本:良い加減に生きる 歌いながら考える深層心理1

もう数ヶ月も前のことなんですが、
夕食の時に嫁さんがDVDのスイッチを入れました。
「あなたが喜ぶと思って録画しておいてあげたわ」
と言って見せてくれたのが、
”よみがえれ!!あなたの青春フォーク&ポップス!パート2”

自分がまだ中学生とか高校生の頃、
両親が「懐メロ ああ青春!」みたいな感じの
昭和歌謡の様なテレビ番組を見ていたら、
「あ~、やだやだ!」
そう思っていたのに、
今や自分がそんな歳になってきたことに愕然としてしまいます。

もう、題名に「青春」という文言が入るだけでゾッとします。
それなのに、見てしまいます。
あ~、やだやだ!
そう思いながらも、知っている歌が流れると
思わず口ずさんでいる自分がいます。

ま、それはともかく、今回のゲストの面々は、
小室等さん、鈴木康博さん、庄野真代さん、南佳孝さん、
杉田二郎さん、他多数。

杉田二郎さんが歌われた曲が、
北山修作詞、杉田二郎作曲の『戦争を知らない子供たち』。

ということで、ようやくタイトルの本のきたやまおさむさんに
つながりました。

『良い加減に生きる 歌いながら考える深層心理』 きたやまおさむ・前田重治,講談社現代新書

きたやまおさむ(北山修)さんは、
「ザ・フォーク・クルセダーズ(フォークル)」のメンバー。
『返ってきたヨッパライ』を初めて聞いた時は衝撃的でした。

と書きましたが、フォークルは僕にとっては、わずかに上の世代。
北山修さんが、作詞家として有名だとは実はよく知りませんでした。
『あの素晴らしい愛をもう一度』、『白い色は恋人の色』、
『花嫁』、『風』、『さらば恋人』なども、
きたやまおさむさんが作詞されたものなんですね。

このきたやまおさむ氏ですが、もう一つの顔が医師、
それも精神分析で有名な先生で九大の名誉教授だったとは、
これも結構後になるまで僕は知りませんでした。

今回のこの本では、北山氏の前任で、やはり九大の
名誉教授である前田重治先生と、北山先生が、
作詞家きたやまおさむが手がけた歌詞の中から20曲について、
往復書簡形式で感想と解説を加え、さらに第2部、第3部では
人生の考え方などを深めていきます。

たとえば、『あの素晴らしい愛をもう一度』では、
「あの日同じ花を見て・・・心と心が今はもう通わない」
という歌詞。
共に花や夕焼けを見た人間関係が終わってしまった
「対象喪失」の歌だと前田氏は言います。

それに対し、作詞をされた北山氏は、
そうした対象の喪失とともに、日本人が好んだ
「同じものを肩を並べて見る」という行為、それ自体も、
高度成長期、たとえばテレビが家族に1台だったものが、
そのうちに一人一台持つようになって、
それぞれが違う方向を向き始める、
ちょうどそうした移行期を証言する詩でもあったと言います。

当時何気なく聞いていた歌ですが、
解説を聞くと、へ~、ほぉ~の連発。
そんな深い意味があったのか!と、ビックリ。

この本の前半では、きたやまおさむ氏が手がけた作詞・・・
実に400もあるそうですが、
その中から20作品をピックアップして考察してあります。
中には心の奥底をのぞき込むようなドキッとする歌詞も。
一度ゆっくり聴いてみようと思います。

後半については次回。