ニューロセプションとは、
「安全」「危険」「生命の危機」を察知し、それにふさわしい、
自律神経の神経回路を選択する反射的なシステムといえます。
このニューロセプションを引き起こす時には、
さまざま「合図」を受けとり身体は反応します。
この「合図」の中で最も重要なのが聴覚刺激なのだそうです。
特に、「安全である」かどうかを判断するのに、
聴覚刺激が非常に重要な役割を果たしているのだそうです。
「安全である」と判断しやすい音としては、
母親が子どもをあやす時の声、あるいは母親の子守歌。
伝統的な民族音楽やラブソングなど・・・
これらに共通するのは、低周波数の音を使用せず、
高周波数の音を積極的に用いていることなのだそうです。
太古の時代、弱肉強食の時代は、
危険を察知することが生き延びるための重要な能力でした。
そこでは、捕食動物というのは、
低い周波数を持ってることが多かった様です。
このため低周波数の音は敵(捕食動物)がイメージされ、
防衛反応を引き起こしやすくなるのだそうです。
プロコフィエフ作曲のクラシック音楽『ピーターと狼』という曲では、
友好的なキャラクターはヴァイオリン、クラリネット、フルート、オーボエで
表現されており、比較的高周波数の音色を有しているのに対して、
捕食動物は低い周波数で表現されてあるのだそうです。
>『ピーターと狼』
つまり、周囲の状況に注意する時には、周囲に捕食動物がいないかと、
低い音を中心に気を配っているわけです。
そして、聴覚刺激とともにもう一つ重要なのが、
顔の表情や身振りです。
安全な環境のもとでは私たちは、
顔の表情や身振り、声の韻律(調子)で、
情報を即座に処理し、
相手がその時どんな状態であるかを察知します。
声の韻律の中でも、特に抑揚に耳を傾けると、
その人の生理学的な状態が読み取れると筆者は言います。
電話で相手の声を聴いただけでも、
調子がいいかどうか、うれしいのか怒っているのとか、
我々はある程度推測することができる場合がありますよね。
発声する人が生理学的な状態が穏やかだと、声は旋律を持ち、
それを聴いていると聴いている方も落ち着いてきます。
顔の表情や身振り手振りでも同じです。
にこやかな落ち着いた表情であれば、こちらも居心地はいい。
緊迫した表情をしていれば、何かあったかと思います。
こうして我々は他の人とコミュニケーションをとってるわけです。
こうしてコミュニケーションをとる方法を、
ポリヴェーガル理論では「社会交流システム」と呼んでいます。
発声と聴くことの関係については、もう一つの側面があると言います。
哺乳類が構文や言語を獲得するずっと前から発声はあり、
発声は社会交流の大切な要素だったそうです。
哺乳類たちは、ある存在について、
近づいていって安全か危険かを声を通して
同種の仲間に知らせることができます。
それは「言葉で」ではありません。
これって、以前ちょこっとお話したことがある、
「メラビアンの法則」
に通じる話ですね。
>本:声 ~記号に取り残されたもの~2
我々は言葉だけでなく、
というよりは言葉以上のものを言葉以外から、
察知(ニューロセプション)し、
社会交流システムを用いて、
「安全」「危険」「生命の危機」を反射的に判断しているわけです。