昨日に引き続き、前々回紹介した、
”Combining Antivirals and Immunomodulators to Fight COVID-19”
という論文の続きです。
この論文では、後半でインターフェロン(IFN)α/β応答による
初期の効率的な抗ウイルス治療が、
サイトカインストームを最小限に抑えるための
確実な方法であると主張しています。
このことをグラフで示したのがこれ。
上の段のグラフは、ウイルスの量(紫)が少なく、
INFα/βがしっかりと働き(赤)、炎症が収束することで、
炎症性のサイトカインの分泌もそれほど増加せず(緑)、
おさまっていくことを示します。
下の段は、ウイルスの量が多いか、
INFα/βがあまりでなかった場合で、ウイルスもあまり減らず、
炎症性サイトカインが大量に分泌されるのを示しています。
(インターフェロン自体は長く続くと
色々なサイトカイン産生を増加させます)
↑
当院のブログをずっと読んでくださっている方、
この図、どこかで似たようなものを見た覚えがありませんか?
6月に自然免疫の話をしました。
>新型コロナ感染症とインターフェロン
ここで紹介した論文:
Type I and Type III Interferons ? Induction, Signaling, Evasion, and Application to Combat COVID-19
(I型・III型インターフェロン:誘導、シグナル伝達、回避とCOVID-19の治療戦略)
この中に同じような図が出てきます。
つまり、インターフェロンが感染の初期に十分量あれば、
自然免疫でウイルスは増殖せずに駆逐されるはずです。
そして、高齢者ほどインターフェロンは分泌されにくくなっており、
それがCOVID-19を重症化させる一つの要因とも考えられます。
しかし、前々回に紹介した論文では、
INFβ1aは効かなかったという報告でした。
これはどうしてでしょうか?
ここで、最初の論文、
”Repurposed Antiviral Drugs for Covid-19 ? Interim WHO Solidarity Trial Results”
の、研究デザインをもう一度よく読んでみましょう。
INFβ1aは、(投与群と非投与群に)振り分けられた日と
それから3日目、6日目に皮下注で投与されています。
これでは、発症後何日目に投与されたかがわかりませんが、
おそらく診断がついてからでしょうから、
ごく初期に投与した様には思われません。
さらに、3日目、6日目の投与は、
すでにある程度時間がたった時期になると思います。
専門家ではないので、間違っているかもしれませんが、
インターフェロンは、ウイルスに暴露されたばかりの、
まだ発症する前に投与するのが
最も効果的なのではないでしょうか?
つまり、濃厚接触者に使う方がいいのではないかと。
ただ、それには薬剤に重大な副作用がないことが前提になります。
発症するかしないか分からない時点で投与するのは
倫理的な問題があるかもしれません。
と、ここまで書き終えたところで、
SARS-CoV-2とインターフェロンの予防効果に関する論文がないかなと
インターネットで探していたところ、
SARS-CoV-2が持つタンパク質のひとつORF3bに、
強いインターフェロン抑制活性効果があることが報告されていますね。
>インターフェロン産生を抑制するSARS-CoV-2タンパク質の発見
>SARS-CoV-2 ORF3b Is a Potent Interferon Antagonist Whose Activity Is Increased by a Naturally Occurring Elongation Variant
中々一筋縄では行かないようですね。