今日もひきつづき後鼻漏の話。
参考図書は、
『知られざる後鼻漏-鼻から始まるその不快感の正体』 呉孟達, 幻冬舎
です。
さて、次は仮性後鼻漏についてです。
つまり、実際にには鼻からのどに鼻汁が流れてきていないのに、
流れている感じがする、という状態です。
あるいは、鼻からのどに違和感がある状態も含まれると思います。
副鼻腔炎の治療(抗菌薬、去痰剤、ESSなど)や、
アレルギー性鼻炎の治療(抗アレルギー剤、手術など)、
好酸球性副鼻腔炎の治療(ステロイド、ESSなど)を行ったが、
症状が改善しない場合、次にどう考えるかということです。
(ここでは再発・再燃の話はひとまず置いておきます。)
まあ、実際には、他の治療が終わってからというのではなく、
初診時から常に考えていくわけですが。
上記の本の著者、呉先生はまず大きく2つに分けられます。
A)嚥下障害性による後鼻漏感
B)神経過敏性による後鼻漏感
A)嚥下障害性
つまり、後鼻漏感というのは、
「スムーズにものが飲み込めていない状態の時に生じる」
と考えるわけです。
この時の「もの」というのは、食べたときの食物の場合もありますが、
鼻から流れてくる生理的な鼻汁や唾液も含まれます。
鼻には加湿作用という重要な働きがあります。
乾いた空気が直接気管や肺に入ると器官を痛めます。
これを防ぐために鼻やのどの粘膜は絶えず濡れていないといけません。
粘膜が乾くとすごく苦痛です。
この加湿で使われる鼻汁は、正常人でも1日数リットルと言います。
これらの加湿で余った鼻汁は知らないうちに
鼻からのどに排泄されています(生理的鼻漏)。
この鼻汁(水分と粘液)がうまく飲み込まれずに、
咽頭に残留した時に後鼻漏感が生じるわけです。
嚥下障害性の後鼻漏感には次のようなものがあります。
1)唾液性(=口腔乾燥症)
2)運動性(=非顕在性運動障害)
3)鼻咽腔逆流性(=唾液逆流性後鼻漏)
4)その他(睡眠性、形態性など)
1)唾液性(=口腔乾燥症)
生理的な鼻漏が食道にまでうまく飲み込まれるには、
唾液の助けが必要なのですが、
この唾液が少なくなると、滑りが悪くなり
のどの粘膜に付着したままになります。
また、潤いのなくなった粘膜は次第に微小な炎症性変化が生じ、
知覚神経や感覚受容体がダメージをおこし
嚥下障害の原因の一つになります。
唾液性後鼻漏感の症状は、
のどの中が擦れるようなヒリヒリ感、
ジリジリとした痛み、ざらつくような摩擦感、
べとつき感、鼻の奥やのどのどこかにへばりついている感じ
(まあ、これは他の後鼻漏・後鼻漏感でもありますが)、
口の中に口内炎ができているような火照り感がある。
日中はいいが、起床時に口の中やのどの奥が臭う。
酸っぱい、苦い、ネトネトした分泌物がまとわりつく。
飲食中は後鼻漏感を自覚しない。
(真性後鼻漏感では食事中に軽快することはない)
↑これ、時々聞く症状です。鑑別にとても参考になるかもしれません。
これは、安静時の唾液と食事時の唾液はメカニズムが違うから。
食事の時には耳下腺などからサラサラした唾液が出てくるので、
食事の時には後鼻漏感を忘るのだそうです。
ですので、「1日中ガムをかみ続けたい」、
「いつも何かしら口にし続けたい」といった症状も参考になります。
唾液性後鼻漏感の原因としては次のようなものがあります。
①加齢(唾液腺の生理的な減少)
②薬物の副作用
向精神薬(フェノチアジン系、三還系)、睡眠薬、
抗てんかん薬(フェニルアセチル尿素系)、抗痙攣薬、
血圧降下剤(ラウオルフィア剤)、利尿剤、
抗コリン剤(抗パーキンソン)、抗ヒスタミン剤、
消化性潰瘍薬など
③口腔歯牙問題
義歯の不適合、齲齒、口腔衛生状態の不良など
④精神障害性疾患の関与
精神的疾患因子=ストレス
自律神経性=交感神経優位
神経症性:
不安障害、身体表現性障害、解離性障害、気分障害
SSRI、SNRI、仮面うつ病
⑤全身性疾患の影響・・・糖尿病、脱水
⑥唾液腺疾患・・・シェーグレン症候群
⑦頸部放射線治療後の影響
ちょっと長くなってきたので続きは明日。