もう一つ疑問があります。
僕は聴覚過敏は
1)鼓膜張筋・アブミ骨筋の反射がうまく行かない場合、
2)内耳障害による補充現象の場合、
3)脳の聴覚野が過敏になっている場合
の3つの場合があると考えていました。
まあ、2)は発生機序が全く違うと考えてもいいと思うので、
実際には1)と3)の場合かと思います。
1)は末梢性の神経の問題で、
顔面神経麻痺の時に起きる聴覚過敏が典型例です。
このため最初、3)に対応する中枢性のものが、
ポリヴェーガル理論による聴覚過敏なのかと考えました。
ただ、中枢性と言っても聴覚野ではなく、
もう少し下位の脳幹レベルの話なんだなとわかりました。
それであれば、1)と3)は、ほぼ同じ現象となります。
つまりどちらも、大きな音が入ってきたとき、それをブロックするシステムが
うまく働かないことによる聴覚過敏だと考えられます。
(ポリヴェーガル理論では、音量よりも、周波数帯の問題の様ですが。)
僕は、聴覚過敏の方にアブミ骨筋反射をしています。
聴力が正常の人であれば、だいたい100dB~110dBで
鼓膜が固くなる反射がみられるのですが、
顔面神経麻痺の方や、一部の聴覚過敏の患者さんでは、
この反射が消失していて、理論通りだなと思います。
しかし、聴覚過敏の患者さんの中には、
逆にむしろ普通よりも小さな音でも反応するタイプの方もいらっしゃいます。
こういうタイプをどう位置づけるかというのが問題点です。
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もう一つ疑問点は、
先ほど、ポリヴェーガル理論では、
「音量の問題というより、周波数帯の問題の様」と書きました。
実際、本の中には、太古の生存競争のなごりとして、
捕食動物が発する低周波数を聞き逃さないようにするために、
社会交流システムで用いる高周波数の感度を犠牲にして、
低周波数帯に合わせている、ということが書かれていました。
しかし、実際に受診される患者さんの訴えとしては、
食器が当たる音とか水道の蛇口をひねった時の水の音とか、
子どもが叫ぶ声などが耳障りだと訴えることも多い様に思い、
必ずしも低周波数帯を強く捉えようとしている様にも思えないのですが、
これはどう考えるべきなのでしょうか。
まあ、いろいろと考えれば、まだまだ聴覚過敏について、
わからないことがたくさんあります。
今後の研究を待ちたいと思います。