(昨日からの続き)
前回、この本を読んで、
生活の節目やハレの日に、
旬の食材を使って、手作りの料理を振る舞う、
そうした伝統は今は失われてしまった。
ということを書きました。
もちろん、「昔はよかった」なんて単純には言えません。
たとえば、特別な日の中でも、冠婚葬祭は
昔はそれぞれ家で行われていました。
特に結婚式や葬儀・法事。
僕の実家の集落でも、高校生頃までは多くの家が、
親戚や近隣の人を招いて家で宴が開かれていました。
法事なんかは今でも家でされるところも多いです。
しかし、これがなかなか大変です。
家中を掃除して、来客の数だけ座布団を部屋にひきます。
また、膳を人数分用意して、
来客用のハレのお茶碗、汁椀、湯呑み、盃、徳利、取り皿などなど
ぜ~んぶ、物入れから出してきて、一つ一つ洗います。
そして、多少は仕出し屋さんから料理を取るとはいえ、
何品かは自分の家で手作りのものを
出さなければいけませんでした。
そうして、当日は来客のおなご衆は台所で、
世間話をしながらご飯を炊いて、
汁物(たいていはお豆腐のすまし汁でしたが)を作って、
来客に備えます。
法事ですら、最低限これぐらいはしなければならず、
おそらく祝言とか葬式となるともっと大変です。
そうした行事を母親は「まぜごと」と呼んでいました。
まさに家の中が混ぜ返されるようなものでした。
さらに宴が始まるとホストとなる家の者は、
お酒を注いで回ったり、給仕をしなければいけません。
話下手の僕はこれが昔はすごく苦手でした。
(まあ、今でもそれほど得意ではありませんが)
こうした行事、昔の人からすれば、
一種のアトラクションみたいなものだったのかもしれません。
懐かしいともいえますが、
またやりたいとは思いません。
ホストとなるファミリーの負担が大きすぎます。
まあ。それでも、懐かしく覚えている料理があります。
一つは「鮒の子まぶし」。
実家にいる頃は、どこでも出される料理と思っていましたが、
高校卒業後、他県では食べたことがなく、
ネットで調べてみたら、滋賀県の郷土料理でした。
写真は、「ジモトのココロ」さんから拝借してきました。
これは、仕出し屋さんとか料理屋さんから取り寄せます。
黄色い酢味噌で食べます。
もう一つ、懐かしく思い出すのが「でんがく」。
ネットで調べますと、「味噌田楽」というのが正しい様です。
お豆腐を10cm×2~3cmの短冊状に切って、
それに先が2本に分かれた鉄串を突き刺して、
炭火で焼きます。
昔は家にこの田楽専用の長方形の七輪がありました。
ちょうどこんな感じですね。
こんなふうに豆腐を炭火で焼いて、
串から外したものに味噌をたらして食べます。
昔はこれが好きでした。