僕が医師になるまで26

さて、大分寄り道をしてしまいました。

大学も4年生後半になると、臨床医学を学び始めます。
第一内科(呼吸器、消化器等)
第二内科(腎臓、内分泌、膠原病等)
第三内科(血液等)
老年病科(循環器等)
第一外科(消化器、胆管膵等)
第二外科(胸部、心臓等)
脳神経外科
整形外科
泌尿器科
耳鼻咽喉科
眼科
形成外科
産婦人科
小児科
精神神経科
皮膚科
麻酔科
歯科口腔外科
だいたいこんなもんでしょうか。
内科の分担なんかはちょっと違うかも。

講義の内容もあんまり覚えていません。
僕がかろうじて覚えていることと言えば、
次のようなものかな。

整形外科の教授はすごくハートフルな先生で、
老人に対しても丁寧な言葉使いでいい先生でした。
学生はその教授のことを親しみを込めて、
”ニコちゃん”と呼んでいましたが、
実はそれは、当時有名な漫画、
『Dr.スランプ アラレちゃん』に出てくる”ニコちゃん大王”に
顔が似ていることから生まれたニックネームでした。

ある日教授は、自分が”ニコちゃん”と呼ばれていることを知り、
なかなかいいニックネームだと思っていたそうなんですが、
実はそれが、”ニコちゃん大王”に由来することを知って、
一瞬、表情が固まったそうなんですが、
そこはさすが、教授、
次からは自らそのことをアピールされていたとか。
(これはあくまで都市伝説のような噂です)

産科の助教授(後に教授)はすごく熱く語る先生でした。
産科は母と子という2つの命を扱う科なのだと。
「もし、妊娠していた母親が白血病で予後が悪いとわかったら、
みなさんが主治医だったらどうしますか?」
そんな哲学的な問いを投げかけられたのを覚えています。

麻酔科の先生が、英語は大事だよとおっしゃってたことは、
以前どこかでちょっと触れました。
結局Voice of Americaを聞いたのは最初の1ヶ月くらいで、
後はラジオ短波を聞いて、僕はラジオっ子になっていました。

皮膚科の教授は授業の前に、
その日に出てくる病気の名前を黒板に書かれます。
その字が妙にいかめしいのです。

”尋常性乾癬”とか、”扁平苔癬”とか、
あるいは、”伝染性軟属腫”とか”疣贅(ゆうぜい)”だとか。

そして、さらにその病気の医学英語を書き加えられるのですが、
それらは、それぞれ、
”Psoriasis vulgaris”、”Lichen planus”、
”molluscum contagiosum”、”Verrucca”と言うのですが、
日本語も医学英語も普段みなれない文字ばっかりなので、
それだけで面食らったのを覚えています。

小児科の授業の時でした。
教授だったか、助教授だったか、ちょっと覚えていないのですが、
最近は、患者さんの権利意識が強くなったと、
授業の時に話されていました。

それは患者さんの言葉使いにでてくると。
子どもが具合が悪くなった時に、お母さん達は、
昔は、『お医者さんに診ていただいたら』と言っていたのが、
最近は、『医者に診せたら』という風に変わってきたと。

当時としては、そんな言い方するのはまだ珍しい方だったようで、
なるほどそんなものかと思って聞いていましたが、
その後、医療崩壊やMonster Patientという言葉とともに、
こうした傾向は顕在化していきました。

また、小児科の先生は、
診察の時に泣き叫ぶ子どもがいるけど、
ワーワー泣いている方が安心する、
むしろぐったりしている方が大変!
と話されていたのを覚えています。

この話を聞いていたので、
今でも診察で泣き叫ぶ子どもがいても、
僕は気になりません。
むしろ、それくらい元気があればよいと思っています。