昨日からの続きです。
新型コロナウイルス感染症で嗅覚障害、味覚障害が生じる
という情報が出てきました。実際に、
藤浪選手が嗅覚障害で新型コロナの検査をしたら陽性だった、
というニュースも上がってきて、
不安な方も多いと思います。
まず、先にお話しておきたいことを書きます。
私の知り合いの先生が、
藤浪選手を診察した耳鼻咽喉科の先生から話を聞いた情報です。
「その先生は藤浪選手のことをよくご存じで、彼の今までのパーフォーマンスからしたら、明らかに異常な状況であったとのことで、嗅覚障害より前に倦怠感があり、決して嗅覚障害が初発ではなかった」
とのことで、みんなにきちんと拡散してほしいとのことでした。
倦怠感は診断の一つのヒントになるかと思います。
ただ、病気の発症の仕方には個人差も多いので、
突発的な嗅覚障害が唯一の症状という場合もあるかと思います。
そうした場合にどうするか?
すぐに医療機関を受診するというのは、
ご心配かとは思いますが、まずはご遠慮下さい。
以下にその理由を書いていきます。
連日、新型コロナウイルスのニュースを見聞きしていると、
ちょっとでも怪しいと感じたら、
自分もPCR検査をして欲しいと思うのが人というものです。
ただ、このPCR検査の欠点の一つが、感度が悪いということです。
この検査で陽性となったら、まず感染していると言えますが、
(これを特異度が高いと言います)
この検査が陰性だからといって
かかっていないという証拠にはならないのです。
ですので、他に症状がなくて嗅覚障害だけがでている場合、
あわてて検査をして、陰性だったから大丈夫と、
普通に活動して歩き回っていると、
実は陽性だった場合に、
周囲にウイルスをまき散らすことになる危険があります。
そこで、イギリスでは、他に症状がなく嗅覚障害が生じた場合、
1週間の自宅待機を推奨(要請?)している様です。
(1週間でよいのかというのも難しいところですが、
それは今後はっきりしてくることでしょう)
そして、待機中に発熱や咳などの症状がでてきたら、
相談センターに連絡をして指示を仰ぐことになります。
ただ、ここで問題は、
現在のところ、肺炎を思わせる症状がないと、
中々検査をしてもらえないかもしれません。
ところで、ウイルスによる嗅覚障害ですが、
昨日の文献にも書いてありましたが、
ふつうのウイルス感染後でも
嗅覚障害は12~25%に生じます(これは実際に経験しています)。
そして、その10~15%は旧来からあるコロナウイルスなんだとか。
ですので、嗅覚障害=新型コロナウイルスではありません。
そして、新型でも嗅覚障害は自然に治る場合が多いということです。
それでも自分がかかったウイルスが、
新型なのか否かをはっきりさせたくる気持ちはわかります。
しかし、ここでもう一つ大きな問題点があります。
それは医療資源には限界があるということです。
まずPCR検査が十分には足りていないこと。
これを軽症の人に使ってしまうと、
重症の肺炎の人が運び込まれた時に、
新型コロナかどうか検査したくても検査キットがどこにもない、
という事態が生じます。
また、軽症でも陽性がでてしまうと、
現在指定感染症になってしまいましたので
どこかに隔離しなければならなくなります。
軽症もしくは嗅覚症状しかない人の隔離を病院で行うと
本来治療しなければならない患者さんを
入院させることができなくなります。
さらに言えば、先ほど
「この検査で陽性となったら、まず感染していると言えます」
とは言いましたが、「まず」であって100%ではありません。
検査というものはそういものだとお考え下さい。
もし、かかってないのに陽性とでたとしたら・・・
肺炎の症状があれば、それはそれで治療の対象となりますが、
嗅覚障害以外に症状がない場合、
それで陽性で入院となったら、
逆に感染の危険性が増える可能性だってあります。
そんなわけで、嗅覚障害・味覚障害以外に症状がない場合は、
1週間程度の自宅待機が正解となります。
待機中に発熱や咳、息苦しさが生じてきたら、
まずは相談センターに電話をして指示を仰いでください。
ただし、症状は急激に悪くなる場合もありますので、
その場合は感染症指定医療機関にご相談ください。
↑この原稿を書いていた時点で1週間程度としましたが、
2020.3.30に日本耳鼻咽喉科学会から、
「2週間不要不急の外出を控えて下さい」
との、アナウンスがなされました。
>嗅覚・味覚障害と新型コロナウイルス感染について
―耳鼻咽喉科からのお知らせとお願い― by日本耳鼻咽喉科学会
ただし、高齢者や免疫抑制状態にある人
(抗がん剤やステロイド大量療法を行った直後の人など)は、
早めに相談センターに連絡をとり指示を仰いでください。
2週間程度経過をみていただき、
嗅覚障害・味覚障害だけが残っている場合は加療を始めます。
一般的には急性の嗅覚障害の場合、
経口ステロイドを用いることも多いのですが、
経口ステロイドは新型コロナウイルスに対して、
悪い方向に働く可能性も否定はできていませんので、
早期には用いない方がよい様です。
昨日のENTUKの記事にも書いてありましたが、
嗅覚障害は自然軽快する場合も多い様です。
また嗅覚トレーニングも良いようです。
アロマの液をお持ちの方は
それを嗅ぐのもよいでしょうし、
なくても、今まで嗅いだことのあるニオイを
積極的に嗅ぐことが大切だと思います。
また、オメガ3サプリも良いと書いてありました。
これはω-3不飽和脂肪酸のことだと思います。
EPAとかDHAというヤツですね。