睡眠・認知症予防シンポジウム3

昨日に続き、本川達夫先生の特別講演「ゾウの時間、ネズミの時間」

時間とエネルギー消費量は反比例する。
つまり、エネルギーを使うと時間が早く進む。
逆に言えば、エネルギーを使わなければ時間が止る。
冬眠が良い例。

冬眠するリスと冬眠しないリスでは前者の方が長生き。
長生きしたかったら冬眠すればいい(?)
ただし、リスは長生きしたいから冬眠するのではなく、
冬という過ごしにくい時間を冬眠することで
活動できる時間を有効に使えるようにしている。
生物というのは時間を操作しているのだ。

我々は、物理的に万物共通の時間というものがあって、
だーっと流れている時間に抗うことができない気がしている。
そうすると唯一できることは時間にしがみつくしくことになるので、
どうしても「流れる時間にしがみついている方が勝ち」
という価値観に陥りやすい。

しかし、生物にとって時間というのは、
ただただ長いだけがよいのではない。
仕事と時間という両面で考える必要がある。

生物の中ではエネルギーを使って仕事をすると
生きた時間が流れる。つまり、
生物はエネルギーを使って時間を作り出しているとも言える。

そういう観点から睡眠を考えてみる。
身体の小さいもの=エネルギー消費量の大きいものほど
睡眠時間は長い。

ここまで異なる動物でエネルギー消費量と時間を考えてきたが、
同じ種ではどうだろうか?
人間の場合年齢とともに、
体重あたりのエネルギー消費量はどんどん下がっていく。
だからエネルギーをよく使う小さい子どもはよく眠る。
年齢とともに消費するエネルギーが少なくなるということは、
実は年齢とともにすぎる時間は遅くなっていくと考えられる。
80歳くらいになると20歳の頃より約2割くらいゆっくりになっている。
だから、ブレーキを踏む速度も2割遅くなる。

しかし、歳をとると時間がたつのが速くなる感じがする。
これは心理学でよく言われる。
これはこう考える。
孫と祖父が夏休みを一緒に過ごしたとすると、
孫の方はエネルギーをつかって一生懸命いろいろなことを経験する。
あとから振り返るとすごくぎっしりと思い出が詰まっているので、
夏が長かったと感じる。
祖父の方は何もしないでいるので、
「ああ、もうこんなに日にちがたってしまった」となる。

時間というのは、
その時に中に入っている時と後で振り返る時で感じ方が逆。
楽しい時間は、時間のことは考えずにいるが、
つまらない時には、時間がたつのが遅く感じる。
けれども後で振り返ってみると何も残っていない。
まあ、そういう時間にならないようにしたいものだ。