今日もひきつづき後鼻漏の話。
参考図書は、
『知られざる後鼻漏-鼻から始まるその不快感の正体』 呉孟達, 幻冬舎
ですが、自分なりにアレンジしています。
上記の本には、
仮性後鼻漏にはA)嚥下障害性とB)神経過敏性があり、
A)の中には、1)唾液性、2)運動性、3)鼻咽腔逆流性、4)その他
があるとお話しました。
今回はB)神経過敏性による後鼻漏感について。
B)神経過敏性
以下のようなものがあります。
1)アトピー性
2)咽頭異常感症性
3)胃食道逆流症(GERD)・咽喉頭胃酸逆流症(LPRD)性
一つずつ見ていきましょう。
1)アトピー性
咳喘息やアトピー咳嗽が含まれます。
長く(8週間以上)続く慢性の空咳
寝る前と朝方に集中
アレルギー対策の効果が高い
鎮咳剤が効きにくい乾性咳
<咳喘息>
慢性咳嗽の20%・・・しかし30~40%が気管支喘息(湿性咳嗽)に移行
気道(細気管支)の過敏性亢進・・・好酸球性炎症
⇒冷暖房、香水、受動喫煙、運動、湿度変化など対して容易に反応
咳以外に喘鳴や呼吸困難を伴わない(気管支喘息になると+)
気管支拡張剤(β刺激剤やテオフィリン)が有効
⇒ただし抵抗例では早めにステロイド治療に切り替える
⇒症状改善してもすぐには休薬しない
<アトピー咳嗽>
慢性咳嗽の40%
太い気管支の咳感受性が亢進・・・好酸球性炎症
気管支拡張剤には全く反応しないが抗アレルギー剤が有効(60%)
⇒無効例にはステロイド
気管支喘息への移行はない
症状が改善すれば休薬、ただし再発しやすい
⇒だからといって長期投与は無用、再発の予防にはならない
ということです。
どちらも咳が主症状ですが、時と場合によって、
あたかも後鼻漏が発生したように錯覚されることがあるそうです。
2)咽喉頭異常感症性
後鼻漏以外に、のどの局所的な異常知覚を伴う
ノドの圧迫感、異物感、つかえ感、つまり感、チクチク感、
ヒリヒリ感、窒息感など多彩
客観的他覚的所見がない
約半数以上に何らかの精神・神経系疾患の要素がある
原因
①更年期障害
②がん恐怖症
③不安神経症
④抑うつ病 など
過敏性腸症候群、加齢変化、神経性病態の側面であることが多く、
他の仮性後鼻漏と異なり、全身的な不定愁訴が多い
すなわち:
倦怠感、易疲労感、脱力感、食欲不振、意欲低下、
四肢のしびれ感や冷感、動悸、息切れ、肩こり、頭痛、頭重、背腰痛、
のぼせ、火照り感、寝汗、息苦しさ、不眠、不安、焦燥感、抑うつ感、
集中力散漫、記憶力低下、眼精疲労、ふらつき感、耳鳴り、耳閉感、
腹痛、胃腸の不快感や膨満感、吐き気、嘔吐、便秘、下痢、
残尿感、頻尿、月経障害 等々
治療
これが中々大変ですが、
心身医学的アプローチや心療内科的加療、
あるいは東洋医学的アプローチが考えられます。
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3)胃食道逆流症(GERD)・咽喉頭胃酸逆流症(LPRD)性
これは、先日このブログでも取り上げました。
>本:自分で治す!逆流性食道炎2
>本:自分で治す!逆流性食道炎3
>本:自分で治す!逆流性食道炎4
このGERD・LPRDでも10~20%が後鼻漏感を伴うそうです。
食道内症状(ゲップ、胸焼け):GERD ただし定型的症状は50%の人
痰がらみ、席、咳払い、のどの違和感や疼痛、嗄声、呑酸
原因
下部食道の括約筋の収縮力の低下=加齢
食道裂孔ヘルニア
猫背による腹圧上昇
脂肪の多い食事・肥満による腹圧上昇
不規則で社会的ストレスの多い生活習慣⇒消化管運動機能低下
暴飲暴食
ピロリ菌除菌⇒高胃酸状態
検査
胃内視鏡検査・・・ただし陽性は半分(残りはNERD)
喉頭・下咽頭内視鏡検査・・・食道より咽喉頭粘膜の方が傷害されやすい
治療
・まずは食生活の見直し
・暴飲暴食、深夜の食事、高カロリー高脂肪の食事
・避けるべきもの:
チョコレート、コーヒー、ペパーミント、スパイシーフード
玉ネギ、柑橘類、アルコール、炭酸飲料、トマト
・減量
・夜間には腹圧上昇しやすい締め付けのきつい寝間着や腹巻きは避ける
・PPI(プロトンポンプ阻害剤)(エソプラゾール、ラベプラゾール
・H2受容体阻害剤(H2ブロッカー)
・セロトニン5-HT4受容体作動剤(モサプリド)