今日もひきつづき後鼻漏の話。
参考図書は、
『知られざる後鼻漏-鼻から始まるその不快感の正体』 呉孟達, 幻冬舎
ですが、自分なりにアレンジしています。
慢性副鼻腔炎でもう一つ注意が必要なのが好酸球性副鼻腔炎。
鼻茸や喘息を合併していることが多く、難治性が多い。
真菌に対するアレルギーが原因とも言われていますが、
はっきりとはまだ分かっていません。
他のアレルギー性鼻炎や好中球性の副鼻腔炎よりも
早期から嗅覚障害が出現しやすい。
喘息(特にアスピリン喘息)の併発が多いと言われています。
細菌性(好中球性)で効果のある、
マクロライド少量長期療法は効果がない。
効くのはステロイドの局所もしくは全身投与。
適切な時期に内視鏡下手術(ESS)が有効だが、再発もしやすい。
慢性副鼻腔炎や、アレルギー性鼻炎でも繰り返し炎症が起った場合に、
後鼻漏は粘性となり、慢性後鼻漏の状態になります。
これがさらに進むと、
粘膜組織が再構築(リモデリング)という状態となり、
不可逆性変化をおこします。これが変性状態で、
これに伴う後鼻漏が変性性後鼻漏なんだそうです。
変性性後鼻漏は、粘液が極めて粘っこくなり、
ニカワ状(膠状化)と呼ばれるものになります。
その最たるものが好酸球性副鼻腔炎の後鼻漏。
カラカラというより、
ネチネチ・イガイガといった異常な乾燥感はリモデリング進行中。
変性性後鼻漏は、感染やアレルギー以外でも生じる。
1)移行性
主に慢性の炎症性疾患が持続しているうちに、
リモデリングが生じ粘膜組織が変性していく
2)加齢性・退行性
⇒鼻粘膜の線毛上皮がダメになり異物排除↓
⇒鼻腔の加湿・加温機能が低下
2)術後性・・・副鼻腔炎手術から数十年後
3)退行性・・・炎症性疾患が長く続いた場合
ツンツン・イガイガとした乾燥感
時にジンジン・ヒリヒリとした疼痛感
常に鼻腔・咽喉頭全体にベタベタ・ネチョネチョ不快感
単純な加齢性変化ではみられない、鼻腔内粘膜の発赤・腫脹
鼻炎薬や感冒薬は逆効果
4)感冒後性
粘膜のリモデリングは時間経過だけでなく、炎症の強さも影響。
感冒後後鼻漏は急性後鼻漏の治療とは一線を画し、
変性性後鼻漏に準じた内容で臨むべき
ところで、慢性上咽頭炎も後鼻漏を強く訴える病気ですが、
これは咽頭の病気なので、仮性後鼻漏に入るのかもしれませんが、
粘膜で起っていることは、
概ね鼻腔で起っていることと似ているので、
上咽頭炎については真性後鼻漏扱いでも良いようにも思います。
なお、参考図書の筆者の呉先生は、
アレルギー性鼻炎や変性性の鼻粘膜組織に
エタノールを注射する方法を開発されています。
低侵襲で高い安全性があり、治療効果もよいとのことですが、
僕はこの治療法については何も知らないので、
この治療についてのコメントは控えさせていただきます。