慢性疾患とプレボテラ菌

昨日に続き、科学の先生が書かれた投稿:
Covid-19 : Et si on ne cherchait pas a tuer le virus…
について書こうと思ったのですが、
その前に、Prevotella菌と全身の炎症について、
教科書的な詳しい論文がありましたので紹介します。

The immune response to Prevotella bacteria in chronic in?ammatory disease(慢性炎症性疾患におけるプレボテラ菌に対する免疫反応)”
出典はImmunologyです。

微生物叢は、免疫の発達、免疫反応および代謝を形作り、
病原体の侵入から保護することにより、
人間の健康と疾患において中心的な役割を果たしています。

最近の人間における研究で、
粘膜部位でのPrevotella菌の増加が、歯周炎、細菌性膣炎、
関節リウマチ、代謝障害および低度の全身性炎症を含む
限局性および全身性疾患と関連付けられる様になりました。

Prevotella菌は、バクテロイデス門の嫌気性グラム陰性細菌で、
主に(腸の上皮を貫いている樹状細胞がもつ)Toll様受容体2を
活性化し、インターロイキン23(IL-23)やIL-1などの
抗原提示細胞によるTh17極性化サイトカインの産生に
つながります。さらに、Prevotellaは上皮細胞を刺激してIL-8、IL-6
およびCCL20を生成します。

結構難しい話が書いてありますが、要は、
Prevotella菌が腸粘膜に付着すると、
そこで腸粘膜の表面を監視している樹状細胞が反応し、
免疫に関連するシグナルが産生され、
このシグナルが全身に伝えられ、
全身性炎症性疾患を引き起こす可能性があるということです。

こうした局所の炎症が全身に影響を及ぼすことを
病巣感染と呼びますが、歯周病と関連のある
Prevotella intermediaやP. gingivalisなどといった菌や、
腸内の存在するPrevotella copriといったPrevotella菌が
関節リウマチの発症に影響を与えていると考えられています。

同論文にあった図です。


同じ様にPrevotella菌が関与していると思われるものに
細菌性膣炎もあるそうです。

普段は膣の中は膣共生乳酸桿菌(Lactobacillus crispatus、
Lactobacillus inersおよび/またはLactobacillus acidophilus)
という菌がいるそうなのですが、こうした共生菌が減少すると
Prevotella菌が増えて細菌性膣炎を引き起こし、
その影響は全身にも伝搬されるそうです。

腸内細菌とメタボリックシンドロームも関連があるようです。
Prevotella copriとBacteroides vulgatusの両方の増加は
インスリン抵抗性(II型糖尿病)と関連しているそうですが、
この2種は腸で相互に排他的なんだそうで、
高繊維食の後、グルコース代謝が改善された場合は、
腸内細菌叢はPrevotella菌に富んだものになるらしく、
単に細菌問題だけでもなく食事にも関連している様です。

これに対して、面白いのが、
喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)では、Prevotella菌属は
減少するのだそうです。
↑ここ、まだ自分の中で消化しきれていないのですが、
喘息やCOPDではPrevotella菌が少なくなったかわりに
別の菌が増えているそうで、
Prevotella菌が少量いることで、弱い刺激を身体に与えることで
強い菌の侵入を防いでいるということなのかと思います。
(間違っていたら、こっそりと教えて下さい)