時間が遡りますが、勉強会の報告を。
例によって内容の正確さの保証はありません。
あくまで参考までに。
2018.8.4 京都耳鼻咽喉科漢方懇話会
今年の京都耳鼻咽喉科漢方懇話会のテーマは「味覚障害」
講師は兵庫医科大学耳鼻咽喉科 任 智美先生
<味覚外来>
・70歳代 男≦女
・最近ニーズ↑・・・内科からの依頼↑
・2003年 24万人/年
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・亜鉛内服療法・・・一般的になってきた
唯一エビデンスのあり
しかし、最近聴かないという論文も
効く人もいるが効かない人もいる
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・口内の異常感・・・2つに分類
量的異常と質的異常⇒まずどちらかを考える
亜鉛↓の場合、量的異常にも質的異常にもどちらにも効きやすい
亜鉛→の場合、量的異常には効くことが多いが、質的異常には無効
亜鉛の有効率は80%
効かない症例の中で漢方は50%に効果があった
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味覚障害の東洋医学的考察
・気血両虚
・肝気鬱結
・気虚も多い・・・補中益気湯
・腎肝心脾はあるが今のところ肺の例は少ない様に思う
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<症例>
・メトグルコ内服1ヶ月後から味覚低下・口の苦み
舌診:歯痕(-)、水毒(-)
血液:Zn↓・Fe↓
経過:亜鉛等を投与したが症状不変
⇒八味地黄丸を投与したところ改善
考察:
西洋医学的:特発性
まず薬剤性を否定する必要
亜鉛投与でも症状→=亜鉛↓ではない
八味地黄丸で改善=加齢性、血虚・気虚
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<八味地黄丸>
・腎虚=加齢
・古典には食欲の記載
・八味地黄丸が味覚障害に効くという論文はあまりない
(水毒のものを散見するが少ない様に思う)
腎虚:腎陽虚(ヨボヨボ)と腎陰虚(シナシナ、カサカサ)
八味地黄丸はどちらかというと腎陽虚にだが、あまり考えずに使える
使用感・・・1~2ヶ月で効果出現
1/3は著効(Zn服用で無効の人でも効果あり)
10数年来の慢性の味覚障害が治った場合も
1/3は有効
1/3は無効・不変
⇒こうしたモノの中に自律神経薬で↓ものあり
⇒抑肝散陳皮半夏で↓
⇒利尿剤で↓
⇒通導散で↓・・・便通をよくする
腎虚には補腎
地黄が含まれるが内服不能は1例のみ
味覚障害には気鬱症例もあり
副作用・・・のどゴロゴロ、乾燥感、下痢、食欲不振
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<心因性>
心因性の味覚障害・・・量的な障害と質的な障害⇒抗不安薬、抗精神薬
量的:何の味がわからない
心系=ウツウツ 気うつ、気逆、気虚
質的:どれも口が苦い
肝系=イライラ
<症例>
35歳男性 口の中が金属の味、他院精神科通院中
62歳女性 自発性異常味覚 怒り 易怒性
⇒抑肝散加陳皮半夏
35歳男性・・・1ヶ月で↓
62歳女性・・・4ヶ月目から↓
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長期処方の場合抑肝散(54)より抑肝散加陳皮半夏(83)
ぴったり合えば、向精神薬を服用中の人でも効く
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<症例>
39歳男性 味覚↓ プロマック無効、検査では結果がバラバラ
⇒柴胡加竜骨牡蛎湯(12)+プロマック・メイラックスで効果あり
メイラックスを減量すると症状↑
⇒黄連解毒湯(15)
3週間で効果↑
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抑肝散(54)無効の場合、柴胡加竜骨牡蠣湯が効く場合がある
黄連解毒湯(15)・・・ヒットする場合はそれほど多くはないが、著効例もある
お酒をよく飲む人
副作用で肝機能障害が出た人に再投与は不可 間質性肺炎にも注意
特発性腸間膜壊死・・・山梔子を含む処方で0.8%に出現
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質的変化・・・気逆・気うつ
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<症例>
53歳女性 真珠腫性中耳炎で手術
味覚・嗅覚ともに低下=手術は無関係
舌痛もあったが加味逍遥散で↓
カラダが暖まると症状↑・・・白虎加人参湯で↓
のどは乾くが水は飲まず
コーヒーなどで水分はとっている
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<舌痛症>
☆自発性異常味覚の一部が舌痛症
舌痛症を語るとき、味覚障害ははずせない
・閉経後の女性が多い
・口腔乾燥症を伴うことも多い
・西洋医学的考察
鼓索神経の機能↓⇒中枢の脱抑制
・東洋医学的考察
肝気鬱結、熱傷(buning mouth)
舌縁=肝胆
・治療・・・Standardな治療はないが、first choiceは漢方がよいのではないか
第一選択=加味逍遥散(24)・・・2,3ヶ月必要
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<症例>
54歳女性 産科治療後に症状↑
安静的、唾液量やや少ないが刺激すると↑=交感神経↑
<症例>
69歳女性 食べ物はしみないがしゃべっていると舌が痛い
⇒加味逍遥散×
⇒滋陰至宝湯(92)で↓
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滋陰至宝湯(92)
加味逍遥散(24)と似ている
24は陰虚を補うも清熱は弱い
衆方規矩には(24)がだめなら(92)と書いてある
実際にはどちらかが効いて、どちらかは効かないことが多い