『いびきの新治療で心と体をリフレッシュ!』 池尻良治, 現代書林
少し前になりますが、
睡眠と認知症を考えるフォーラムがあり、
その時の懇親会で著者の池尻先生とお会いする機会がありました。
池尻先生は大阪で歯科医をされておられますが、
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する治療に関して、
歯科医師の立場から積極的に活動をされています。
僕の医院では睡眠の検査は行っていないので、
OSASが疑われた場合は近くの病院にご紹介してしまうので、
直接OSASの患者さんを診ることは少ないのですが、
基本的に耳鼻医咽喉科医の立場としては、
扁桃腺摘出術や、咽頭形成術といった、
のどの空間を広げて閉塞しないようにする手術や、
睡眠時のCPAP(持続陽圧呼吸療法)の管理で
OSASとは関わっています。
それに対し歯科の先生は、主にマウスピースを作って、
舌が気道に沈み込まないようにする治療法で、
OSASに関わっていらっしゃいます。
OSASは睡眠の質が低下することによって生じる、
昼間の眠気による運転などの危険性や、
仕事の効率の低下だけでなく、
高血圧や心筋梗塞、脳血管障害、
さらには腎臓病や糖尿病の発生率まで上げると言われ、
また、最近では認知症になる危険も高いとわかってきて、
見過ごしてはならない病気の一つとなっています。
この本では、
まず基本的な睡眠の働きに始まり、
良い睡眠と悪い睡眠について、
また、良い睡眠を得るためにはどうすればよいか、
そうしたことまで詳しく書かれています。
そうしたことを踏まえたうえで、
OSASについてお話があり、
そこで、単にマウスピースを作ってはめなさいといことではなく、
さらに・・・ここがこの本の最もいいところですが・・・
特に年配の方のOSASの予防と改善を目的として、
「口唇ベロ体操」と称して
舌の筋トレの具体的な方法が詳しく書かれています。
確かに、治療というと、どうしても、
歯科医であればマウスピースを作って終わり、
耳鼻科医であれば、手術にならなかった人は、
C-PAPの機械を斡旋して終わりになりかねません。
やはり、基本的なところは、患者さんに
肥満を是正するように生活習慣の見直しをしてもらったり、
よく噛んで食べることの大切さや、
舌の筋肉が弱らないように訓練することの必要性なども
もっと啓蒙していく必要があるなと感じました。
あと、これは池尻先生から直接伺ったことで、
ちょっと考え方が変わったことがありました。
それは、赤ちゃんの流動食を与える時期のこと。
少し前まで、赤ちゃんにかみ砕いて食べ物を与えるのは、
虫歯菌が感染するのでやめた方がいいという考え方です。
僕もどこかでそんな話を聞いたことがあります。
池尻先生は、むしろ無菌状態を守ろうとする方がよくないと
言われます。歯周病などがなければ、
常在菌はうつっておく方がよいと。
むしろ、よく噛むクセを幼児期に覚えないでいると、
歯列が悪くなったり顎の発育が悪くなって
むしろ良くないと言われます。
たしかに、EBウイルスなども幼少時にかかっておくと、
ちょっとした扁桃炎ですみますが、
大人になってからだと
伝染性単核球症として発症することがあります。
キスで感染することが多く、
若い人に多いのですが、
ひどいと肝脾腫や肝機能障害、
貪食細胞症候群などをひきおこす危険もあり、
結構怖い場合もあります。
こういうものは小さい時にかかってしまっておく方が
いいのかもしれません。
清潔意識もあまり過剰になるのは、
前に藤田紘一郎先生が書かれた本にも書いてありました。
>本:腸をダメにする習慣、鍛える習慣