『腸と脳 第二の脳がもたらすパラダイムシフト』 エムラン・メイヤー著, 高橋 洋訳,紀伊國屋書店
前回、新型コロナウイルス感染症の情報というか、
一つの考え方として、
重症化する要因としてマイクロバイオータ(腸内微生物叢)が
関係するのではないかという記事があったので紹介しました。
マイクロバイオータと加齢・肥満・高血圧・II型糖尿病が、
どうかかわっているのか、
リンク先を読み進めて紹介しようと思っていたのですが、
うまくまとまらず、
前回にちょこっと紹介した『腸と脳』の話を先にすることにしました。
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この本にも書いてありますが、1970年代頃の医師は、
人体を限られた数の部品からなる複雑な機械としてとらえていました。
つまり、脳は感じたり指令を出したりするところ、
肺は酸素を取り入れて二酸化炭素を出すところ、
胃は食べたものを粉々に砕くところ、
腸は栄養を吸収するためのところ・・・
といった風に。
まあ、今でも小・中学校くらいの理科・生物の教科書は
こういった説明ではないかと思います。
(実際のところは見たことがないので知りません。
間違っていたらごめんなさい。)
臓器に関する認識は僕が医学を学んだ頃(1980年代)でも、
それほど大きくは外れていなかったと思います。
ところが、最近の研究により、
腸は思った以上に複雑な働きをしていることがわかってきました。
(腸だけでなく、筋肉や脂肪組織だってそうなのですが)
近年、腸は「第二の脳」と呼ばれています。
実際、腸には脊髄にも匹敵する5000万~1億の神経細胞があり、
腸管神経系(ENS)と呼ばれる独自の神経系も持っているそうです。
また、腸内の免疫細胞は、免疫系における最大の構成要素で、
腸壁には血中を循環しているものや、
骨髄に含まれるもの以上の免疫細胞が存在するそうです。
また、腸壁は無数の内分泌細胞が詰まっているのだそうです。
内分泌細胞とは、必要な時に血流に放出される
20種ほどのホルモンを含む特殊な細胞で、
腸壁の内分泌細胞をすべて1つにまとめると、
生殖腺、甲状腺、脳下垂体、副腎など、
それ以外の内分泌組織を合わせたよりも大きくなるのだとか。
僕が大学で生理学を学んだ頃は、
クロム親和性細胞と呼ばれる副腎にある様な
内分泌に関わる細胞が腸にも存在する、
くらいのことは習った記憶があるのですが、
それが何を意味するかまではまだよく分かりませんでした。
そもそも腸管には絨毛と呼ばれる無数のひだがあって、
腸管の内腔を広げるとバスケットボールのコートくらいの
広さになるというのですから、
いろいろな細胞があったとしたら、量も半端ないわけです。
つまり、腸は単なる栄養の吸収器官ではなく、
神経系、免疫系、内分泌系という身体の情報処理に関する
すべての系をそれも膨大な量で持っているわけで、
スーパーコンピュータに匹敵するシステムなのだそうです。
明日に続く