今回の北斎展では、今まで一度も観た覚えがない
タッチのシリーズがありました。
『花見』
『初夏の海辺』
この2点を含む6点が今回来ているのですが、
なんか劇画タッチ。
それでも、「花見」はやっぱり浮世絵ですね。
図録をみると、
「ヨーロッパ風の様式で書かれた風俗画」とこの章にあります。
東インド会社の商館長が北斎に発注したものだそうで、
現在、オランダのライデン民族博物館に所蔵されています。
それにしても、「初夏の海辺」はこれまた面白い構図。
錨でしょうか?
それの上で遊ぶ子どもが、ほんと動いているように見えます。
そして、今回一番迫力があったのはこれ。
『鍾馗図』
鍾馗様は道教における魔除けと学業成就の神様だそうで、
今までにもいろんな人が描いた鍾馗様を観たことがありますが、
そんな中でもこの北斎の鍾馗様は迫力があります。
他にも印象に残った作品はあるのですが、
最晩年のこの作品を最後にあげておきます。
『雪中虎図』
この絵は北斎90歳の時の絵だとか。
ユーモラスでじんわりと温かさを感じます。
北斎は、亡くなる直前に、
「天があと5年命をくれたら、真正の絵師になれただろうに」
という言葉を残していたそうです。
いいですね。
90歳にして、なお理想の画家を追求していた北斎。
自分が90歳にまで生かさせていただいたとして、
果たしてこんな言葉を言うことができるだろうか?
「天があと5年命をくれたら、真の医師になれたろうに」
まあ、そんなことを言ってみたいものだ。
ま、凡人には北斎のような神の領域を目指すようなことは
到底できませんが、
とりあえず、目の前のことを一つ一つ頑張ってやっていこうと思います。
さて、今回の北斎展で一つ心残りがあります。
それは、北斎の娘、お栄(葛飾応為)の作品で一つ
観られなかったものがあります。
『吉原格子先之図』
晩年の北斎の右腕でもあり、
「美人画ではかなわない」と北斎に言わしめた程の力量の応為。
応為の作品は少ないそうで、
「月下砧打ち美人図」、「関羽割臂図」は観られたのですが、
上の絵はどうやら後期に展示される予定みたいで、
今回は観ることが出来ませんでした。
まあ、時間があればもう一度観に行くのも一つですが、
この「吉原格子先之図」は大田記念美術館の所蔵だそうなので、
また機会があればお目にかかることができるかもしれません。
それまでのお楽しみとしておきましょう。