本:無意識との対話5

声の力を活用することで無意識へのアクセスが可能になる。

これをうまく活用した天才がいました。法然です。
彼は声高らかに二六時中「南無阿弥陀仏」と声に出して、
念仏を唱えるだけで誰でも極楽浄土に行けると説きました。

僕の実家は浄土真宗です。
法事の時にはお坊さん(僕らは”ごえんさん”と呼んでますが)が
先導して「正信偈(しょうしんげ)」と呼ばれるお経を
集まった人全員で合唱します。

まあ、浄土真宗に限らず、おそらく日蓮宗系なら「南無妙法蓮華経」、
その他の宗派なら「般若心経」を、
その場にいる人が合唱をするのではないかと思います。

誰でも一度はこうした念仏や読経を朗唱しているのを
聞いたことがあるのではないかと思います。
あるいは、賛美歌でもいいのですが、
ああいう集合した人が全員で言葉を唱えるという行為は、
ずーっとやっていると変な気分になってきそうです。
これがどうも変容意識(トランス)状態というヤツなんでしょうね。

これは単純な動作や発声の繰り返しによる意識の抑制と、
自分の声を頭の骨を通して聞くこと
(これを聴覚フィードバックと呼ぶそうです)で、
脳内に変化が起きやすくなるのだそうです。

こういう変容状態の時というのは、徐々に気分が高まってきます。
ここで一つだけ気をつけなければいけないのは、
こうした変容状態の時というのは、
外部からも情報が無条件で入りやすくなっているということを
知っておくことです。
催眠術はこれを応用したものだと聞きます。
また、昔ヒットラーが大衆をどんどんと
巻き込んでいったのもこれでしょう。

まあ、そうしたある意図をもった意思に誘導されない様に
気をつける必要がありますが、
声を使った朗唱で無意識にアクセスしやすくなる様です。

話が少しそれましたが、
無意識にアクセスできたら次にどうするのか?
著者は、「無意識のクリーニング」が大切だと言います。

無意識の中には肯定的記憶と否定的記憶があり、
これらが潜在意識や自我意識に投影されて、
我々の行動が引きおこされるのだそうですが、
特に否定的な記憶は人生においてトラブルを招く原因となります。
このため、できるだけ否定的記憶は昇華させてクリーニング
しておく必要があるのだそうです。

そしてそのクリーニングの方法は「懺悔」と「感謝」であると。
「懺悔」というのはちょっと難しいのですが、
日々の過ちというよりも、
自己存在の根源的な罪への内省だと筆者はいいます。
たとえば、人が生きていく上で他の生物の命をもらって
長らえているということ。
たとえば,知らず知らずのうちに人を傷つけているようなことなど。

そして「感謝」。
これは言うまでもないでしょう。
筆者の町田さんは宗教色を排除して、
この声の力を利用した瞑想として、
「ありがとう禅」というのをやってらっしゃるそうです。
これも一度本を読んでみようと思っているのですが、
要は「南無阿弥陀仏」のかわりに
「ありがとう」を唱えることかなと思っています。

そういえば昔、がんの末期になった人が、
「ありがとう」を百万回唱えることで治ったとかいうのを
聞いたことがあります。
これが本当の話かどうかはわかりませんし、
万人に効果があるとは思えませんが、
もし本当なら、無意識にアクセスすることで免疫が変化し、
自然治癒能力が発揮されたのでしょう。

ただ、それには、治りたい気持ち一心で(気持ちはわかりますが)、
切羽詰まった気持ちで「ありがとう」を唱えるのではなく、
本当に何もかも忘れて、ただひたすら感謝する姿勢が必要で、
それで無意識の壁を打ち破ることができた時に
奇跡が起こるのかもしれません。