めまい平衡医学会@湯田温泉2

昨日からのつづき
めまい平衡医学会、高橋正紘先生の講演


<メニエール病の聴力経過>
1.低音が低下 ⇒ 一時的で改善することも多い、しかし症状を繰り返していくうちに
2.高音も低下 ⇒ 全体に低下、さらに罹病期間が長くなると
3.両側発症 という経過をとる。

・低音障害は改善しやすいが再発しやすい
・低音障害が進行すると一定の確率で高音障害、全領域障害
・難聴は罹病期間に比例して進行する
・罹病期間が16年を越えると50%の人は両側障害

<聴力障害進行防止>
・症例提示
1)40歳でメニエール病を発症したトラック運転手
運動を勧めたら競歩を始めた。毎日3時間。
⇒始めて4ヶ月で良くなり始め、7ヶ月でほぼ正常化。
⇒ところがその後一時体調を崩し3週間臥床。すると、聴力も悪化、めまいも再発。
⇒その後有酸素運動を再開、聴力は再び正常化。

2)70歳で発症の寡黙な人
家庭で奥様がストレス?退職したら聴力低下著明。
⇒ところが退院して運動を始めたら聴力回復。
⇒しかし心臓疾患を指摘され運動制限するようになって再び聴力低下。

3)職場がストレス、海外出張も多くめまい・難聴をくりかえす人
初診時43歳、めまいと聴力低下。
⇒週3回水泳をやり1ヶ月でめまい消失、7ヶ月で聴力正常化。
⇒その後多忙で受診されなかったら、再び再燃。
⇒再び水泳を再開5ヶ月で正常化。

<これらの患者さんに行っている指導>
熟睡の工夫、手抜き、我慢を減らす、長時間勤務をやめ定時帰宅(必要なら診断書も書く)、気晴らし、趣味の実践、そして最も有効なのは、
有酸素運動:少し息があがるくらいの運動を毎日
・・・昔は週に3回×1時間以上と言っていたが、それでは進行した難聴はとても治らない
⇒何かを犠牲にして運動の時間を作るように指導
「罹病期間が長くなるとどんどん進行する」と資料を見せてやる気をだしてもらう
その他、ランニング、エアロビクス、エアロバイク、水泳、水中ウォークなども
薬剤は不眠症の時に眠剤を少し処方するだけ

<特殊な症例>
自分の念願であった出世がかなった途端、治ってしまった人もいる

<改善率>
・罹病期間8年までなら有酸素運動で有意に改善しうる場合が多い
350名で統計:
低音障害⇒29.5%
高音障害もある人⇒12.5%
全域で低下のある人⇒4.1%
で聴力が正常近くまで戻った。
メニエール病では低音障害のうちにストレス対策と有酸素運動を徹底してやらないと、進行してからやっても効率が悪い

他の統計:めまいは最初の3ヶ月で8割以上が消失
耳閉感は6割が消失
聴力は最終的に38.5%が正常化
耳鳴は26.5%
難聴が改善しなくても、耳鳴は著明軽減、消失する例もあり、有酸素運動は無駄ではない

難聴と耳鳴では観察期間5ヶ月を過ぎると有効率は同じだが、
初期のものは聴力の方が改善しやすい

<メニエール病をどう考えるか(高橋仮説)>
我慢強く仕事熱心な人が多忙やががまん・奉仕業務を強いられる
=ストレスフル

一生懸命やっても報われない
情動中枢を介してストレス病として発症
他にも同様のストレス病はたくさんある(IBS、不整脈、狭心症、うつ、脱毛症・・・など)
なぜ内耳が標的臓器になるのかはわかっていない

たまたまメニエール病は内耳が標的になった場合
ホメオスターシスが障害され内リンパ水腫になる

内耳が由来というより、
脳に由来する情動がたまたま内耳に働いた病気

一度症状(回路)ができると、(けもの径のように)
同じ様なストレスが働くと同じ様な回路が刺激される

<治療の原理>
手抜きの推奨(あまり徹底的にやらない)
環境を改善
日ごとに気張らし・発散
最も大事なのは有酸素運動
「スリムな時に作ったスーツを着る」といった目標をたてる
有酸素運動をすると、全身の体調がよくなって自然治癒力が高まり治癒する

メニエール病・・・内リンパ水腫でライスネル膜が伸展
⇒いろいろな症状
これが、短期間に改善するとすぐに正常にもどる
これは風船をふくらませて、すぐに空気を抜いた場合は元通りになるが、
長い間ふくらませたままにしておくと、その後に空気をぬいてもシワができて元に戻らなくなる。
時間のたったメニエール病はこれと同じ。
伸びきったライスネル膜はしわになって元に戻らない。
これを元に戻すには膨大な運動量を長期間する必要がある

同じ事をしても全員がよくなるとは限らないのは、
治り方には個々で異なる生物多様性(バリエーション)が大きいため