新型コロナ感染症とプレボテラ菌?2

註(2020.6.16):
話として面白かったので取り扱っていますが、
あきらかな因果関係は証明されていません。
>Prevotella菌悪玉説の否定サイト
の記事ものちほどお読み下さい。
註追加終わり

さて、遠回りをしてしまいましたが、
AgoraVoxというサイトの科学の先生の投稿に戻ります。
Covid-19 : Et si on ne cherchait pas a tuer le virus…

筆者は、COVID-19とPrevotellaの関連を考え、
最終的に治療についても言及されています。

ここではPrevotellaに効果的な抗生剤の組み合わせが提唱されていて、
”スピラマイシン-メトロニダゾールまたは不耐性のアモキシシリン-クラブラン酸”
とあります。ただ、筆者自身もそのあとに、
「こうした有益な薬剤はマイクロバイオームへの影響が非常に重要であり、他の障害や他の潜在的に深刻な日和見病理を生成する可能性があります。」
と書いています。

メトロニダゾールは結構古い薬で、
僕が研修医の頃、上顎癌の患者さんで上顎全摘手術をした
患者さんとか、頭頸部がんで再発してしまい、
患部が壊死をおこして感染した患者さんなどで、
使用した覚えがあります。

教科書的には、偽膜性腸炎における、
嫌気性菌Clostridioides difficileの治療薬として有名ですが、
最近ではヘリコバクター・ピロリ菌の2次除菌療法における薬剤
として用いられている様です。

では、こうした薬剤が日常用いられている薬だから、
新型コロナウイルス感染症だとわかったら
どんどん使うべきか、と言えばそれは「ちょっと待って!」
となるでしょう。

先にも筆者の言葉を書きましたが、
抗生剤の使用によって腸内微生物叢が変化するので、
逆に他の日和見感染を引き起こすリスクも
考えておかなければいけません。

メトロニダゾールは偽膜性腸炎の治療薬ではありますが、
メトロニダゾール自身が逆に出血性大腸炎を引きおこすという報告もあり、
他にも中枢神経障害等の副作用に注意が必要です。

どんな薬でもクスリはリスク。
有効性の期待が危険性を上回ると思われる場合にのみ
使用するものであります。

新型コロナウイルス感染症は確かに死に至る場合もあるので、
いざとなれば使いたい気持ちはわかります。ただ・・・
死に至るのは稀であることと、
重症化してしまってから、つまりサイトカインストームが
生じてしまってからではあまり効果は期待できないだろう
と思われます。

今まで読んできた論文から考察すると、
もし、COVID-19の重症化とプレボテラ菌が
仮に因果関係があったとしても、
上記の薬剤はPrevotella菌が増殖する前に使用するのが
効果的と考えられ、重症化する前に投与されるべき薬剤
ではないかと思われます。
さらに、投与するとなるとその薬剤の副作用のリスクも
負うことになります。

多くは自然回復する可能性がある病気に、
重症化の予防として危険を冒すメリットがあるか
そこをよく考える必要があると考えます。

また、抗生物質には必ず耐性菌の問題がでてきます。
大量に使われるようになると耐性菌の出現する確率も
増えてきますので、将来使うべき患者さんに使える薬剤がない
という状態は避けなければなりません。

まあ、まずは有効性が本当にあるのかないのか、
そこを確認するのが第一ですね。

もし、筆者の提唱する仮説:
”SARS-Cov-2がPrevotella菌の毒性を増幅させ
COVID-19を重症化させる”
が正しければ、初期に効果のある抗生剤を投与することは
効果的かもしれません。

ただ、先に述べた理由で、PCRが陽性に出たというだけで、
誰にでも投与するというのは問題があると思われます。
もし効果的だと検証されれば、
おそらく重症化する危険性が高い人にのみ投与する
というのが一つの選択肢だと思います。

あるいは、Prevotella菌が本当に重症化に関連するのであれば、
PCR検査に加えて、腸や気道・肺の微生物叢の分布状態を
調べるのも一つかもしれません。
ただ、あまりにお金と時間がかかるものであれば
実際的ではないかもしれません。