『魂の退社 会社を辞めるということ』 稲垣えみ子 著,東洋経済新報社
たまには実用書ではない本の話を。
・・・というか、実は嫁さんが、
「この本面白かったよ!すぐ読めるよ!」
というので、読んでみることにしました。
何でも嫁さんがこの本を読んでみようと思ったのは、
NHKの番組にゲストとして
出演されていたのを見てのことだと。
その容姿が50歳越えの女性でアフロヘアーで珍しく、
見かけがほわーとしてるのに、
話されている内容は、すごくまともで、
それでいて尖ったところがなくて
好感が持てたのだとか。
それで、「この人何者?」とネットで調べたら、
元朝日新聞の論説委員もされた人で、
定年を待たずに会社を辞めフリーになられたのだそうです。
TV番組『情熱大陸』にも出られたことがあるそうで、
ご存じの方も多いのかもしれませんが、
僕は全く存じ上げませんでした。
この本では、
前半は、どうして天下の朝日新聞を辞めたのか、
辞めるに至った心境の変化などが書かれています。
辞めるに至ったのは、
実は辞める10年以上前からに遡るのだそうです。
詳しくは読んでいただくといいのですが、
新聞記者時代、最初は欲望全開で、
買いたいものを買い、食べたいものを食べるみたいな、
そんな生活をしていたそうですが、
それでも満足することができず、
これではだめだと思っていたちょうどその頃、
人事異動で香川県に配属されたことがきっかけだとか。
そこでお金を使わなくてもハッピーな
ライフスタイルに出会うことになる。
そのうち、お金に縛られない生き方ができるのではないかと。
そして、50歳になったら会社を辞めようと決意されます。
これは資本主義社会が行き詰まりをみせていて
閉塞感が満ちている現代のアンチテーゼでもあり、
この本は、行きにくく感じている人にとっての
手引き書になるかもしれません。
実際、最近では物を持たないライフスタイルが
もてはやされています。
断捨離しかり、
ミニマリストしかり。
だから、最近は物が売れないと聞きます。
「モノを手に入れれば豊かになれる」という発想は、
急速に過去のものとなりつつあるのだと。
しかし、それでは資本主義経済はなりたちません。
この資本主義経済を支える
最も大多数をしめるのは「会社」です。
そして、この本の後半は、
日本という社会が、いかに「会社社会」であるかを、
会社から離れて初めて気がついたという形で語り、
その会社社会がものが売れなくなって、
さまざまな歪みを露呈していると語ります。
まあ、結構まじめな内容が書いているにもかかわらず、
おもしろおかしく語られ、さらに全く嫌みがありません。
嫁さんも言ってましたが、一気に読むことができました。