移民による腸内細菌の変化

何か耳鼻咽喉科医の書くブログとは思えませんね(笑)。

Prevotella菌やマイクロバイオータ(腸内微生物叢)について
調べていたら気になる記事が目にとまりました。

>腸内細菌叢の”西欧化”で肥満リスク上昇
Medical Tribuneの記事です。

この記事の元になった論文がこれ。
US Immigration Westernizes the Human Gut Microbiome

”欧米以外の国から米国に移住した人では、腸内細菌叢の多様性や機能が変化して西欧化することが、東南アジアからの移民を対象とした研究で示された。”

発展途上国の住民は、米国の住民よりも
腸内細菌叢の構成が多様で、腸管内に有益な微生物が
多く存在することがわかっているそうです。

ところが、東南アジアからアメリカに移民した民族で、
腸内微生物叢を調べたところ、
移住後最初の6~9カ月の間に、
食物繊維の分解作用が強いPrevotella属の細菌が優位な状態から、
Bacteroides属の細菌が優位な状態に変わり始め、
このような変化は米国に移住後10年間続いたのだそうです。
また、世代間でも移民第一世代と第二世代でも
第二世代の方が欧米人に近い腸内微生物叢だった。

Prevotella属は、一般的に
食物繊維を多く摂取する東南アジア人の腸に、
Bacteroides属は肉類を多く摂取する欧米人の腸に
多く生息するそうなのですが、移民してきて半年で、
そしてそのまま住み続けているとますます
腸内微生物叢も西欧化してくるというわけです。

まあ、普通に考えれば想定どおりの結果かもしれません。
その原因は、まず考えられるのは食生活ですが、
その他にも、ストレス、運動、地方自治体の飲料水、
抗生物質や駆虫薬による治療への曝露などが考えられるそうです。

元の論文には、腸内微生物叢と肥満の関係までは
論じていませんが、2000年、2004年の論文に、
出生国に居住し続けている同じ民族の個人と比較して、
移民の間で肥満やその他の慢性疾患のリスクが高まり、
一部のグループでは最大4倍の肥満の増加が見られる
との報告があり、腸内微生物叢の変化も一つの
可能性として考えられるのだそうです。