前回に引き続き、
本川達夫先生の特別講演「ゾウの時間、ネズミの時間」
今度は、「生きているとはどういうことか?」
という観点から時間を考えてみる。
「ご臨終です」という状態になったとしても、
外見上はすぐには変わりがない。
違いはどこにあるか?
違いはエネルギーを使っているかどうかということ。
古代ギリシャ人は、生物と無生物の違いは、
心=魂(プシケー)を持っているかどうかということ。
アリストテレス:心の働きが生物である。
生きている=機能していいる=仕事をしている。
仕事をしているというのは、
「ある目的」のためにエネルギーを使って働いているということ。
死体には目的がない。生きているものには目的がある。
生きているものの目的とは何か?
それは生物の永続に関係する。
アリストテレスはこころの目的は「ずっとありつづけること」と考えた。
「生きていることは生きていないことより善いことである」
なぜ生物ではエネルギー消費量が時間と正比例しているのか?
生物は38億年前に誕生しずっと途絶えずに生き延びてきた。
絶滅してもおかしくない天変地異が起っても生き延びてきた。
場合によっては大地よりも長く続いている。
そもそも生物はずっと続くようにできている。
そのような仕掛けがを持っているのが生物である。
どんな仕掛けを持っているのか?
逆に考えると、
ずっと続くいていくようなものはどうやってたら作れるか?
建築物で考えてみる。
どうやったらずっと存在するような建物が作れるか?
しかし、それは物理学の法則から言っても無理。
エントロピーは必ず増大する。万物は流転する。
絶対に壊れない建物は作れない。
壊れたら直し直し続けているものはある。
代表的な建築物が法隆寺。
直し直ししながら1300年続いている。
しかし、それでは古い部分と新しい部分が混在し使いにくい。
新築とは違う。
生物も直し直しではずっとは個体としては続けられない。
これに対して、
全く新しいモノを作って引き継いでいく建築物がある。
それが伊勢神宮。
20年ごとに遷宮をしてまったく同じ建物を隣に建てる。
20年ごとに時間を戻してリセットする。
常若(とこわか)=常に新しいということを大切にする。
それと同じ様なことを行っているのが生物。
エネルギーを使って子どもを作っている。
だから世代交代が早ければ、
世代が交代するときにエネルギーが消費されるので、
時間のたつのが早い。
世代交代という輪を回せば生命は続くことになる。
回すにはエネルギーが必要である。
ただし、ここで生物は全く同じモノを作らない。
本来は同じモノを作る方が簡単。
それをあえてやらない(多細胞生物)。
それは環境に適応するため。
自分に似てはいるがあえて全く同じものは作らない。
生物に多様性があるのは環境に応じてずっと続いていくため。
睡眠も同じようなものかもしれない。
日々新しく働ける様に身体を更新するからこそ続いていける。