されていて、
その病態は微小血管障害で川崎病に似た過炎症症候群なんだそうです。
この記事では最後に、
COVID-19の高リスクと低リスクに関する
免疫学的な差異について言及しています。
性差:
ウイルスに対して自然免疫で応じる場合、
I型インターフェロン(INF-I)で応答しますが、
その応答は女性の方が強いそうです。
これは遺伝的な違いよるそうで、
ウイルスに対する一般的なセンサーとして、
TLR7というものがあって、これはX染色体上にあるらしく、
それが性差として生じている可能性があるそうです。
また、ウイルスをやっつけるINF-Iに対して、
これを中和してしまう自己抗体が出来てしまう場合があって、
それは何故かは不明ですが男性の方が多いそうです。
なおMIS-Cには男女差はなく、
上に書きましたがLong-COVIDは女性に多い様です。
年齢差:
新生児や幼児は一般的にはINF-Iの産生は少ないらしく、
本来幼児は感受性が高いはずなんだそうです。
実際インフルエンザなどは幼児も重症化しやすい様に思います。
COVID-19で小児が重症化しにくいのには、
若者と高齢者の間の免疫システム状態の構成的な違いが
ある可能性があるとのこと。
幼児ではリンパ球の中のヘルパー2T細胞(TH2)が、
ヘルパー1T細胞(TH1)よりも多いのに対して、
高齢者や肥満ではこの比率が逆転し
TH1>TH2なんだそうです。
NLR:
COVID-19の重症度は、白血球中の成分:
好中球とリンパ球の比率(NLR比)とも相関しているそうです。
高NLRとは血中の好中球の比率が高く、
低NLRとはリンパ球の比率が高いことを意味します。
NLR比は特にメタボリックシンドロームや2型糖尿病、
加齢および肥満の程度と正の相関があるとのこと。
NLR比は、低悪性度炎症、「炎症による「老化(inflammaging)」、
および肥満と関連があり、
COVID-19の予後不良因子なんだそうです。
やせなきゃね。