腸内細菌と睡眠の関係 

前回、「最近ちょっとオーバーフローエラー気味」と書きました。

現在僕が特に興味を持っているのが、
腸内微生物叢(ま、腸内でなくてもいいのですが)、
漢方、睡眠、自律神経、脳・・・などなど。
あ、それとCOVID-19についてもやっぱり気になりますね。
これらが耳鼻咽喉科領域とどう絡んでくるかですね。

というわけで、
今回は腸内細菌と睡眠の両方にからんだ話題です。

今回もまたまた、”日本の研究.com”の記事からです。
腸内細菌がいなくなると睡眠パターンが乱れる
著者は筑波大学と慶応義塾大学の先生。

2020年11月11日付けのScientificReportsという雑誌に
掲載されたそうです。
Gut microbiota depletion by chronic antibiotic treatment alters the sleep/wake architecture and sleep EEG power spectra in mice
(慢性的抗生物質投与による腸内細菌叢枯渇はマウスの睡眠覚醒構造と睡眠脳波パワースペクトルを変化させる)

抗生物質を投与して腸内細菌を除去したマウスで、
腸管内の代謝物質がどう変化するのか、
睡眠のパターンがどう変化するのかを調べたそうです。

その結果、腸内細菌叢除去マウスではビタミンB6が有意に減少し、
精神を安定させる働きのある神経伝達物質のセロトニンが枯渇し、
一方で、抑制性神経伝達物質であるグリシンとγアミノ酪酸(GABA)
は有意な増加が認められたのだそうです。

そして、睡眠のパターンは、
本来、睡眠を取る時間帯に活動が増え、
逆に活動が盛んな時間帯に睡眠をとっており、
昼夜のメリハリが弱まっていることが明らかになりました。
さらに、レム睡眠に特徴的な脳波成分である
シータ波スペクトルパワー密度が、
腸内細菌叢除去マウスにおいて弱まっていたそうです。

つまり、腸内細菌がいなくなると、
精神を安定させるセロトニンが減って、
昼夜の睡眠のメリハリが弱まり、睡眠の質も下がる
ということなのです。

まあ、腸内のセロトニンは直接脳に働くわけではなく、
腸内の神経系に働くのですが、
脳腸相関で腸が不穏になると脳にもその影響がでる
ということは十分考えられます。

もし可能なら、腸内細菌を除去したあとで、
1種類ずつ細菌を腸内に戻して、
代謝物質や眠りのパターンがどうなるのかを見てみるのも
面白いかもしれませんね。
・・・というか、最近は発現する遺伝子を調べることができるそうで、
そんな手間ヒマかけずとも、一気に遺伝子解析すればいいのかも。

僕はもともと夜中に起きてモソモソとパソコンしたり、
本を読んだり結構する方なんです。
これって、本当は健全な睡眠を得るには不適切で、
患者さんにはダメですよと言うのですが、
自分のことになると中々やめることができません。

でも、これって、ひょっとしたら、
睡眠に必要な細菌が腸内に少ないのかも。
一度調べてみるといいかもしれませんね。

そのうちに睡眠薬の代わりに、
「○○菌配合薬」なんてものが出てくるかもしれません。
・・・って、サプリ業界ならすでにあるのかな?