この本のp.190あたりにちょっと面白いことが書いてありました。
著者の一人、北山修氏は、精神科医であると同時に、
歌手や作詞家、あるいはそれにとどまらず幅広い活動をされています。
こうした活動で、自分を第一者、直接の受け手を第二者、
そして、その周囲の人々を第三者ととらえていて、
そこで大切にしているのが、
第二者の感動というものが自分にとって重要だ
と考えられています。
たとえば、演劇のようなもので言えば、
舞台に上がる人にとって、自分の知っている「あなた」が第二者で、
その他の「みんな」が第三者。
この第二者を喜ばせるような作品を作るのが大切で、
「みんな」に公開するとしても、
「あなた」が喜んでくれることを意識してものを作っている、
とおっしゃいます。
”私は誰のために歌ってるのか、
誰のために作詞をするのかというと、
明らかに私は第三者よりも第二者に向けてなのです。”
と書かれています。
さらには、”第三者に評価されることを意識するなら、
なんだか感動が薄れていくのです。”
とも書かれています。
これは精神療法にも通じるそうです。
”聞き手としての重要性には、第一者が感じていることを
第二者として理解するというかたちで第二者が参加し、
そしてやがてこれが第三者の評価に繋がってゆく
という順番がある。”と。
目の前の患者さんをしっかり捉えることがまず大切ということですね。
そういえば僕が医院を開業する時に大先輩の開業医が、
”目の前の患者さんをしっかり診ていたらなんとかなります。
頑張ってください。”
というメッセージを電報で下さったのを思い出しました。
自分の都合を優先するのは良くないのはもちろんですが、
100%患者さんの言うことをきくのも違います。
簡単そうで当たり前のことの様で、
中々難しい、奥の深い言葉です。
いろいろと考えながら解決法を探していくことで、
最終的には他の患者さんにも有効な治療法が
生まれてくることがあるかもしれません。
それが結局、第二者を大切にすることが、
第三者へのメッセージになるということかもしれません。