睡眠と脳機能

(昨日からの続き)

宮崎先生は今回のシンポジウムの冒頭で、
認知症の予防に、睡眠がいかに大切かをお話されました。

その一例として、50代なのに、
認知機能の検査が全くできない人を紹介されました。
ビデオで閲覧したのですが、
図形・色・数で同じ系統のものを選ぶ作業をするのですが、
ほとんどできません。
検査後のインタビューは
まあ普通に受け答えできているのですが。

この方は、睡眠時無呼吸症候群でした。
睡眠時の状態は、激しいイビキをされています。
この方がC-PAP治療をされましたところ、
こんどはスイスイ作業をこなされるようになりました。

この方は、まだ認知症というわけではありませんでしたが、
適切な睡眠がとれていないということが、
どれだけ脳の活動に影響を与えるかということを
知ることができました。

睡眠時無呼吸症候群はこうした直接的な、
脳機能に影響を与えるばかりではなく、
先の新オレンジプランで
認知症を促進させる危険因子として挙げられていた、
高血圧、糖尿病の発症とも関連があるといわれています。

また、認知症だけでなく、脳卒中の様な脳血管障害や
(結局それは認知症の一つのパターンになるのですが)
心臓血管疾患も引き起こす確率が増えます。

こうした睡眠時無呼吸症候群もそうですが、
それ以外の睡眠障害でも認知症の危険度は増えます。
そのメカニズムについても宮崎先生はお話されました。

我々の身体(脳以外)には、動脈系と静脈系という
2つの大きな脈管系のシステム以外に、
「リンパ系」という
もう一つの身体のメインテナンスのシステムがあります。

つい最近まで、
このリンパ系は脳にはないと言われてきました。
しかし、数年前、脳のグリア細胞を中心に老廃物を
脳の外に運ぶシステムがあることが発見されました。
グリアのリンパなので「グリンパ」と呼ばれています。

グリア細胞は睡眠中に収縮するので、
グリンパが通りやすくなるといわれています。
だから、睡眠をよくとると
老廃物はちゃんと脳の外に出て行くのですが、
睡眠をしっかりととらないとグリンパが流れないので、
老廃物がたまる。これがβアミロイドと呼ばれるもので、
認知症の原因の一つとなるわけです。