昨日の続き
<特別講演>
『心身医学のさらなる発展を目指して』
講師は東北大学大学病院心療内科・大学院医学系研究科行動医学
福士 審先生
心身二元論
現在も社会に根強く定着。
もともとはデカルトが言い出した。
近年、脳科学が進歩し、
心身の合一について語られることが多くなった。
心身症Psychosomatic Disease
日本心身医学会1991の定義
(1)身体疾患(器質的 or 機能的)
(2)発症・経過に心理社会的因子が密接に関与
(3)除外:神経症・うつ病など精神障害に伴う身体症状
心身医学会のカリキュラムで例示されている耳鼻咽喉科疾患
耳鳴、めまい疾患(メニエール病、動揺病、心因性めまい)、
心因性難聴、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、
慢性副鼻腔炎、嗅覚障害、味覚障害、頭痛、口内炎、
咽喉頭異常感症、心因性発声症、耳鼻咽喉科領域の慢性疼痛、
精神科疾患の耳鼻咽喉科症状
(↑例:Panic Disorderにおけるめまい感、ふらつきなど)
現代医学における心身医学の重要性の増加
・現代の社会情勢の変化⇒健康状態にストレスの影響大
・ストレスは脳機能、自律神経内分泌、各種臓器機能に影響
・早期に国民が受診でき、問題を解決できる医師が必要
総論のあと、
講師の先生は消化器における心身医学がご専門で、
IBS(過敏性腸症候群)を中心に心身相関について
いろいろとお話くださいました。
IBSは全人口での罹患率はアジアで9.6%、
全世界でも8.8%の人がかかっている病気だそうです。
つまり、およそ10人に1人いらっしゃると。
これは地球規模の社会問題だと。
この病気はストレスで大腸の動きが亢進するわけですが、
実際のストレス下だけでなく、
そうした映像を見るだけでも大腸の動きは亢進するのだそうです。
この反応にはCortictropin-releaseing Hormon(CRH)が関与している。
刺激が加わると視床よりCRHが分泌され、
これが下垂体に働き、ACTHが分泌され、
ACTHは副腎皮質に働きCortisolが体内に分泌。
それが、不安や炎症などの症状を引き起こすのだそうです。
またCRHは交感神経系に働き心拍数の増加、活圧上昇、動悸を誘発。
またCRHは脳幹に直接働き、大腸の運動亢進を引き起こす。
IBSの患者さんではこの反応が増強されているのだと。
そして、こうした反応はCRH拮抗薬で抑制される。
次に、大腸を風船のようなもので機械的にふくらませ、
その時に脳のどこの部分が活性化するかをPETで調べた。
すると、帯状回、視床、前頭前野内側面、背外側前頭前野、
島皮質、さらに小脳も活性化されることがわかった。
こうした時に、不安・腹痛・うつ病が多くなってくるらしい。
またfunctional MRIでの検査では、こうした刺激で、
IBSの患者さんでは、脳幹部、扁桃体、帯状回、あるいは
島皮質などが活性化されている。
また、上部消化管で、IBSと似た病態である
機能性ディスペプシアの患者さんでは、
食道刺激で内臓感覚を示す大脳誘発電位を調べたところ、
患者さんの方が潜時が速い。
つまり、内臓の感覚はこうした患者さんの方が
速く脳に伝わることがわかってきた。
同様のことは聴性脳幹反応のIII波の潜時の短縮にもみられる。
失感情症(Alexithymia)の患者さんでは、
内臓感覚が増強されていることもわかってきた。
また、直腸を膨らませるような刺激を行うと、
心拍数は、平均58から72に統計学的に有意に上昇した。
これは、島皮質に伝わった内臓刺激から、
自律神経系に情報が伝わったのだそうです。
こうしたしくみが、IBSと、パニック障害の様な動悸を訴える疾患との
接点をになっていると思われるとのこと。
この島皮質では、内的な感覚が上位システムに処理されていくうちに、
自分の身体の感覚から他の人に起っている相互のことや、
社会的性やモチベーションなどまでコントロールされているらしい。
身体を含めた情報処理というものが重要である。
長くなったので続きは明日。