本:十二単を着た悪魔

僕のこのブログでは、ことあるごとに、
五感を大切にして生活しましょう!
と盛んに書いてきました。

まあ、耳鼻咽喉科のブログということも一つの理由ですが、
現代は、あまりに視覚優位で、
生活の中の音響はただただ音量で圧倒しているみたいなところがあって、
さらにニオイと言えば、消臭と人工的な香料であふれている、
そんな風に感じます。

もっと自然の音や香り、体感などを意識して生活しましょう!
という観点から、
ハイパーソニックエフェクトについてや、
意識して見たり聴いたりすることの重要性について、
何度かこのブログにも取り上げてきました。

ハイパーソニックエフェクトというものが、本当にあるのかどうか、
それはもう少し検証が必要なのかもしれませんが、
僕は、聴覚に限らず、
五感をフルに活性化することが、
脳幹部を刺激し身体にいいであろうと思っています。

自然の音や香り、体感を意識して生活・・・
そんな生活のお手本の一つは、
平安時代の花鳥風月を愛した貴族の生活中にあるのかもしれません。

そんなことを考えていたら、
ふと昔読んだ本を思い出しました。

『十二単衣を着た悪魔』 内館牧子 著,幻冬舎

タイムスリップものの小説やjuunihitoe
映画などはたくさんありますが、
この本では、
実際の歴史の中にタイムスリップするのではなく、
源氏物語の物語の中に迷い込んでしまうという
設定が面白いところです。

その主人公が、
気がつけば平安時代にタイムスリップし、
貴族の所に連れて行かれた時です。
召使いがなんかすごく臭う、
という所が印象的でした。

実際、大昔は入浴という風習はまだなかったでしょうし、
せいぜい体を拭く程度だったでしょうから、
結構臭ったことでしょう。
だからこそ、貴族の間ではお香が発達したのでしょうが、
下々の者までお香を焚くことはできなかったでしょうから、
そこそこの臭いはあっただろうと思われます。

まあ、そんなものは-主人公もそうですが、
すぐに慣れてしまうのでしょうね。
臭いについては、人から発せられるニオイについては、
昔の方が鈍感であったのかもしれません。
そのかわり、お香の匂いなどには敏感で、
「数分前に誰それがここを通られたはずだわ」なんて
ちゃんと分かっていたんだろうと思います。

ところで、この主人公、現実世界では就活に失敗して、
自信喪失しているダメンズなんですが、
たまたまタイムスリップした先が源氏物語の中で、
しかもその源氏物語の本を持ってきていると来た!
そりゃあ、未来がすべて書いてあるのですから、
こんな強い予言者はいません。
たちまち、優れた陰陽師としてもてはやされます。

ま、あまり内容を書いてしまうのは無粋ですから、
この辺にしておきましょう。

題名を見ると、映画『プラダを来た悪魔』を想起します。
メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ主演の映画ですね。
メリル・ストリープ演じる強くてしたたかな女性が、
内舘氏には、源氏物語に出てくる弘徽殿女御と
ダブって見えたところからのインスピレーションらしい。

こちらの映画も昔見て面白かったのを覚えています。