本:食卓一期一会

先日、最後にお話しました本屋さん、恵文社さん。
恵文社ホームページ
http://www.keibunsha-store.com/

ジュンク堂さんや紀伊國屋さんみたいな、大きな本屋さんは、
やっぱりあって欲しいけど、
こんな本屋さんも近くにあるといいなと思います。

で、店内を一回りして気になった本をいくつかピックアップ。

『スティーヴ・マッカリーの「読む時間」』創元社
以前、1971年に出版された写真集、
『読む時間』 アンドレ・ケルテス 創元社
についてご紹介しました。
http://www.itaya.or.jp/?p=2824
この写真集に感動した写真家スティーヴ・マッカリーが、
オマージュとして、世界を飛び回った時に撮影した写真を集めたもの。

『ツィス』 広瀬 正 河出書房新社(?)
首都圏で原因不明の騒音が発生し、
徐々に大きくなっていき、人々がパニックになるという話。

、『オルファクトグラム』という小説を紹介したことがありますが、
http://www.itaya.or.jp/?p=967
それに並ぶ、耳鼻咽喉科領域関連の珍しい小説。

大分前に読んだことがある小説なのですが、
以前に読んだものは文庫本だったので、
集英社文庫のものを読んだのだと思いますが、
この本の単行本が古本コーナーにありました。

この広瀬 正さんの別の本で、
『タイムマシンの作り方』というのもありました。
多分読んだことがないと思うのですが、
これも面白そうでした。

『食卓一期一会』 永田 弘 角川春樹事務所
そして、今回紹介するのがこれ。shokutaku
これはペラペラと最初の方をめくって、
ピンときて思わず買って帰りました。

これは1989年に晶文社から単行本として発刊されたものを、
今回、角川春樹事務所から文庫本として出版されました。

本屋さんで詩集を買うなんて、
まあ、高尚なことと思われがちですが、
詩集なんて、ほとんど買ったことがありません。

まあ、先日、竹下夢二の『どんたく』は買うには買いましたが、
あれはどちらかというとジャケ買いでした。

この詩集の、特に最初の方の詩が面白い。

言葉のダシのとりかた
という詩:

かつおぶしじゃない。
まず言葉をえらぶ。
太くてよく乾いた言葉をえらぶ。
はじめに言葉の表面の
カビをたわしでさっぱりと落とす。
血合いの黒い部分から、
言葉を正しく削っていく。
(中略)
鍋に水を入れて強火にかけて、
意味をゆっくり鎮める。
意味を浮きあがらせないようにして
沸騰寸前サッと掬いとる。
(以下略)

こんなふうな感じで、
半分かつおぶしでのダシのとり方なんですが、
半分は詩を作るための思考の方法なんですね。

別の詩、”梅干しのつくりかた
という詩に至っては、

最初から23行までずっと本当に梅干しの作り方が書いてあります。
そして、そのあとに、
”君の梅干しがぼくのかんがえる詩だ。
詩の言葉は梅干しと同じ材料でできている。
水と手と、重石とふるい知恵と、
昼と夜と、あざやかな色と、
とても酸っぱい真実で。”

と、まあ、急に抽象的なところに飛んでいきます。
こんな調子で、
”ぬかみその漬け方”
”天丼の食べ方”とか、
”冷ややっこを食べながら”などなど、
食事な関わるようにみせながら、
詩の世界が広がっています。