2019.8.3 京都耳鼻咽喉科漢方懇話会2 各論

昨日からの続き
代表的な処方について解説:

半夏厚朴湯(16)
湿痰の方剤

ズルズル痰が切れない状態の時に用いる
半夏:鎮咳作用・喀痰作用・分泌低下作用
急性咳嗽~慢性咳嗽まで用いる
後鼻漏、後鼻漏感にも使用

梅核気(咽頭異常感症)で有名だが
精神的な要素は関係なく使用してもよい

◎白い痰がからんでゼロゼロ 半夏厚朴湯

痰がらみの咳
エヘン虫
喉がつまる
鼻水がたれ込む
インフルエンザや熱のある風邪のあと何かのどにひかかる感じ

半夏:鎮咳作用・去痰作用=乾かす働き
はじめから乾いている人、寝たきりの老人などに漫然と出すのはダメ
老人:量を少なく、短期的に使用

類似処方:六君子湯(43)
この中にも半夏(陳皮半夏)が含まれている
六君子湯=四君子湯+陳皮半夏
痰切り・咳止め+胃薬というイメージ

胃もたれ、あまり食べられない、食慾不振
だるくてしょっちゅう風邪をひくという人の風邪の予防に用いる
⇒1日に1包でもよい
風邪をひくと喘息っぽくなる人にもよい

やはり半夏が入っているので漫然と長期処方しない
咳が出る前の段階で用いる

参蘇飲(66)
六君子湯+葛根・紫蘇葉・桔梗
=六君子湯+鎮咳去痰(強い成分は入っていない)
六君子湯を投与する人(風邪をひいたら喘息になる、咳がながびく)
風邪をひいてしまったなという時

虚弱な人でふつうの風邪
悪寒・戦慄・高熱はなく、
ちょっと寒気があるがな熱はなく咳や鼻水が出る
参蘇飲は漢方のPL

六君子湯と参蘇飲、一見関連がなさそうだが、
構成生薬をみると見えてくる

********
麦門冬湯(29)
燥痰の方剤

dry cough
人参・硬米・棗=補気剤
麦門冬:潤す力が強い
半夏・・・乾かす生薬だが、麦門冬の潤わせすぎを予防する

乾燥している人
老人は半夏厚朴湯より麦門冬湯の方が適応が多い
口が渇く、誤嚥する、のどにつまる
痰があるが乾燥しすぎて
出ないため「ゲー!」と言って顔を真っ赤にして咳き込む

麦門冬を含む処方
清暑益気湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯、温経湯、辛夷清肺湯

********

小青竜湯(19)
寒痰の方剤

半夏も含む
寒くて水浸し⇒暖めて水を分散させる
からだの冷えをとる

適応
急性咳嗽で用いる場合が多い
くしゃみ・鼻水・ひんやりした時期の花粉症
抗ヒスタミン薬が眠気が強く使えない場合
麻黄が入っているので逆に目が冴えて眠れなくなる人もいるので注意
夜間の鼻閉にも有効だが、逆に眠れなくなる人もいる
寒い時期に服用する場合はお湯に溶かして飲む

寒くして くしゃみ・鼻水 小青竜湯

アレルギー鼻炎・花粉症によいが、
真夏には平熱の生薬のものや麦門冬湯などの方がよい場合もある

麻黄含有(循環系、胃腸系に注意)
苓甘姜味辛夏仁湯(119)=小青竜湯ー(麻黄・桂枝・芍薬)+(茯苓・杏仁)
寒気するも悪寒・戦慄ほどではない
鼻ズルズル
高齢で痰がズルズル、ゼロゼロ長引く咳
・・・半夏厚朴湯は使いにくいので苓甘姜味辛夏仁湯を用いる

********

麻杏甘石湯(55)
熱痰の方剤

膿性痰、黄色痰
急性咳嗽:気管支炎、肺炎
慢性で使うことはあまりない

麻黄湯と構成生薬は似ている
桂枝⇒石膏
麻黄+桂枝=発汗作用
麻黄+杏仁=消炎作用

適応
熱をもっている状態
気道の炎症で膿性痰
呼吸困難
気管支拡張作用
急性咳嗽
気管支喘息・・・予防(コントローラー)ではなく治療薬

布団に入って痰が多くて眠れない
抗生剤を飲んでもよくならない
息苦しい

妊婦にも使用

********

排膿散及湯(122)
膿を出し切れない時、膿がたまって排膿できない場合
膿瘍、おでき、乳腺炎、歯肉炎、にきび、呼吸器感染症の膿性痰
小柴胡湯との併用

寒熱燥湿・・・そんなに単純に割り切れる場合ばかりではない
膿性痰がゼロゼロ⇒麻杏甘石湯+半夏厚朴湯を併用

早く効かしたい場合
溶かして服用・・・ただし熱湯そのままでなくてよい。冷ませて飲む。

********

小柴胡湯(9)
寒熱燥湿で言うと「真ん中

つかみどころがない処方=真ん中だから
冷ますわけでも、冷やすわけでも、乾かすわけでも、潤すわけでもない
あまり特徴がない

柴胡・黄ごん=免疫
半夏=鎮咳
人参・生姜・棗=胃の調子を整え補気

小柴胡湯と麦門冬湯
柴胡・黄ごん⇒麦門冬・硬米
他は概ね共通

小柴胡湯と六君子湯も似ている
柴胡・黄ごん⇒陳皮・茯苓+朮

ぐずぐず長引いた時
解熱したのに微熱が続く慢性化した時
胃の症状(ムカムカなど)があるとき

小柴胡湯加桔梗石膏(109)
小柴胡湯+桔梗・石膏
⇒熱をとる方向にシフト
耳下腺炎、扁桃炎などののど痛が長引いたとき
流行性耳下腺炎
耳、首などに熱・痛み