本:「耳が聞こえにくい」は脳トレで治る!1

『「耳が聞こえにくい」は脳トレで治る!』 加藤俊徳, 宝島社
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うちは耳鼻咽喉科ですので、
聴こえでお困りの方が毎日たくさん来院されます。

中には耳垢が詰まっているだけの人もあり、
こうした方は耳垢塞栓を除去することですぐに治ります。
滲出性中耳炎も、鼓膜切開をしたり、
少し飲み薬で鼻の奥の状態を整えて耳管の調子がよくなれば、
鼓室に溜まっていた水が抜けて聴力は回復します。

突発性難聴やメニエール病、低音障害型急性感音難聴といった
内耳の難聴(感音性難聴)などは、
難聴の程度と治療を始めるまでの時間経過、
あるいは日々の生活習慣やストレスによって、
多少治り方に個人差はあり、
治る人もあれば治りにくい人もありますが、
ある程度治療法というのは確立されています。
(まあ、もちろんもっと効果的な、もっと確率のいい治療法が、
でてくることを期待しますが。)

それに比べて、加齢性難聴であるとか、
時間がたってしまった感音性難聴などは、
現在のところ、薬でなんとかなるといったものはなく、
補聴器や人工内耳を用いることで、
なんとかやっているというのが現状です。

ただ、人工内耳を装着した場合、
メガネの様に装着したらすぐに改善するというものではありません。
聴覚のリハビリの様なトレーニングが必要です。
これは補聴器でも大なり小なり同じ事が言えます。

補聴器をすると、周囲の音が一斉に頭の中に入ってきて、
ワーンと響いてとても不快に思われる方が結構いらっしゃいます。
これらは、長い間、難聴が続いたために、
音が入ってこない状態になれてしまい、
脳の中の聴覚を受け持つ領域が退化してしまっているのです。

そこに、補聴器等で一斉に聞こえの情報が入ってくると、
脳内での処理が追いつかず、
脳が混乱を来し、ワーンと不快な症状が起るのです。

「音を聴く」というのは、耳で聴いいているように思いますが、
このように、実は「脳で聴いている」わけです。

それに対して、我々耳鼻咽喉科医は、
末梢のマイクにあたる耳についてはいろいろな研究を通じて
聴こえをよくする努力を行ってきました。
しかし、中枢側の脳の聴く部分については、
あまりに無関心であったように思います。

まあ、それは脳神経領域で耳鼻咽喉科の領域ではない、
と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、
聴覚に特化した脳の専門家という方も
あまりいらっしゃらない様に思います。
(僕が知らないだけかもしれませんが)

そんな中、今回のこの本は、
中枢性の聴覚の低下に対する処方箋として、
とても有意義な本だと思います。

聴こえに困って耳鼻咽喉科をまずは受診されるわけですから、
我々耳鼻咽喉科医も今後、中枢性の難聴にも配慮して、
トータルで聴覚というものを考え、
患者さんに適切な指導をしていくべきではないかと思います。

長くなってきたので続きは明日。