ポリヴェーガル理論入門9 雑感1

8回にわたって、
『ポリヴェーガル理論入門』という本について書いてきました。

迷走神経に3種類あるというのは、
ひょっとして大学の解剖学で習ったのかもしれませんが、
すっかり忘れていました。

それにしても、以前より身体とこころについては
興味があり、いろいろと本を読んでいましたが、
この本を読んで少しすっきりしました。

採血の時や患者さんによっては
耳の処置だけでも気分が悪くなる人がいます。
これが「迷走神経反射」というものだと言うのは
以前から知っていました。

これは、身体が緊張しすぎた時などに起こるのですが、
なぜ緊張している場面なのに迷走神経が働き過ぎるのか、
ということは考えたことがありませんでした。
これは、ある種の防御反応なんだとわかりました。
********

特別な精神医学的な病気がないのに
聴覚過敏を訴えて受診される患者さんはたくさんいらっしゃいます。

疑問点のところで書きましたが、
こうした患者さんの聴覚過敏が、PTSDなどの患者さんの聴覚過敏と
起こっている現象としては同じものなのかどうか。
もし同じ現象であれば、耳鼻咽喉科を受診される患者さんも、
無髄性の迷走神経が働かざるおえないような心理的な状態が
身体では起こっているのではないか、なんてことも考えてしまいます。

まあ、だからと言って、何かストレスやトラウマはありますか?
と聞いたところで、話したくないでしょうし、
患者さん自体が気づいていない場合もあると思います。
また、それを根掘り葉掘り聞いても、
症状を強化させるだけかもしれません。

ポリヴェーガル理論によれば、聴覚過敏の方は、
身体が「安全である」と感じていない可能性があります。
ですので、普通にストレスで交感神経が高ぶっている人以上に、
リラックスが必要なんだと思われます。

これまで、
聴覚過敏の方が「うるさいので耳栓をしている」と言われるのに対して、
耳栓をずっとしていると、脳へのインプットが減って、
脳ではもっと音を聞こうとして感度が上がるから逆効果だと話していました。

しかし、まずは身体が「安全である」ということを認識する必要があるので、
防御のためと考えると、
ある程度耳栓も仕方がないのかなとも思えてきました。

ただ、家にいる時などで、静かな環境でリラックスできる場合は、
やはりできるだけ耳栓はしない方がいいと思います。
というか、そういう時は外されていると思いますが。

また、患者さんの中には、
好きな音楽を聴くのは大丈夫という人がいます。
以前は、音に過敏なのに不思議だなと思っていました。
おそらく、そういう音楽を聴いている時には心がリラックスしていて、
耳小骨や鼓膜の働きがうまくいっているのだと思います。
ひょっとすると、このあたりに治療のヒントがあるのかもしれません。