写真集:読む時間

近年、デジタルカメラの性能が良くなって、
綺麗な写真を比較的簡単に撮ることができるようになりました。
僕もその恩恵を得ている人間の一人です。

また、スマホのカメラの性能もどんどんよくなっているので、
SNSなどで気軽に写真をアップして
いろんな人にみてもらうことができるようになりました。

そうなってきますと、
プロとアマの距離が一見縮まった様に感じられます。
でも、本当はその違いというのは、
思った以上に大きいのだろうと思います。
そして、それは、高い方からしか見えないのかもしれません。

プロの写真家になろうなんて思っていませんが、
それでも、少しでもいい写真を撮れるようになりたい!
日頃からそう思っています。
・・・まあ、「いい写真」とはどういう写真か?
という根源的な問題は残っていますが。

カメラの性能がよくなってくると、
最終的には、テクニックではなく、
コンセプトが大切になってきます。
「何を撮りたいのか」
「何を表現したいのか」

そういったものを感じ取るには、
やはりいい写真をたくさん見ることが早道だろうと思い、
良さそうな写真展があったら観に行ったり、
良さそうな写真集があったら買ってみることにしています。

ちょうど、昨年の今頃、
すごい写真集と、素晴らしい写真展に出会うことができました。

写真集:鬼海弘雄写真集「TOKYO VIEW」
http://www.itaya.or.jp/?p=1631

井津建郎 写真展「ブータン 内なる聖地」
http://www.itaya.or.jp/?p=1626

須田卓馬 写真展 Fereshteh -13years in Iran-
http://www.itaya.or.jp/?p=1628

そして、今回出会ったのが、この写真集でした。

『読む時間』 アンドレ・ケルテス 創元社

もともとは、1971年に出版された、yomu
『On Reading』という写真集。
僕が手に取ったのは
2013年に復刻されたものの第2刷。

この写真集は、
ケルテスが1915年から1970年までに、
実に55年もの間に撮影された写真の中から
選ばれたものです。

公園や、屋外、あるいは屋上など様々な所で、
人々が本を読むシーンが写し取られています。

本を読む姿というのは、
それが知識欲を満足させるためのものなか、
ファンタジーの様な別世界への旅行なのか、
あるいは必要に迫られてのものなのか、
そういったことはともかく、人間にしかできない行為であり、
人間が最も人間たる姿かもしれません。

そういう意味では、近年、
日本では本を読む人が少なくなってきていると聞きます。
それは非常に残念なことです。

この写真集の代わりに、
街中で、公園で、電車の中で、等々、
スマホやタブレットを覗いている人を写真に撮って本にしたところで
果たして感動する写真集になるでしょうか?

それとも、
そんな風に感じるのは僕のノスタルジックな感情でしょうか?

(明日に続く)