本:ポリヴェーガル理論入門1 2つの迷走神経

現代人はストレスの時代を生きています。
そしてストレスはいろいろな病気の誘因になります。
ストレスをうまく対処することで健康になれます。
そしてそのカギは自律神経にあります。

自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があります。
交感神経は緊張・興奮の神経で、
もともとは敵と出会った時に
闘争または逃走(Fight or Flight)するためにの神経で、
車のアクセルの様なものです。

対する副交感神経はリラックスの神経、車のブレーキの様なもの。
健康、成長、回復を促す神経です。

現代人は交感神経の緊張が強く疲弊しているので、
副交感神経優位になるように頑張りましょう。

上記が一般的な自律神経の考え方です。
まあ、もう少し詳しい本であれば、
副交感神経だけをよくすればいいのではなく、
交感神経と副交感神経の両方がしっかり働き、
そのバランスがとれている状態がベストである、と書いてあります。

これが現在の一般的な常識です。
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『ポリヴェーガル理論入門 心身に変革をおこす「安全」と「絆」』 ステファン・W・ポージェス著, 花丘ちぐさ訳, 春秋社
ポリヴェーガル理論入門

しかし、「ポリヴェーガル理論」ではこの常識を疑います。

今まで、人間の神経系はストレスに対抗し自己防衛するには、
上記の様に、交感神経による「闘争/逃走」という、
たった一つの反応しかないと一般的には考えられていました。

ポリヴェーガル理論では、生命が脅かされた時には、
2つ目の別の防御システムが発動すると考えます。
それは、「不動」「シャットダウン」「解離」という反応です。

これは、カメが危険が迫った時に首を引っ込めるようなものです。
戦うことも逃げることもできないような困難が迫ってきたとき、
身体のあらゆるシステムをシャットダウンして、
被害を最小限に抑えようとする防衛反応です。

極端なことが目の前に生じた場合、
人はまれに気を失ったりします。
また、その時のことを覚えていなかったりします。
これが2つめの防衛反応です。

この反応には副交感神経(迷走神経)が関与しています。

実は迷走神経には次の2種類があります。
①有髄性の迷走神経:主に横隔膜より上の臓器の制御
②無髄性の迷走神経:主に横隔膜より下の臓器の制御

副交感神経の主役は迷走神経vagus nerveです。
ポリヴェーガルとは複数(poly)の迷走(vagal)神経という意味です。

この2つの迷走神経と交感神経は、系統発生学的には、
無髄迷走神経⇒交感神経⇒有髄迷走神経
の順に、生まれてきたらしいのです。

このように、
自律神経系は単に2つの拮抗する神経系で構成されているのでなく、
3つのシステムがあり、これらは進化の順番に沿ったヒエラルキーを形成し、
新しい回路が古い回路を抑制するようにできているのだそうです。

つまり、「安全」な状態の時には有髄迷走神経が働き、
何かことが起こると、交感神経がそれに取って代わり、
闘争/逃走反応(可動化)で身体を防衛し、
それができない様な状態に陥ると、
無髄迷走神経が働き、シャットダウン(凍り付き現象,不動化)で、
最終的に身を守るように身体はできているのだそうです。

ただ、防衛反応として、一度「不動化」をひきおこす神経回路を用いると、
そこからうまく抜け出すことができないのが問題で、
これが、PTSDなどと関連するのだそうです。

続きは明日