本:動きが心をつくる2

身体から心をコントロールするという考え方は、
ヨガや気功など、特に東洋的なものの中に多くみられます。

「ゆっくり息を吐けば副交感神経が優位になって身体にいい!」とか、
「歩くとセロトニンがたくさん分泌されて身体にいい」
「前屈みの姿勢をやめて上を向いて歩こう!」
「嫌な気分の時ほど口角をあげてニッコリ、すると気分も変わる」

こうした「身体⇒心」でのコントロールには、
実はある一つの共通点があるとのこと。

それは、心に働きかけることの出来る動きというのは、
”レスペラント反応(resperant response)”と呼ばれるものであると。

このレスペラントという言葉は造語で、
レスポデント反応(respodent response)と
オペラント反応(operant response)という2つの反応の
両方の反応ができるものを指します。

レスポデント反応というのは、
無意識的・無意志的な反応で、生理的反射や内臓系の反応です。

オペラント反応というのは、
意識的・意志的な反応で、意図を持って行う行動で、
筋骨格系の反応です。

これに対して、レスペラント反応は、
無意識にも行う動きもあるし、意識的にも行うことが出来るものです。

たとえば、心臓の鼓動は意識的には早めたり遅めたりはできませんが、
呼吸は走ったりしたら自然に早くなる様な反応もある反面、
自分でも意識して早めたり遅くしたりすることができる動きです。

レスペラント反応に相当するものとしては、

1.呼吸反応
ヨガや気功など。最も重要なレスペラント反応。

2.筋反応
これもリラックスには欠かせない。
でも実は、緩めるのには訓練が必要。

3.表情
自然に出てしまう表情もあれば、自分で作ることも可能。

4.発声
あまり意識されていないが、驚いた時などは自然に声が出てしまうが、
意識的に声を出すことができるのでレスペラント反応に相当する。

5.姿勢反応
前に書いた様に、気持ちが落ち込んでくると前屈みになる。
だから、しっかり顎を上げて前を見るとそれだけで気持ちも前向きになる。

6.歩行反応
気持ちが落ちている時には歩行は遅くなります。
だから逆に早歩きをすれば、自然と気持ちは上がってくる。

7.対人距離反応
こえはちょっと複雑。
人は他人と対峙する時、あまり近いと不快感を感じ、
通常は無意識的に距離をとっている。
しかし親密な話をしようとするときは、
意識的に近い距離をとるようにする。
だからレスペラント反応なんだそうです。

8.対人接触反応
これは対人距離がゼロの特殊な場合だが、
勝手に他人が皮膚に接触してくると、
反射的・生理的な反応を示す。
それに対して、マッサージや医療・介護などで
意図的に身体に触れることもするので、
対人接触もレスペラント反応なのだそうです。

この本には、こうした反応について一つずつ、
丁寧に実験結果などをもとに解説してあります。

そして、最後の方には、
からだとこころに関連のある言葉:
「からだ言葉」についても言及されています。

このからだ言葉については、
僕もいくつか以前より気になっていました。
それについては、また別の機会にお話してみたいと思います。

この本は新書シリーズであり、
一般的な実用書(ハウツー本)とは違いますが、
意外にも最終章に身心統一の為の身体のワークが紹介されています。
これだけ別にして本にしてもいいくらいです。

身体から心をコントロールする。
これは21世紀を生きる人間にとっては、
かかせないスキルとなるような気がします。

そのための理論をやさしく学ぶことのできる本だと思います。