『病気の9割は歩くだけで治る!』 長尾和宏著,山と渓谷社
昔の人が病気になるといえば、多くの場合感染症でした。
感染症の多くは、抗生物質やワクチンの発達で、
あるいは栄養状態や衛生状態の改善により
かなり減少してきました。
それでは、その分病気が減ったかと言えば、
答えは「No」で、
むしろ様々な複雑な病気が増えてきました。
糖尿病・高血圧・高脂血症といった生活習慣病、
自律神経の不安定に伴う病気、
自己免疫疾患、
うつや神経症、心身症などなど。
昔の健康状態から感染症が差し引かれたのに、
病気が増えた原因の一つは、
人が歩かなくなったからだと著者は言います。
江戸時代は今と違って交通機関が発達していなかったので、
現代人の6倍くらい歩いていたそうです。
確かに、どこに行くのも基本徒歩です。
江戸から京まででも、2週間前後で移動していました。
まあ、そんな旅行は一般人なら一生に1,2回かもしれませんが、
そこまでの移動でなくても、
となり村まで5Km程度、その先10kmくらいでも、
1時間、2時間かけて歩くのは当たり前でした。
そういえば、僕も若い頃はよく歩いていました。
小学校・中学校までは3Kmほどありましたが、
毎日歩いて通学していました。
高校は自転車でしたが、
大学生の時も4年生くらいまでは、
3kmくらいなら基本的には歩きでした。
そのおかげか、
大きな病気もすることなく過ごしてきました。
(まあ、親から丈夫な身体をもらったというのもあるのですけど)
それでも、その後徐々に歩かなくなりました。
車にも乗るようになったし、
開業してからは、自宅と医院が近いこともあり、
へたをすると1日3000歩も歩いていないかもしれません。
そのせいか、体重も学生時代より20kg近く増えました。
運動しなきゃと思いつつ、
体重が増えると、ますます億劫になります。
負のスパイラルです。
運動というとどうしても、スイミングやスポーツジムを連想しますが、
要はもう少し歩けばいいことなんですね。
さて、本書の題名、
『病気の9割は歩くだけで治る!』
ですが、最近この手の『9割治る!』みたいなものが多いですね。
ちょっと過激だなと思いつつも、
まあ9割は多少過剰表現だとしても、
かなりの病気はしっかり歩くことで防ぐことができると思います。
筆者は言います。
生活習慣病はカロリー制限や糖質制限が重要だが、
これらは歩く事で消費されるので、予防される。
歩くと、セロトニンが分泌されやすくなる。
セロトニンは幸せホルモン。
ゆえに、うつ病にもなりにくい。
歩いて道々の風景を愉しんだり季節のものに触れたり、
商店街などで人と会話などのコミュニケーションをすることで
認知症の予防にもなる。
特に日中(中でも朝方)外で歩くと太陽の光を浴びることで、
夜間の眠りのホルモン、メラトニンが分泌されることと、
身体が適度に疲れて不眠症も改善される。
歩くと自律神経の乱れも改善され、
胃腸の調子もよくなり、さまざまな病気がよくなる。
線維筋痛症、片頭痛、リウマチ、喘息、アトピー、
パニック障害、咽頭神経症など、こうしたものは、
痛みを感じる脳が過敏になっている、
免疫システムか過敏になっている、
皮膚が過敏になっている、
粘膜が過敏なっている・・・などなど、
何らかの過敏性を持っていることが正体で、
甘いものをたくさん摂っている人、歩かない人い多いらしい。
砂糖を控えて、毎日歩く!
それだけで、みるみる改善する、と筆者はいいます。
また、がんの予防についても、
上記のような生活習慣病の予防でがんの発生も予防され、
さらに適度な運動はナチュラルキラー細胞の活性をも促すので
がんになりにくいそうです。
そういえば、以前、
本:薬も手術もいらない めまい・メニエール病治療2
http://www.itaya.or.jp/?p=2393
のところで、メニエール病にも有酸素運動が大切と書きましたが、
その本にもひたすら歩くようにして
聴力が改善した人の話が書いてありました。
そんなこんなで、僕は最近、
メニエール病の様な、めまいや耳鳴り患者さんには、
『睡眠、水分、ウォーキング』だよ!ということにしています。
高齢者でふらつきを訴える患者さんも多いのですが、
そのうちの何割かは足腰の弱りからくる物理的なものかもしれません。
歩く、この人間として最も基本的なことに
もう一度よく振り返ってみる必要があると思います。